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「フューチャーマインド2―アートと科学シンポジウム―

 「フューチャーマインド2―アートと科学シンポジウム―」を2018年2月18日(日)に稲盛財団記念館3階大会議室にて開催しました。世界各地で活躍するメディアアーティスト・研究者をお招きして、アートと科学を横断する作品制作、研究、教育に関わる様々な試みについて話を聴き、討論する場を設けました。
 はじめにシンポジウムの企画者でファシリテーターでもある京都大学こころの未来研究センターの吉岡洋特任教授よりシンポジウムの概要説明があり、続いて吉川左紀子センター長からはセンターを代表して挨拶がありました。
 イギリス、フランス、アメリカから4名の講師をお招きした今回のシンポジウムは、午前中に2名の講演と質疑応答、休憩をはさんで午後から残る2名の講演と質疑応答、最後は講師4名と参加者との全体討論を行いました。
ゲーム制作者を経てロンドン大学ゴルドスミス校コンピューティング学部で教えるウィリアム・レイサム教授は「Mutator VR Art and Research and Interdisciplinary Work Across Art and Science」、研究と芸術創作との重なりをテーマとするパリ第一大学のオルガ・キッセレーヴァ教授は「Artist as Researcher」、忘れられたメディア装置を手がかりに社会や人間とメディアとの関係を探究する"メディア考古学"の提唱者で、カリフォルニア大学のエルキ・フータモ教授は「Cyborgs, Posthumanism, and Media Archaeology:Concepts Looking for Contexts」、ロボット工学や創発概念を元に作品制作を行うオハイオ州立大学のケン・リナルド教授は「Semi-living machinic species」と題して、それぞれ自身の活動や、作品について画像と映像を交えて紹介しました。
 最後の全体討論では、会場の学生や研究者やアーティスから、非常に熱心な質問が飛び交い、討論はメディアアートや科学的研究と創造活動との境界領域に関するものなど密度の濃いものになりました。参加者からはこのような国際的な講演者からの話を聞く機会を得られてよかったという声をいただきました。


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[開催案内]
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[DATA]
▽日時:2月18日(日)10:00~17:00(開場09:30)
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽講師:ウィリアム・レイサム教授(ロンドン大学ゴルドスミス校)
    オルガ・キッセレーヴァ教授(パリ第一大学)
    エルキ・フータモ教授(カリフォルニア大学)
    ケン・リナルド教授(オハイオ州立大学)
▽対象:研究者・学生
▽言語:英語(通訳なし)
▽参加者人数:27名


上廣倫理財団寄付研究部門 2017年度研究報告会「幸せに生きる知恵」を開催しました

 上廣倫理財団寄付研究部門 2017年度研究報告会「幸せに生きる知恵」を2018年1月21日、稲盛財団記念館3階大会議室にて開催しました。


 2012年春に創設した本研究部門では、公共政策、医療福祉、臨床心理学、伝統知、哲学など多様な専門領域の研究者が多種多様なアプローチで「こころと倫理」に関わる学術研究を行っています。今年度の研究報告会では、「幸せに生きる知恵」をテーマに、若手研究者による研究報告、「幸せはローカルから:GNHと日本」を主題にした研究者と実践家による討議を行いました。


 はじめに、吉川左紀子センター長による主催者挨拶、髙口吾郎上廣倫理財団常務理事からの来賓挨拶があり、広井良典教授が本研究部門の取り組みを紹介しました。研究報告では、まず医療・保健・福祉領域より清家理助教が「超高齢社会における現代日本の医療・保健・福祉にかかる倫理-今まで・現在・今後-」と題し、認知症の家族介護者に対する自律支援をめざした介入研究の成果と今後の展望について話しました。続いて、臨床心理学領域より畑中千紘助教が「ポスト成長時代のこころの問題と変容」と題し、2017年度の研究成果から現代大学生のアグレッション研究を取り上げ報告しました。三つ目の研究報告は、伝統知・倫理思想領域より熊谷誠慈准教授が「アジアと日本の精神性、幸福感、倫理観」と題し、本年度のテーマであった仏教の存在論の概要や国際的な活動の成果を紹介しました。


