平石 界 Archive

指と科学とお相撲と(2)

  • 2012-02-08 (水)

前回の記事から時間がたってしまいましたが、指と日本の伝統的格闘技、すなわち「大相撲」の関係について、ご紹介したいと思います。実はのんびりしている間に、大手ブログサイトで論文が紹介されてしまったり、研究チームのリーダーである大竹文雄先生ご自身がブログで紹介されたりしたので、研究結果の大枠について、すでにご存知の方も多いと思います。そこで、それらの記事で触れられていない、論文の細部、重箱の隅の味わい方をご紹介しようかと思います。

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指と科学とお相撲と(1)

  • 2011-12-02 (金)

皆さん「科学」というものに、どのようなイメージをお持ちでしょうか。

これは科学者の側の被害妄想かも知れませんが、しばしば「科学的」というと「ゼッタイに正しい」「ゼッタイとは言わないまでも、かなり正しい」と思われていたり、そこから逆に「こんな妙な話を”正しい”というのだから、科学は怪しい」とか思われることがあるように感じます。被害妄想かも知れませんが。

「科学の定義」については、色々な意見があることと思います。ただ一つ言えることは、「一人の天才科学者によって、世紀の大発見がなされる」という科学へのイメージは、しばしば誤りである、ということです。

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能面の笑み、能面の憂い

  • 2011-02-15 (火)

子どもの頃のある冬の晩、ふと見上げた夜空に三つの明るい星が並んでいることに気が付きました。きれいな星を見つけたことを親に得意げに伝えたら「あれはオリオン座だよ」と簡単に返されました。その時に「ああ、みんな思うことは同じなんだな」と感じたことを覚えています。

オリオン座という名前は知っていました。でも、それがどんな星座かは知りませんでした。それでも、あの三つ星は「特別なもの」としてヒライシの目に映ったのです。20世紀のアジアの片隅に住む少年にも、古代ギリシャの人々にも、あの三つ星は特別に見える。古代のシュメール文化、エジプト、中国などでも、オリオンの三つ星は特別なものと考えられていたそうです(Wikipeida; オリオン座)。時代も言葉も文化も違う人々が、同じものをみて同じように感じる。人間にはさまざまな違いがあるけれど、同じ「こころ」もあるのだと思うと、ちょっと嬉しくなります。今回はそんな研究を紹介しましょう。テーマは日本文化。能です。

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上目遣いと女っぽさ

  • 2011-01-13 (木)

皆さん、写真うつりを良くするために、どんなことを気をつけていますか?

にっこり笑うとか、目力を込めるとか、人によりさまざまな戦略があることと思います。今回は、どんなポーズで写真を撮ると魅力的にみえるか?という研究を紹介してみましょう。

ただし、効果は女性限定です。

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全ては孫のために。

  • 2010-11-24 (水)

久しぶりに映画館で映画を観てきました。主役は3人の女性。と見えて、実はもっとも重要な役回りはもう一人の高齢の女性、世間的には「おばあさん」にあたる人です。彼女が影の主役といっても言い過ぎではないでしょう。

と、聞いて、みなさん、どういう映画を思い浮かべましたか?

アクションあり、爆発シーンありのハリウッド映画でしょうか。めくるめく歌とダンスで彩られたインド映画でしょうか?それとも、どことなく憂いを帯びたフランス映画?

「おばあさんが影の主役の映画」ときいて、皆さんはどういう映画を思い浮かべるでしょうか。

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オオカワウソは敬老の夢を見るか

  • 2010-10-01 (金)

大変な暑さの夏でしたが、皆さま、無事に乗り切られましたでしょうか。そうこうしているうちに、ふと気がついたら敬老の日をすでに過ぎてしまっていました。時期を逸した観が大きいですが、敬老の日用に準備しておいた話を、いまさらご紹介しようと思います。

「敬老の日」を持ち出すまでもなく、日本の社会には、年老いた人々への敬意を奨励する文化があります。ここには儒教の影響などもあるでしょうが、それだけなのでしょうか?例えば他の社会でも敬老の精神は見られるのでしょうか?はたまた、人間以外の動物でも、敬老の精神(に通ずる行動)が見られたりするのでしょうか?

