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『ミネルヴァ通信「究」』に河合教授の連載第2回が掲載されました

 ミネルヴァ書房の発行する月刊誌『ミネルヴァ通信「究」(きわめる)』10月号に河合俊雄教授の連載「こころの最前線と古層」第2回が掲載されました。今回のテーマは、「発達障害と中世のこころ」です。


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《概要》
発達障害の特徴を一口で言うと、「主体のなさ」や弱さということになるが、
心理療法が前提としていた「主体」とは西洋近代に登場した非常に特殊なものと言える。
現代は個人の主体性は再び揺らぎつつあることを考えれば、前近代の世界観が参考になる。
日本の中世の説話などを読むと、自他の区別が曖昧で、現実と夢、この世とあの世の区別も明瞭でなく、
ましてや個人の主体性など問題にならなかったことがわかる。 (解説:畑中千紘助教)


1610kiwameru.pngこころの最前線と古層(二)
「発達障害と中世のこころ」 河合俊雄


 近年、家族やまわりの人に「発達障害だと言われた」という訴えで心理療法を受けにくる人が増えている。実際のところ、二〇〇〇年以降に発達障害、あるいは自閉症スペクトラム障害と診断される人の数は爆発的に増加している。私が大学で心理療法を学びはじめた一九八〇年頃に猛威を振るっていたのが「境界例」である。元々は、神経症と精神病との境界という意味であったのだが、後には特異な人格として捉えられるようになった。二者関係への執着、無制限の自己主張を特徴としていて、そのためにセラピストにも愛憎の両極の感情を向け、極端な要求と非難を向けた。
 ところがそれはいつのまにか下火になり、一九九〇年代の解離性障害を経て、今は発達障害が最も流行している。そもそも「自閉症」がようやく第二次世界大戦中にアメリカのカナーとオーストリアのアスペルガーによって独立に発見されたことも時代性を示唆している。重要の場合に対人関係や言語能力が全く成立しないこともあるので、以前は早期母子関係の問題とみなされていたけれども、近年は脳中枢神経系の障害と考えられ、教育や訓練による対応が中心になっている。また重症だけでなく、軽症まで連続してスペクトラムで捉える見方が支配的である。
 発達障害の特徴を一口で言うと、「主体のなさ」や弱さということになる(河合俊雄編『発達障害への心理療法的アプローチ』創元社、二〇一〇年)。‥‥


(ミネルヴァ通信「究」10月号より)


出版社のページ(ここから購入可能です)
https://www.minervashobo.co.jp/book/b245686.html


□関連書籍
1610kawai_kiwameru2.png
『発達障害への心理療法的アプローチ』(創元社、2010年)
著・編集:河合俊雄、 著:田中康裕、畑中千紘、竹中菜苗