 休憩をはさんで後半は、「幸せはローカルから:GNHと日本」をテーマとしたパネルディスカッションが行われました。パネリストは広井教授、荒川区自治総合研究所の猪狩廣美所長、関西大学の草郷孝好教授の3人がつとめ、指定討論者としてレジリエント・シティ京都市統括監(CRO)の藤田裕之氏に登壇いただき、拡大・成長のグローバリズムの時代からローカルへと視点を転じ、幸福な未来の可能性をローカルに見出すための提言と議論が活発に繰り広げられました。


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[開催案内]
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[DATA]
▽日時:2018年1月21日(日) 14:00-17:00 (13:30~受付開始)
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽参加費:無料
▽定員:100名(申込みによる先着順)。定員になり次第、締め切らせていただきます。
▽プログラム
14:00-14:05 センター長挨拶 吉川左紀子(京都大学こころの未来研究センター 教授・センター長)
14:05-14:10 来賓ご挨拶
14:10-14:20 上廣倫理財団寄付研究部門の取組紹介 広井良典(京都大学こころの未来研究センター 教授/上廣倫理財団寄付研究部門兼任)
14:20-14:40 研究報告① 医療・保健・福祉領域 清家 理(上廣倫理財団寄付研究部門 特定助教)
14:40-15:00 研究報告② 臨床心理学領域 畑中千紘(上廣倫理財団寄付研究部門 特定助教)
15:00-15:20 研究報告③ 伝統知・倫理思想領域 熊谷誠慈(上廣倫理財団寄付研究部門長 特定准教授)
15:20-15:30 休憩
15:30-17:00 パネルディスカッション「幸せはローカルから:GNHと日本」パネリスト 広井良典、猪狩廣美(公益財団法人荒川区自治総合研究所・所長)、草郷孝好(関西大学社会学部・教授) 、指定討論者 藤田裕之(レジリエント・シティ京都市統括監(CRO))
17:00 閉会
▽参加者数: 名

岩手県滝沢市と「幸福感を育む環境づくりに関する包括連携協定」を締結しました

 こころの未来研究センター内田研究室(内田由紀子准教授)と岩手県滝沢市は2018年1月29日、「幸福感を育む環境づくりに関する包括連携協定」を締結しました。
 内田研究室と滝沢市は、同市が第1次滝沢市総合計画を進めていくに当たり、幸福感を育む環境づくりの観点から連携し、市内における意識調査等、滝沢市をフィールドとした研究に取り組んでいきます。
 同日、稲盛財団記念館1階セミナールームにおいて締結式が行われ、柳村典秀市長をはじめとする滝沢市の関係者、吉川左紀子センター長、内田由紀子准教授ならびに研究員らが出席し、協定書への署名、挨拶、概要説明、記念撮影が行われました。


 協定についての詳細は、下記の資料をご覧ください。


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□1月11日付の岩手日報に掲載 「滝沢市と京都大研究センター 幸福づくりへ二人三脚」
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(2018.1.11 岩手日報)


□岩手県滝沢市ウェブサイト:第1次滝沢市総合計画(幸福感を育む環境づくり)
http://www.city.takizawa.iwate.jp/admin/keiei/sougou_keikaku/kouhukukan.html


[発表資料]
京都大学こころの未来研究センターと滝沢市との連携協定締結について
―幸福感を育む環境づくりに関する包括連携協定―


概要
 京都大学こころの未来研究センターと、滝沢市の間で「幸福感を育む環境づくりに関する包括連携協定」を締結し、地域における新たな豊かさとしての「幸福」に関して、学術的な面及び実際の地域活動の面の両面から研究を進め、地域の豊かさや魅力についての検討を深めていく。


1. 背景
 現代の日本においては、人々が重視する豊かさがこれまでの「モノの豊かさ」から「こころの豊かさ」にシフトしている。滝沢市ではこのトレンドを受けて、市の将来像を「誰もが幸福を実感できる活力に満ちた地域」と設定し、その実現に向けた市総合計画では「幸福感を育む環境づくり(の基盤づくり)」を進めることで、人とのつながりを通じた市民の「こころの豊かさ」が育まれ、市の発展につながるという仮説を立てて市政を運営している。しかし、現状は前述の仮説に基づくものでしかないため、人とのつながりが地域の幸福にどのような影響を及ぼすのかという点について、データや客観的事実等に基づく、十分な分析による学術的根拠により裏付けを行う必要がある。
 京都大学こころの未来研究センターでは、内田由紀子准教授を研究代表者として、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)が実施する「持続可能な多世代共創社会のデザイン」研究開発領域の研究開発プロジェクトを推進している。本プロジェクトでは、地域の幸福を多面的に測定し、その結果を地域社会にフィードバックすることで、地域の強みを検討する機会を提供している。その一環として、京都大学こころの未来研究センターと滝沢市が、行政と学術という領域を超えた包括連携協定を結ぶことにより、市を対象とした調査分析を実施し、魅力的な地域のありかたについて提言を行っていく。


