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第10回ブータン研究会の報告

【イベント名】第10回京都大学ブータン研究会
【日時】 2014年7月17日(木)17:00~18:30
【場所】 京都大学こころの未来研究センター(稲盛財団記念館2階)225会議室
【発表者】 西澤和子氏(京都大学霊長類研究所・研究員)
【講演題目】「ブータンの新生児に寄り添って:- 3年間の活動報告と今後の展望 -」
【発表概要】
 ブータンの抱える問題の1つとして慢性的な医師不足が挙げられます。特に新生児医療を担う小児科医は、ブータン国内に計7名しかおらず、毎年何千人と生まれてくるブータンの子供たちを僅か7名の医師で診察・治療しなければならないという困難な状況が存在するようです。
 今回は、現地で3年間、小児科医として医療・研究活動に従事してこられた西澤和子氏をお招きし、ブータンの新生児医療の現状と今後の課題について、自らのご体験やご研究にもとづいてお話し頂きました。
 ブータンを含む途上国が先進国に比べて平均寿命が低いことの主原因の1つとして、幼児の死亡率が高いことが挙げられます。ブータンにおける小児死亡率は下がりつつあるそうですが、依然として1カ月未満の死亡率は高いとのことです。その原因としては、高度な医療設備を持つ病院や小児科医の数が不足していることや、道路の未整備により救急搬送が困難な地域が多数存在するなど、様々な要因があるようです。
 また、これまでのブータンの医療においては臨床のみに力が注がれていたそうですが、西澤氏は、今後の医療の質改善を加速させるために、研究・教育・臨床の3つのバランスの重要性を説いておられます。さらに、病院や医師の数を劇的に増やすことは困難なため、限られた施設、人材、物資を効率よく活用する医療体制を構築していく必要があります。現在、西澤氏はティンプの王立病院を中心として、保健省と共同で、研究・教育・臨床を強化するための政策・システムづくりを行っておられるとのこと。今後のさらなるご活躍が期待されます。
 京都大学では、2010年に開始された京都大学ブータン友好プログラムに加え、2013年には京都大学付属病院、ブータン医科大学、ブータン政府保健省が三者覚書を締結し、京都大学側から医師や看護師が定期派遣されています。今回の研究会には、ブータン滞在をされた京大病院のスタッフも複数参加し、現地で経験した臨床や教育などについて様々な議論が交わされました。また、人類学や開発学、宗教学などの研究者からは、ブータンの文化や社会、死生観などと医療との関わりについて多数の質問や議論が行われました。
Bhutan10th.jpg

2014/07/28

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