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河合教授と内田准教授の共編著『「ひきこもり」考』が出版されました

130426hikikomori_kou.png 河合俊雄教授と内田由紀子准教授による共編著『「ひきこもり」考』(こころの未来選書)が、創元社より出版されました。
 『「ひきこもり」考』は、社会心理学、文化心理学、臨床心理学、ジャーナリズムなど異なる分野の第一線で活躍する識者らが、多様な視点から「ひきこもり」を議論し、考察を試みた論考集です。河合教授、内田准教授をはじめ、ジャーナリストのマイケル・ジーレンガー氏、北山忍ミシガン大学教授(こころの未来研究センター特任教授)、嘉志摩佳久メルボルン大学教授、境泉洋 徳島大学大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部准教授、ビナイ・ノラサクンキット ゴンザガ大学助教が著者に名を連ねています。

「ひきこもり」考(こころの未来選書) 河合俊雄、内田由紀子編
<目次>
・はじめに………内田由紀子
・第1章 ひきこもり――現代日本社会の”行きづまり”を読み解く………マイケル・ジーレンジガー/翻訳 内田由紀子 
・第2章 自己矛盾のメンタリティー――ひきこもりの文化心理学………北山忍
・第3章 ひきこもりと日本社会のこころ………内田由紀子
・コラム 「ニート・ひきこもり」についての社会心理学的考察―― 原因と対処方略について………ビナイ・ノラサクンキット/翻訳 内田由紀子
・第4章 「ひきこもり」と学習………境泉洋
・第5章 日本における若者の病理の変化――ひきこもりと行動化………河合俊雄 
・第6章 臨床現場から見る「ひきこもり」……… 岩宮恵子 
・第7章 ひきこもり考――三氏(ジーレンジガー・北山・河合)の議論へのコメント………嘉志摩佳久 
・おわりに――こころの自己矛盾とつなぐもの………河合俊雄
・註および文献
(判型:A5判/頁数184頁/発行:創元社)

社会心理学と臨床心理学、それぞれの視点から多角的にアプローチ
――内田由紀子(こころの未来研究センター准教授)
 本書では現在の日本社会の若者に生起している現象である「ひきこもり」について、主に社会心理学と臨床心理学の双方からの考察を試みています。現代の日本社会では、70万人もの若者がひきこもり状態にあるとされています。こうした「ひきこもり」は、一つの行動として表現される現象でありながら、その背景と心のありようは複雑で多層的です。2008年3月にこころの未来研究センターで行われたワークショップ「日本文化とこころの行方:『こもる』ことの意味」での議論を発端とし、異なる分野から一つの現象にアプローチするという、ユニークで「こころの未来」らしい書籍となりました。
 ひきこもりを社会・文化的構造の要因から考察する社会心理学のアプローチと、個人の持つ来歴や個別性を深く内側から理解しようとする臨床心理学のアプローチ。前半の社会心理学的な視点(第1章:マイケル・ジーレンジガー、第2章:北山忍、第3章:内田由紀子、コラム:ビナイ・ノラサクンキット)、後半の臨床心理学的視点(第4章:境泉洋、第5章:河合俊雄、第6章:岩宮恵子)、そして第7章(嘉志摩佳久)での「ひきこもりの縦糸と横糸からの分析」という包括的視点へ、という流れの中で、それぞれが異なる立場と方法論からひきこもりを検討しているにもかかわらず、期せずして共通点が浮かび上がってきます。たとえば、新しい価値観と既存の価値観の間に生じる「自己矛盾」。あるいは共同体が失われた一方で、「狭い関わり合い」にしがみつこうとする傾向。こうしたことがひきこもり的メンタリティーの背景として重要な要素となっていることが見えてきます。
 本書はタイトルに示すとおり、ひきこもりについて「考える」ことが主眼となっており、その具体的な解決や方策、あるいは原因論を呈示するものではありません。しかし、このような分析的視点が、結果的にひきこもりの実情を理解し、何らかの前進が将来的にもたらされること、あるいは「新しい日本の産みの苦しみ、あるいは新しい時代への胎動の一部として」(嘉志摩)ひきこもりをとらえなおし、新しい視点を見いだしていくことにつながればと願います。
 単なる制度や居場所作りによる支援構築だけでは根本的には問題は解決しません。「場とは、自分の居場所でありながら、かつ世界とつながっていなければ」(内田)ならず、そして「境界をはっきりさせることで逆説的に外の世界につながり、出て行くことができる。そのためには、つなぎ、かつ区別することのできる他者あるいは見守り手(こころの専門家)の存在が必要」(河合)なのではないでしょうか。
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 書籍はアマゾンやおもな書店で販売中です。創元社の書籍ページでは、内田准教授による「はじめに」全文と、マイケル・ジーレンガー氏の第1章の一部、河合教授の第5章の一部、著者略歴をお読みいただけます。
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2013/04/16

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