2. 研究手法・成果
・滝沢市内一部地域において、アンケート調査を実施、分析を行う。
・これまで滝沢市全市を対象に行ってきたアンケート調査の分析を行う。
・従来の関西地方での研究成果と、滝沢市での成果を比較することで、地域性を反映した多様な幸福感を検討する。


3. 波及効果、今後の予定
・自治体が「幸福」を掲げた市政運営を行うことが、これまで以上に一つの潮流となりうる
・東北地方~関西地方という多様なフィールドを活用し、地域性を加味した全国にまたがる幸福感醸成につながる。
・地域という場がもつ幸福の土壌が、そこに暮らす個人にどのように影響を与えるのか。また、個人は地域にどのように貢献するのか。こうした観点からあらたに幸福のあり方をとらえなおす。


4. 研究開発プロジェクトについて
・JST/RISTEX「持続可能な多世代共創社会のデザイン」研究開発領域・平成27年度採択プロジェクト
「地域の幸福の多面的側面の測定と持続可能な多世代共創社会に向けての実践的フィードバック」
研究代表者:内田由紀子・京都大学こころの未来研究センター准教授
https://ristex.jst.go.jp/i-gene/projects/h27/project_h27_1.html


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畑中助教に大阪府学校給食会より感謝状が授与されました

 畑中千紘助教(上廣倫理財団寄付研究部門)が、2017年12月25日に大阪市中央公会堂で開催された公益財団法人大阪府学校給食会設立60周年記念事業食育講演会において同会より感謝状を受け取りました。

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 栄養教諭、学校栄養職員に向けて、心理療法に基づいた心理学の専門知識を食育の現場において活用すること、発達障害への理解とアプローチや子どもの食とこころについてなどの研修を行ったことに対し、大阪府内の学校給食の充実および、学校給食会の事業に貢献したとして評価されたものです。


 今後も研究成果を広く社会に還元するため、こうした活動を行って参ります。


◇参考記事
畑中助教が平成29年度栄養教諭支援セミナー(主催:大阪府学校給食会)で講師を務めました


「支える人の学びの場 医療および教育専門職のための こころ塾2017」を開催しました

17kokorojuku.png 「支える人の学びの場 医療および教育専門職のためのこころ塾2017『感情と身体性:先端の知と実践をつなぐ』」を、2017年9月30日、10月21日、11月11日、京都大学稲盛財団記念館3階大会議室で開催しました。


 5年目を迎えた今回、作業療法士、理学療法士、臨床心理士、言語聴覚士などの医療の仕事に従事されている方々と、教育の仕事に従事されている方々を迎え、3日間の日程で実施しました。各回とも午前中は乾敏郎追手門学院大学心理学部教授(センター特任教授、京大名誉教授)による講義ならびに各回のゲスト講師一名による講義があり、午後には事例報告、グループディスカッションと発表、講師への質疑応答などの時間が設けられました。


 第1日目の9月30日、乾教授は「感情と身体性1:円滑なコミュニケーションを支える神経機構」と題して講義し、続いて医学研究科の村井俊哉教授が「社会性という観点から精神科の病気を理解する」という演題にて講義しました。午後には、医学部附属病院で作業療法士を務める加藤野百合先生が事例報告を行いました。第2日目の10月21日は、乾教授の講義「感情と身体性2:感情の役割とその神経機構」から始まり、続いて島根大学人間科学部(当時)の岩宮恵子教授が「思春期臨床にみる感情と身体性」という演題にて講義しました。事例報告は愛知県心身障害者コロニー中央病院・作業療法士の松田祥子先生が行いました。第3日目の11月11日は、乾教授の講義「感情と身体性3:自閉症の神経機構」に続いて、教育学研究科の森口佑介准教授が「自己制御の初期発達とその支援」と題して講義し、事例報告を医学研究科助教で作業療法士の松島佳苗先生が行いました。


