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【教員提案型連携研究プロジェクト】終末期に対する早期支援(『きずな形成』領域)

研究代表者
清家 理 京都大学こころの未来研究センター 特定助教
共同研究員
荻野 勝洸  京都大学人間・環境学研究科・大学院生
松本 光生  京都大学人間・環境学研究科・大学院生
株本 千鶴  京都大学人間・環境学研究科・大学院生
村田 千代栄 国立長寿医療研究センター老年社会学研究部室長
鷲見 幸彦  国立長寿医療研究センター脳機能診療部長
武田 章敬  国立長寿医療研究センター脳機能診療部医長
センター参画
カール・ベッカー こころの未来研究センター 教授
梶原直美  こころの未来研究センター 研修員
                                    (教員提案型)
日本の超高齢化は年々加速化し、比例して国家財政に占める医療費の割合も増加の一途である。医療技術の高度化により、医療依存度や障害重症度が高い状態で療養継続が強いられる反面、家族単位の縮小化による介護の担い手不足が発生しており、社会的入院が多い状況である。これらの状況に対する政策的解決法として、病院機能分化の促進、在宅を中心とした介護保険制度の充実化が図られた。
しかし、医療や介護サービス等、社会資源の量に限りがある中、「社会資源等の有効で効率的な活用」対「患者や家族の意思尊重、最善の利益」等、社会的ニーズの相反が発生している。たとえば、早期に療養場所や治療内容の選択が迫られ、患者や家族に対する、自己決定のための時間的、心理的余裕がない課題が挙げられる。また、延命は可能になったが、患者や要介護者の意思が不明瞭もしくは確認不可の状況に陥り、胃ろうや点滴がいつまでも施される等、患者や要介護者の意思や状況にそぐわない事態の発生が挙げられる。患者は、意識や判断能力を失う前に自らの希望を明確にし、誰かに伝えていなければ、望まない医療やケアを受ける事態に陥るのである。つまり、これらの課題や事態には、以下の複数の倫理的な問題があると言える。
(A)患者の自己決定権が脅かされる恐れがある。
(B)事前指示書が無い限り、医療従事者は治療法の選択に葛藤や混乱を来す。
(C)事前に代理決定人が明確になっていなければ、関係する家族が延命や療養
場所の決定について戸惑ったり、言い合ったりする。
(D)医療の優先順位が理に適わず、過剰な医療が税金等の財源の非効率な活用に
なる。
以上の倫理的な問題に対する解決法が、海外を中心としたAdvance Directive(事前指示)やAdvance Care Planning(事前意思表示準備、以下、ACP)に関する先行研究で示され、日本への導入も急務とされている。しかし、ここで倫理的な課題が一点出現する。それは、事前指示やACPの土台である、「自己決定」や「死の準備」に対する文化的差異である。つまり、日本の文化に即した終末期の備えに対する意思決定のための相談、教育等、計画的な支援内容と方法の明確化が必要なのである。
そこで本研究では、まずACPを「生きていく場所や方法に関する意思決定を計画的に支援していくプロセス」と操作的に定義する。そして、日本の文化に即したACPにおける意思決定のための相談、教育等の支援内容と方法を明確化させた、終末期の備えに対する早期支援プログラムの開発を研究目的とする。

2014/09/01

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