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鎌田教授の共著書『宮沢賢治の切り拓いた世界は何か』が出版されました

1505kamata_miyazawakenji.png 鎌田東二教授の共著書『宮沢賢治の切り拓いた世界は何か(笠間ライブラリー―梅光学院大学公開講座論集)』が2015年5月、笠間書院より出版されました。


 東日本大震災後、宮沢賢治の作品があらためて注目されています。本書は、近代日本文学研究者で梅光学院大学大学院客員教授の佐藤泰正氏が編者をつとめ、宮沢賢治の文学とその人生に様々な角度から光をあて、賢治の世界の真髄を探った新たな書です。鎌田教授は「分子の脱自ー宮沢賢治のトーテミズム、その堕落と飛行」というタイトルで、賢治の表現世界と彼の魂が発した「心象スケッチ」の意味について独自の視点から考察。最晩年の小説『疑獄元兇』を冒頭で取り上げて父子の関係性にせまると共に、類いまれなる「原始宗教的な根源感覚」を持ち、「『ドリームランド』の『実在』を視、確信していた確信犯」である賢治の発信する作品が持つ、人間世界を超越した透明性と哀しみと力について解説しています。



 そのような苦の現実世界に、あえて「願ひによって」墜落し、落下してきた者たちがいる。そんな「いちばん強い人たち」は、地湧の菩薩であり、墜落する天人なのだろう。そして、彼らが墜落する「ドリームランド」の「実在」を視てきた自分も、そこに属する者である。そうである、と思う。いや、そうでありたい。そして、その「人たち」と共に、「人人と一緒に飛騰」していくこと、それがこの世における自分の仕事であると覚悟する。
 「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」(『農民芸術概論綱要』「序論」)からだ。だから、「僕もうあんな大きな暗の中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいはひをさがしに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行かう。」(『銀河鉄道の夜』)と決意する。
 だが、カムパネルラはいない。ジョバンニは孤独だ。独りだ。独りで行かねばならぬ。「堕ちるために又泳ぎ切るために」。
 宮沢賢治が一貫して伝えているメッセージは、悲しいけれど、そのようなひとりぼっちの「独行」である。保阪嘉内と訣別し、最愛の妹としを喪い、「願ひ」と共に行ける人を失くした。その喪失の中であっても、しかしさらにその先まで歩まなければならない。ジョバンニが、グスコンブドリ(グスコーブドリ)が、一郎が、三郎が行かなければならないのは、そのような孤独な道行だ。


(「分子の脱自ー宮沢賢治のトーテミズム、その堕落と飛行」鎌田東二 より)


『宮沢賢治の切り拓いた世界は何か(笠間ライブラリー―梅光学院大学公開講座論集)』
編者:佐藤泰正
執筆者:原子朗、鎌田東二、北川透、山根知子、木原豊美、加藤邦彦、佐藤泰正
発行:笠間書院/2015年5月
価格:1,080円(税込)
判型:四六判・並製・カバー装・218頁
ISBN-10: 4305602644
ISBN-13: 978-4305602640


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