 「先端の知と実践をつなぐ」というテーマの通り、最新の研究知見と現場での事例を共有しながら講師と参加者、参加者同士が学び、交流できた有意義な3日間となりました。


○受講者の感想(開催後のアンケートより)
・「毎回、どの講師の先生のお話も大変勉教になりました。事例報告は丁寧にまとめられたものばかりで、自分の実践に多くつながることがあり、参考になりました。グループ討議まで充実していて楽しく参加できました。(臨床心理士)」
・「多職種との人と出会え、別の視点を知る機会になりました。脳機能の研究、知見と現場での実践の両方を知ルことができたことも良かったです。普段、こどもと関わることはないですが、高齢者成人に関わる身としても参考になることがたくさんありました。(作業療法士)」
・「自閉症の理解につながり、身体の動きについても神経基盤で考えることで、今までとは異なる見方ができるようになりました。(学生)」
・「最新の研究と実践報告の両方を同時に、そしてそれらを関連づけて学べるのが魅力だと思います。(学校関係者)」
・「脳科学的な側面からの心の理解ができ、毎回異なる講師の先生方のお話が面白く、あっという間でした。(作業療法士)」


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[DATA]
「支える人の学びの場 医療および教育専門職のための こころ塾2017『感情と身体性:先端の知と実践をつなぐ』」
▽日時:2017年9月30日(土)、10月21日(土)、11月11日(土)各日とも10時~17時まで (受付開始 9時30分~)
▽会場:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽プログラム:
9:30~ 受付開始
10:00~11:15 講義① 乾敏郎(追手門学院大学心理学部・教授 / 京都大学こころの未来研究センター・特任教授)
11:30~12:45 講義② ゲスト講師
12:45~13:50 昼食
13:50~14:20 午前中の講義まとめ
14:20~15:10 事例報告
15:20~16:10 グループディスカッション
16:10~17:00 講師とのQ&A
9月30日(土) 
〇「感情と身体性1:円滑なコミュニケーションを支える神経機構」 乾敏郎(追手門学院大学心理学部・教授 / 京都大学こころの未来研究センター・特任教授)
〇「社会性という観点から精神科の病気を理解する」 村井俊哉(京都大学大学院医学研究科・教授)
〇事例報告 加藤野百合(京都大学医学部附属病院・作業療法士)
10月21日(土) 
〇「感情と身体性2:感情の役割とその神経機構」 乾敏郎(追手門学院大学心理学部・教授 / 京都大学こころの未来研究センター・特任教授)
〇「思春期臨床にみる感情と身体性」 岩宮恵子(島根大学人間科学部・教授・臨床心理士)
〇事例報告 松田祥子(愛知県心身障害者コロニー中央病院・作業療法士)
11月11日(土) 
〇「感情と身体性3:自閉症の神経機構」 乾敏郎(追手門学院大学心理学部・教授 / 京都大学こころの未来研究センター・特任教授)
〇「自己制御の初期発達とその支援」 森口佑介(京都大学大学院教育学研究科・准教授)
〇事例報告 松島佳苗(京都大学大学院医学研究科・助教・作業療法士)
▽参加人数:9/31:83名、10/21:80名、11/11:74名


主催:京都大学こころの未来研究センター
共催:京都大学大学院医学研究科 脳機能リハビリテーション学分野 発達障害系研究室

吉川教授の共著論文が平成29年度日本心理学会優秀論文賞を受賞しました

nunoi_yoshikawa.png 布井雅人聖泉大学講師と吉川左紀子教授の共著論文が、平成29年度日本心理学会優秀論文賞を受賞しました。


 受賞した論文は、『心理学研究』第87巻第4号に掲載された「表情の快・不快情報が選好判断に及ぼす影響―絶対数と割合の効果―」です。優秀論文賞は、同学会が発行するジャーナル「心理学研究」および"Japanese Psychological Research"の2誌に掲載された原著論文の中から学会に対して特に大きな貢献を果たした論文に与えられるものです。今回は、2016年に発表された計77論文の中から、4編が優秀論文賞に選ばれました。


