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広井良典教授のエッセイが京都新聞夕刊(1月28日付)の「現代のことば」欄に掲載されました

 広井良典教授のエッセイが京都新聞夕刊(1月28日付)の「現代のことば」欄に掲載されました。  タイトルは「「無」の世界史」で、生命の進化の中で「死」と「性」が同時発生的であるとする議論と日本神話『古事記』のエピソードとの対比から始めつつ、農耕的なコミュニティの成立と「死の共同化」との関わり、紀元前5世紀前後の枢軸時代における抽象概念としての「空」や「永遠」の生成、近代社会における個人の独立と共有された死の喪失といった流れを再構成しながら、テクノロジーによる不死の追求が議論される現代そしてこれからの時代における死生観のあり方を論じる内容となっています。

現代のことば  「無」の世界史 広井良典 京都大学こころの未来研究センター教授
 生命の進化の中で「死」という現象が生まれたのは、「性」の発生と同時であるという議論がある。たとえばゾウリムシのような原始的な生物は分裂を繰り返して増えるが、その過程で遺伝子が変わることはないため、いわば同じゾウリムシがずっと生きていると見ることができる。それに対し、多細胞生物になってオス、メスといった性が生まれると、それぞれが遺伝子を半分ずつ交換し合って次の世代の個体が生まれるので、「個体の死」ということが初めて生じることになる。「死と性」は同じ起源ということだ。  ちなみに、日本神話の『古事記』の中に次のような物語がある。天から降りてきたニニギノミコトが姉のイワナガヒメと妹のコノハナサクヤヒメという姉妹と出会うが、美しいが(花が散るように)短命な妹のほうを選んだので、その子孫は死ぬ運命になったという話である。思えば先ほどの「死と性」の同起源ということを、古代人は直感的に理解していたのかもしれない。  ところで、こうして生命進化の中で「個体の死」というのもが生まれ、やがて人類が誕生したのだが、人間にとって、比較的当初から“耐え難い”難題だったのがこの「個体の死」だったことは想像に難くない。人間が「コミュニティー」を作り、さらに農耕を始め、他者とのつながりやコミュニケーションが密になるほどその度合いは高まっただろう。私は思うのだが・・・・
(2019年1月28日京都新聞 記事より)

2019/01/31

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