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センターの教授、准教授による共著『こころ学への挑戦』が出版されました

160428kokorogaku_book.png こころの未来研究センターの教授、准教授らが執筆した共著『こころ学への挑戦(こころの未来選書)』が、2016年3月、創元社より出版されました。
 本書は、吉川左紀子センター長をはじめ、2016年3月末までセンターに勤務した船橋新太郎教授と鎌田東二教授(肩書きは当時)、河合俊雄教授、カール・ベッカー教授、内田由紀子准教授、阿部修士准教授、熊谷誠慈准教授ら8人が、各自の専門領域をふまえて「こころ」と「こころ学」の定義に挑みながら、センター設立から今日までに取り組んでいる「こころ」を巡る研究活動の成果を紹介しています。巻末には8人全員が集まり「こころの未来研究センターと『こころ学』の創生」というテーマで、これまでの歩みを振り返り、次なる「こころ学」の展開に向けて語り合った座談会の記録も収められています。

『こころ学への挑戦(こころの未来選書)』
編著者:吉川左紀子、河合俊雄
著者:船橋新太郎、鎌田東二、カール・ベッカー、阿部修士、内田由紀子、熊谷誠慈
出版社: 創元社
価格:3,024円(税込)
言語: 日本語
判型:A5判 272頁
ISBN-10: 4422112287
ISBN-13: 978-4422112282
○目次
はじめに 吉川左紀子
1章 脳の働きを通してこころを探る 船橋新太郎
2章 こころ学の実現に向けて――脳研究の視点から 阿部修士
3章 こころのワザ学と日本文化 鎌田東二
4章 「心」と「こころ」――文献学的手法に基づくこころ学の構築 熊谷誠慈
5章 「こころ学」を考える――3つの側面と3つの研究プロジェクト カール・ベッカー
6章 実践とリフレクションとしてのこころ学 河合俊雄
7章 文化とこころ――こころへの社会科学的アプローチ 内田由紀子
8章 こころ学の効用 吉川左紀子
座談会 こころの未来研究センターと「こころ学」の創生 全員
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はじめに
吉川左紀子
 広くこころについての学際的研究を行うことを目的に設置された京都大学こころの未来研究センターは、二〇〇七年にスタートした。
 本書『こころ学への挑戦』は、センターが誕生してから一〇年の節目を前に、これまでのセンターでの研究活動を振り返り、センターがめざす「こころ学」創生のイメージについて、各研究者がそれぞれの視点から提示することを目的に企画された。
 「挑戦」という少し勇ましいタイトルは、「こころ」について、その全体像を描き出すために息の長い取り組みを進める研究者の心構えを表わしている。
      *
 こころの未来研究センターは、二〇〇三年からの五年間、「地球化時代を生きるこころを求めて」をメインテーマに京都大学で実施されたシンポジウムとワークショップ「京都文化会議」の趣旨を引き継いで誕生した。センターのミッションは、さまざまな学問的アプローチでこころについて研究を進め、広く「こころの知」を発信することである。
 こころを研究する新しいセンターなのだから、ワクワクするような場所にしたい。名称はとても大事だと考えた。研究はすでに起きた現象を分析し考察し、「こんなことがわかりました」と示す仕事なので、過去・現在・未来という時間の流れでみると、過去と現在である。だが、私たちがめざしているのは、人が未来に向かってよりよく生きるヒントになるような「こころの知」を発信することであり、そのメッセージは未来に向けて送りたい。そこで、「こころの未来に向けて研究をする、こころの未来研究センター。これがいい」と意見が一致した。
 スタートした当初は、大学の組織名称にひらがなや「未来」といった単語を使うことに反対もあった。しかし最近は批判の声も聞かれなくなって、「いい名前のセンターですね」と言われることも多い。「こころの未来」という名称のもつ柔らかく明るい雰囲気は、未来の社会に向けて、こころをめぐる多彩な研究を発信するセンターにふさわしいと思う。
 センターでは、「こころとからだ」「こころときずな」「こころと生き方」という三つの領域を設定して、研究者が相互のつながりや連携を意識しながら研究プロジェクトに取り組んできた。異なる専門領域をつなぐ学際研究を行うことや、基礎研究の成果を実践の場に役立てること、あるいは逆に、実践の場での経験から、新たな研究課題を見つけて研究を開始すること。日頃こうしたさまざまな取り組みを行っている研究者の、こころ学への思いや研究成果の一端が本書で語られている。
 本書の1章と2章では、神経生理学、脳科学と心理学の学際研究からみた「こころ学」「こころ観」が論じられる。3章では、聖地、言霊、芸能という三つの文化的側面から人文学的アプローチによるこころ観が語られる。4章ではアジア地域の古文書にあらわれる「こころ」概念をめぐって、人文学の方法によるこころ学の構築が試みられる。5章では、医療倫理学およびストレス軽減の実践研究を通してみた「こころ」について論じられる。6章は、クライアントや身体疾患の患者のケアを通して心理臨床という実践からみた「こころ」が語られる。7章では、日本と欧米の幸福感の比較を通してみた、文化心理学のアプローチによる「こころ」が論じられる。8章では、対話の映像分析を通してみた学際研究を中心に、実験心理学のアプローチによる「こころ」について論じられる。
 こうした多様な角度から「こころ」に迫る試みは、まだ始まったばかりである。異分野の研究者が一つの組織に集い、さまざまなアプローチでこころについて研究する。そうした環境で日頃ディスカッションを重ねて研究することに慣れてくると、異分野という境界を意識した遠慮はなくなり、忌憚のない意見交換が日常的に行われるようになる。本書の最期に収録した、本書執筆者による座談会から、そうしたセンターの闊達な雰囲気を感じていただければ幸いである。
(「はじめに」より)

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2016/04/28

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