 受賞理由は、以下の通りです。
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○理由の概要
 本研究は,社会的相互作用の効果について表情刺激を利用した認知心理学実験で検証したものであり,広範囲な心理学のテーマに関連している点が高く評価された。また,日常的に体験する社会的場面に正面から取り組み,複数の実験で一貫した結果を得て,読みやすい文章でまとめた点も評価された。
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 こころの未来研究センターでは、2015年に北山忍特任教授と阿部修士准教授が同学会国際賞を、内田由紀子准教授が優秀論文賞を受賞。2016年には下條信輔特任教授と内田准教授が国際賞を受賞しており、3年連続でセンターのスタッフが表彰される栄誉となりました。


 なお授賞式は、9月19日に開催された平成29年度日本心理学会会員集会において行われました。


優秀論文賞受賞論文一覧 | 日本心理学会ウェブサイト

第1回京都こころ会議国際シンポジウム「こころと共生」を開催しました

170901kokoroinitiative.png 2017年9月18日、京都大学百周年時計台記念館百周年記念ホールにて、第1回京都こころ会議国際シンポジウム「こころと共生」を開催しました。公益財団法人稲盛財団からのご支援を受けて2015年に発足した京都こころ会議は、これまでに「こころと歴史性」(第1回)、「こころの内と外」(第2回)をテーマに2回のシンポジウムを開催してまいりました。今回はそれを受けた初めての国際シンポジウムでしたが、国内外から300名近い参加者にご来場いただきました。


 今回のシンポジウムでは、吉川左紀子センター長の開会の言葉のあと、海外からのお二人を含めた4つの講演が行われました。中国・北京大学の心理・認知科学部を代表する教授であるShihui Han先生は、「Cognitive/Affective and Neural Obstacles of Human Symbiosis(人類の共生を妨げる認知・情動基盤と神経機構)」と題して講演されました。Han先生は、痛みに関する共感についての興味深い実験を紹介しつつ、人が内集団(ingroup)と外集団(outgroup)に対して神経レベルでどのような共感反応をするのか、またその反応は教育や経験等によってどのように変化しうるのかなどについて論じました。


 アメリカ・パシフィカ大学院大学の学長であるJoseph Cambray先生は、化学で博士号をとられた後、ユング心理学を学び分析家の資格を取得され国際分析心理学会の会長も務められたという経歴をおもちです。本シンポジウムでは文理にまたがる広い知識と視野から「Synchronistic Phenomena and Psychological Symbiosis (共時的現象と心理学的共生)」と題して講演されました。ユングの提出した「共時性」という非因果的論理が現代科学における複雑系理論から理解できることを示して、新しいこころの科学の可能性を示しました。


 続いて、相愛大学人文学部の教授であり、浄土真宗の僧侶でもあられる釈撤宗先生が「Symbiosis of Religious Beliefs(信仰の共生)」と題した講演をされました。宗教はその信仰の絶対性ゆえに他を排除してしまう性質がありますが、それらが共生していくことに対して、さまざまな方向から示唆と提言を行いました。


 4つめの講演として、広井良典教授が「Sustainable Society, Sustainable Mind(持続可能な社会、持続可能なこころ)」と題する講演を行いました。この講演の中では、地球・人類の歴史をマクロな視点で振り返りつつ、大きな問題に対するローカルなレベルからの多様な取り組みにも触れ、こころのビッグバン・精神革命に続く新たな定常化の時代における地球倫理という視点の重要性について論じました。


 これらの講演に続き、河合俊雄教授を司会に加え、講演者らによるディスカッションが行われました。ここでは4つの講演を踏まえて、これからの社会における共生の可能性、こころのつながりについて、それぞれの専門領域を超えた議論が展開されました。


 最後に、湊長博京都大学理事が閉会の言葉として、ingroup-outgroupの議論に関して、自身の専門領域である免疫学の立場からコメントし、京都こころ会議および京都大学の人文社会科学に対する大きな期待を示しました。当日の司会進行は内田由紀子准教授が務めました。