そんな疑問にたいして、Duke大学のDavenportさんが、老母をいたわるカワウソの研究を報告しています(注1)。

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人はどれだけ覚えられるのか

  • 2010-07-08 (木)

私たちはとても多くのモノ、コトを覚えて生活しています。例えば、13才児童の語彙量は3万語前後という報告があるそうです。生まれた瞬間から毎日単語を覚えていったとしても、一日あたり平均6.3語ほど新しい単語を覚えてきたことになります(閏年を無視して一年=365日で計算した場合)。中学高校で英単語を覚えるときにした苦労を思うと、母語を覚えるときの記憶力にビックリします。
illust_20100708.jpg
それでは、私たちはいったいどれくらい沢山のコトを覚えることができるのでしょうか?そもそも記憶力に限界はあるのでしょうか?時間さえかければ、人は無限に多くのことを覚えられるのでしょうか。円周率を10万桁暗唱した方の話などをきくと、ひょっとすると人間の記憶力は無限なのかも知れない。頑張ればいくらでも沢山覚えられるのかもしれない、なんて気もしてきます。

イリノイ大学のVossさんは、この疑問に果敢に取り組みました(※1)。

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譲り合いのまなざし

  • 2010-03-31 (水)

街中を歩いていたら、見知らぬ人が立ち止まって、ちょっと離れたところをじーっと見ています。あなただったら、どう思いますか?おそらく、ついつい、その人が見ている方に何があるのか、見ようとしてしまうのではないでしょうか。「え?なに?何か面白いもの(変なもの)でもあるの?」。ヒライシなどは、そうやって視線を追うのは何か「負けた」感じがして、抵抗するのですが、しかし「見たい」という気持ちに抗うのはなかなか大変です。

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笑顔とインフルエンザの微妙な関係

  • 2009-05-13 (水)

五月晴れの気持ちよい季節になりましたが、皆さん、いかがお過ごしでしょうか?
京都は、鴨川沿いの桜もすっかり新緑に染まり美しいです。:)
それなのに、新型インフルエンザのために、
米国やカナダからのお客さんが自宅待機を求められており、申し訳ない限りです。:(

さて皆さん、上で使った顔文字にお気づきいただけたでしょうか?

ヒライシが使った :) とか :( といった顔文字は、英語を使うときによく用いられるものです。
日本でよく使う顔文字 (^^) とか (;_;) とちょっと違いますよね。何が違うのでしょう?

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アタマにキくクスリ

  • 2009-04-01 (水)

オリンピックや米大リーグなど、スポーツの世界でのドーピングが問題になることは多くあります。でも皆さん、どこか他人事だと思っていませんか?

メダリストのドーピングが発覚して日本人選手がメダルを取れて良かった。ズルした奴がつかまるのは当然。やっぱり正直にがんばった人が報われなければ。そんな風に思っていませんか?

でも実は、カラダだけじゃなくて、アタマにキくクスリもあるんです。飲めばアタマが良くなるクスリが。知っている人はもう使ってます。


あなたは、どうしますか?

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ただ目にするだけで

  • 2009-03-02 (月)

ある日あなたが教室に入ると、真っ黒のゴミ袋を頭から被った男が後ろの方の席に座っている。見えるのは裸足の足先だけ。ところが教師は、何も言わずに淡々と授業を進める。ゴミ袋男は月、水、金の2限にやってきて、クラスの一番後ろで静かに授業を受ける。そんなことが数週間にわたって続く。

あなたはどんな気持ちになるでしょうか?

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追悼

  • 2008-12-10 (水)

「こころ」を学ぶすべて者にとって、その貢献を感謝すべき人物が二人、相次いでこの世を去りました。

お一人はヘンリー・モレソンさん。研究協力者"H.M."として、多大な貢献をされました。12月2日になくなられました。享年82才。

お一人はザイアンス博士。研究者として、心理学に多大な貢献をされました。12月3日に亡くなられました。享年85才。

謹んでお二方のご冥福をお祈り申し上げます。

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(イグ)ノーベル賞を取るということ

  • 2008-11-19 (水)

illust_20081119.jpg

この秋、私にとってちょっとしたニュースがありました。私が専門とする「進化心理学」という領域から、(イグ)ノーベル賞が出たのです。*1

「排卵周期がラップダンサーのチップに与える効果」というタイトルの研究で、米国ニューメキシコ大学のGeoffrey Millerさん、Joshua Tyburさん、Brent Jordanさんの共同研究です。*2

"ラップダンサーってなに??なんの研究なの??"

私もそう思いました。そしてそれは全て論文に書かれていました。ご紹介しましょう。

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サンクコストの誤り:だってもったいないじゃないの心理

  • 2008-11-07 (金)

雨の中出かけて、やっと借りられた話題のDVD。なのに面白くない。見始めて5分で確信。最後まで見ても絶対つまらない。でも、払ったお金がもったいないから・・・・最後まで見ました。

こんな経験、したことありませんか?

つまんないと分かっているDVDをみてしまうようなことを「サンクコストの誤り」(Sunk Cost Fallacy)といいます。そう、これは「誤り」なのです。でもなんでこれが誤りなのでしょう?

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