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上廣倫理財団寄付研究部門 2017年度研究報告会「幸せに生きる知恵」を開催しました

 上廣倫理財団寄付研究部門 2017年度研究報告会「幸せに生きる知恵」を2018年1月21日、稲盛財団記念館3階大会議室にて開催しました。


 2012年春に創設した本研究部門では、公共政策、医療福祉、臨床心理学、伝統知、哲学など多様な専門領域の研究者が多種多様なアプローチで「こころと倫理」に関わる学術研究を行っています。今年度の研究報告会では、「幸せに生きる知恵」をテーマに、若手研究者による研究報告、「幸せはローカルから:GNHと日本」を主題にした研究者と実践家による討議を行いました。


 はじめに、吉川左紀子センター長による主催者挨拶、髙口吾郎上廣倫理財団常務理事からの来賓挨拶があり、広井良典教授が本研究部門の取り組みを紹介しました。研究報告では、まず医療・保健・福祉領域より清家理助教が「超高齢社会における現代日本の医療・保健・福祉にかかる倫理-今まで・現在・今後-」と題し、認知症の家族介護者に対する自律支援をめざした介入研究の成果と今後の展望について話しました。続いて、臨床心理学領域より畑中千紘助教が「ポスト成長時代のこころの問題と変容」と題し、2017年度の研究成果から現代大学生のアグレッション研究を取り上げ報告しました。三つ目の研究報告は、伝統知・倫理思想領域より熊谷誠慈准教授が「アジアと日本の精神性、幸福感、倫理観」と題し、本年度のテーマであった仏教の存在論の概要や国際的な活動の成果を紹介しました。


 休憩をはさんで後半は、「幸せはローカルから:GNHと日本」をテーマとしたパネルディスカッションが行われました。パネリストは広井教授、荒川区自治総合研究所の猪狩廣美所長、関西大学の草郷孝好教授の3人がつとめ、指定討論者としてレジリエント・シティ京都市統括監(CRO)の藤田裕之氏に登壇いただき、拡大・成長のグローバリズムの時代からローカルへと視点を転じ、幸福な未来の可能性をローカルに見出すための提言と議論が活発に繰り広げられました。


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[開催案内]
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[DATA]
▽日時:2018年1月21日(日) 14:00-17:00 (13:30~受付開始)
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽参加費:無料
▽定員:100名(申込みによる先着順)。定員になり次第、締め切らせていただきます。
▽プログラム
14:00-14:05 センター長挨拶 吉川左紀子(京都大学こころの未来研究センター 教授・センター長)
14:05-14:10 来賓ご挨拶
14:10-14:20 上廣倫理財団寄付研究部門の取組紹介 広井良典(京都大学こころの未来研究センター 教授/上廣倫理財団寄付研究部門兼任)
14:20-14:40 研究報告① 医療・保健・福祉領域 清家 理(上廣倫理財団寄付研究部門 特定助教)
14:40-15:00 研究報告② 臨床心理学領域 畑中千紘(上廣倫理財団寄付研究部門 特定助教)
15:00-15:20 研究報告③ 伝統知・倫理思想領域 熊谷誠慈(上廣倫理財団寄付研究部門長 特定准教授)
15:20-15:30 休憩
15:30-17:00 パネルディスカッション「幸せはローカルから:GNHと日本」パネリスト 広井良典、猪狩廣美(公益財団法人荒川区自治総合研究所・所長)、草郷孝好(関西大学社会学部・教授) 、指定討論者 藤田裕之(レジリエント・シティ京都市統括監(CRO))
17:00 閉会
▽参加者数: 名

第1回京都こころ会議国際シンポジウム「こころと共生」を開催しました

170901kokoroinitiative.png 2017年9月18日、京都大学百周年時計台記念館百周年記念ホールにて、第1回京都こころ会議国際シンポジウム「こころと共生」を開催しました。公益財団法人稲盛財団からのご支援を受けて2015年に発足した京都こころ会議は、これまでに「こころと歴史性」(第1回)、「こころの内と外」(第2回)をテーマに2回のシンポジウムを開催してまいりました。今回はそれを受けた初めての国際シンポジウムでしたが、国内外から300名近い参加者にご来場いただきました。


 今回のシンポジウムでは、吉川左紀子センター長の開会の言葉のあと、海外からのお二人を含めた4つの講演が行われました。中国・北京大学の心理・認知科学部を代表する教授であるShihui Han先生は、「Cognitive/Affective and Neural Obstacles of Human Symbiosis(人類の共生を妨げる認知・情動基盤と神経機構)」と題して講演されました。Han先生は、痛みに関する共感についての興味深い実験を紹介しつつ、人が内集団(ingroup)と外集団(outgroup)に対して神経レベルでどのような共感反応をするのか、またその反応は教育や経験等によってどのように変化しうるのかなどについて論じました。