 第1回京都こころ会議国際シンポジウムの講演内容は、近く当HPでも動画配信を行う予定です。


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▽日時:2017年9月18日(月・祝) 13:00~18:00(12:30~受付開始)
▽場所:京都大学 百周年時計台記念館 百周年記念ホール 
▽プログラム
13:00~13:10 開会の言葉 吉川左紀子(京都大学こころの未来研究センター・センター長)
13:10~14:00 講演① "Cognitive/Affective and Neural Obstacles of Human Symbiosis"(人類の共生を妨げる認知・情動基盤と神経機構)Shihui Han(Professor, School of Psychological and Cognitive Sciences, Peking University)
14:00~14:50 講演② "Synchronistic Phenomena and Psychological Symbiosis"(共時的現象と心理学的共生)Joseph Cambray(Provost and Acting President, Pacifica Graduate Institute)
14:50~15:05 休憩
15:05~15:55 講演③ "Symbiosis of Religious Beliefs"(信仰の共生)釈徹宗(相愛大学人文学部・教授)
15:55~16:45 講演④ "Sustainable Society, Sustainable Mind"(持続可能な社会、持続可能なこころ)広井良典(京都大学こころの未来研究センター・教授)
16:45~17:00 休憩
17:00~17:50 総合討論 Shihui Han,Joseph Cambray,釈徹宗,広井良典,河合俊雄(京都大学こころの未来研究センター・教授)
17:50~18:00 閉会の言葉 湊長博(京都大学・理事)
司会進行 内田由紀子(京都大学こころの未来研究センター・准教授)
※講演・総合討論には日英の同時通訳が入りました
▽参加者数:285名

京都大学こころの未来研究センター創立10周年記念シンポジウム「こころの科学と未来社会」を開催しました

170730poster.png 2017年7月30日、京都大学こころの未来研究センター創立10周年記念シンポジウム「こころの科学と未来社会」を百周年時計台記念館百周年記念ホールで開催しました。2007年に創設したセンターの10周年を記念したシンポジウムは「こころの科学と未来社会」をテーマに、センターとゆかりのある研究者、学内外の関係者、一般参加の方々、合わせて325名にお越しいただきました。


 はじめに吉川左紀子センター長が挨拶を行い、センター設立からの歩みをそれぞれの節目での出来事を振り返りながら紹介。「現在は研究者の数が増え、様々な新しい試みに取り組んでいる。これからの10年、20年に向けてさらに研究力、実践力を増していくきっかけになるようなシンポジウムにしたい」と話しました。続いて、文部科学省研究振興局振興企画課の渡辺正実課長からのご挨拶があり、「こころの未来研究センターの今後の取り組みが学術研究の進化への貢献のみならず社会への貢献につながるものと祈念しています」との祝辞を頂戴しました。その後、10周年を記念して制作したセンターの紹介動画を上映。吉岡進教授の監修により、センターの研究者らのコメントや研究環境がコンパクトにまとまった動画を会場の参加者にご覧いただきました。


 貴重講演は、センターの設立当時に京都大学総長を務め、現・京都造形芸術大学学長の尾池和夫先生が「こころの未来から地球の未来へ」というテーマで講演くださいました。地球の歩みを時間軸に、広い視点からの知見とセンターの歩みとを重ねながら、社会の未来、地球の未来を展望する内容でした。


 続いて、吉川センター長の司会によりセンターの研究者らが登壇し、それぞれがコンパクトにまとめた研究プロジェクトの概要を紹介しました。休憩時間には、会場の両サイドのコーナーに掲示したプロジェクトポスターを来場者にご覧いただきました。


 午後からはセンターの准教授3名による講演とディスカッションが行われました。はじめに、阿部修士准教授が「脳の研究からこころを探る」と題して、認知神経科学の分野から人間の心理を読み解く研究の知見を紹介。続いて、内田由紀子准教授が「こころの働きの文化・社会的基盤」と題して社会・文化心理学者の立場から取り組んできた幸福感の研究の成果と、現在行っている地域および組織コミュニティ文化研究の取り組みを紹介しました。最後に、熊谷誠慈准教授(上廣倫理財団寄付研究部門)が「古文書からこころを読み解く」と題し、 仏教学・チベット学の研究者の視点から古典文献学の利点と難点を検証したうえで、 ブータン王国の幸福政策を例に挙げながら、現代社会における伝統的精神性の応用可能性と未来社会のこころのあり方を展望しました。その後、吉川センター長の進行により河合俊雄教授、広井良典教授、小村豊教授をディスカッサントに迎え、三つの講演に対するコメントから議論を深めました。


 閉会にあたって、山極寿一京都大学総長より締めくくりの言葉として、「こころをキーワードに人間の未来を構想できるかが、社会の緊急課題となっている。こころの未来研究センターは、こころの先端研究の先頭に立って走ってほしい。おおいに期待している」との激励があり、シンポジウムは終了しました。


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▽日時:2017年7月30日(日)13時~17時10分(開場12時30分~)
▽会場:京都大学百周年時計台記念館百周年記念ホール
▽対象:研究者、学生、一般
▽参加費:無料
▽プログラム
13:00〜13:10 開会挨拶 吉川左紀子(センター長)
13:10〜13:20 来賓挨拶 渡辺正実(文部科学省研究振興局振興企画課 課長)
13:20〜13:30 センターの活動の映像紹介 監修 吉岡洋(特定教授)
13:30〜14:10 基調講演「こころの未来から地球の未来へ」尾池和夫(京都造形芸術大学 学長)
14:10-14:40 センターの研究プロジェクト概要紹介
14:40-15:00 休憩
15:00-17:00 講演とディスカッション
講演①「脳の研究からこころを探る」阿部修士(特定准教授)
講演②「こころの働きの文化・社会的基盤」内田由紀子(准教授)
講演③「古文書からこころを読み解く」熊谷誠慈(特定准教授 上廣倫理財団寄付研究部門)
ディスカッサント 河合俊雄(教授)、広井良典(教授)、小村豊(教授)
17:00〜17:10  閉会挨拶:山極寿一(京都大学 総長)
▽参加者数:325名

上田助教らの研究が日本マインドフルネス学会で最優秀賞を受賞しました

 上田祥行助教が教育学研究科の藤野正寛日本学術振興会特別研究員(筆頭発表者)と進めている共同研究が、2016年11月5日・6日に開催された日本マインドフルネス学会第3回大会(早稲田大学)で「最優秀研究賞」ならびに「最優秀ポスター発表賞」を受賞しました。


 マインドフルネス瞑想における集中瞑想(FA)と洞察瞑想(OM)は、どちらも「内省を低下させる」、 「その背後のデフォルトモードネットワーク(DMN)の活動を低下させる」ことで、結果的に今この瞬間の幸福感を高める効果があるとされています。研究ではふたつの瞑想について、①それらを実現している神経基盤も共通なのか?②それらの効果は瞑想後にも持続するのか?という問題に注目し、fMRIを用いて瞑想時と瞑想後の神経基盤の機能的結合性の変化を調査しました。その結果、FAとOMでは、DMNに関わる神経基盤が異なることが明らかとなったほか、OMの瞑想後には、機能的結合性の変化が継続していることが分かりました。


 本研究は、こころの未来研究センターの連携MRI研究施設のfMRI 3T スキャナーを用いて実施されました。


◇発表タイトル
集中瞑想と洞察瞑想の神経基盤:線条体とデフォルトモードネットワーク間の機能的結合性の違い


◇発表者
藤野正寛1・上田祥行2(非会員)・水原啓暁3(非会員)・齋木潤4(非会員)・野村理朗1(非会員)
(1 京都大学大学院教育学研究科・2 京都大学こころの未来研究センター・ 3 京都大学大学院情報学研究科・4 京都大学大学院人間・環境学研究科)


◇受賞ポスター
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※クリックするとポスター画像(PDF)が開きます

広井教授の『ポスト資本主義』の韓国語版が刊行されました

1703hiroi_book_korea.png 広井良典教授の著書『ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来』(岩波書店、2015年)の韓国語版が刊行されました。訳者はパクジェイ氏で、AKコミュニケーションズ(ソウル)より2017年1月20日の刊行となりました。韓国語版ウェブサイトは こちら


 『ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来』は、2015年に岩波新書として出版されました。資本主義の歩みを人類史的なスケールから俯瞰し、国家、コミュニティ、社会の変遷と現状の課題について論じ、「定常型社会」をキーワードに、持続可能な社会を実現させるための具体的な提言を盛り込んだ書です。


 なお同書は中国語版も刊行予定です。


 『ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来』(広井良典)

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