 アメリカ・パシフィカ大学院大学の学長であるJoseph Cambray先生は、化学で博士号をとられた後、ユング心理学を学び分析家の資格を取得され国際分析心理学会の会長も務められたという経歴をおもちです。本シンポジウムでは文理にまたがる広い知識と視野から「Synchronistic Phenomena and Psychological Symbiosis (共時的現象と心理学的共生)」と題して講演されました。ユングの提出した「共時性」という非因果的論理が現代科学における複雑系理論から理解できることを示して、新しいこころの科学の可能性を示しました。


 続いて、相愛大学人文学部の教授であり、浄土真宗の僧侶でもあられる釈撤宗先生が「Symbiosis of Religious Beliefs(信仰の共生)」と題した講演をされました。宗教はその信仰の絶対性ゆえに他を排除してしまう性質がありますが、それらが共生していくことに対して、さまざまな方向から示唆と提言を行いました。


 4つめの講演として、広井良典教授が「Sustainable Society, Sustainable Mind(持続可能な社会、持続可能なこころ)」と題する講演を行いました。この講演の中では、地球・人類の歴史をマクロな視点で振り返りつつ、大きな問題に対するローカルなレベルからの多様な取り組みにも触れ、こころのビッグバン・精神革命に続く新たな定常化の時代における地球倫理という視点の重要性について論じました。


 これらの講演に続き、河合俊雄教授を司会に加え、講演者らによるディスカッションが行われました。ここでは4つの講演を踏まえて、これからの社会における共生の可能性、こころのつながりについて、それぞれの専門領域を超えた議論が展開されました。


 最後に、湊長博京都大学理事が閉会の言葉として、ingroup-outgroupの議論に関して、自身の専門領域である免疫学の立場からコメントし、京都こころ会議および京都大学の人文社会科学に対する大きな期待を示しました。当日の司会進行は内田由紀子准教授が務めました。


 第1回京都こころ会議国際シンポジウムの講演内容は、近く当HPでも動画配信を行う予定です。


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[DATA]
▽日時:2017年9月18日(月・祝) 13:00~18:00(12:30~受付開始)
▽場所:京都大学 百周年時計台記念館 百周年記念ホール 
▽プログラム
13:00~13:10 開会の言葉 吉川左紀子(京都大学こころの未来研究センター・センター長)
13:10~14:00 講演① "Cognitive/Affective and Neural Obstacles of Human Symbiosis"(人類の共生を妨げる認知・情動基盤と神経機構)Shihui Han(Professor, School of Psychological and Cognitive Sciences, Peking University)
14:00~14:50 講演② "Synchronistic Phenomena and Psychological Symbiosis"(共時的現象と心理学的共生)Joseph Cambray(Provost and Acting President, Pacifica Graduate Institute)
14:50~15:05 休憩
15:05~15:55 講演③ "Symbiosis of Religious Beliefs"(信仰の共生)釈徹宗(相愛大学人文学部・教授)
15:55~16:45 講演④ "Sustainable Society, Sustainable Mind"(持続可能な社会、持続可能なこころ)広井良典(京都大学こころの未来研究センター・教授)
16:45~17:00 休憩
17:00~17:50 総合討論 Shihui Han,Joseph Cambray,釈徹宗,広井良典,河合俊雄(京都大学こころの未来研究センター・教授)
17:50~18:00 閉会の言葉 湊長博(京都大学・理事)
司会進行 内田由紀子(京都大学こころの未来研究センター・准教授)
※講演・総合討論には日英の同時通訳が入りました
▽参加者数:285名

京都大学こころの未来研究センター創立10周年記念シンポジウム「こころの科学と未来社会」を開催しました

170730poster.png 2017年7月30日、京都大学こころの未来研究センター創立10周年記念シンポジウム「こころの科学と未来社会」を百周年時計台記念館百周年記念ホールで開催しました。2007年に創設したセンターの10周年を記念したシンポジウムは「こころの科学と未来社会」をテーマに、センターとゆかりのある研究者、学内外の関係者、一般参加の方々、合わせて325名にお越しいただきました。


 はじめに吉川左紀子センター長が挨拶を行い、センター設立からの歩みをそれぞれの節目での出来事を振り返りながら紹介。「現在は研究者の数が増え、様々な新しい試みに取り組んでいる。これからの10年、20年に向けてさらに研究力、実践力を増していくきっかけになるようなシンポジウムにしたい」と話しました。続いて、文部科学省研究振興局振興企画課の渡辺正実課長からのご挨拶があり、「こころの未来研究センターの今後の取り組みが学術研究の進化への貢献のみならず社会への貢献につながるものと祈念しています」との祝辞を頂戴しました。その後、10周年を記念して制作したセンターの紹介動画を上映。吉岡進教授の監修により、センターの研究者らのコメントや研究環境がコンパクトにまとまった動画を会場の参加者にご覧いただきました。


 貴重講演は、センターの設立当時に京都大学総長を務め、現・京都造形芸術大学学長の尾池和夫先生が「こころの未来から地球の未来へ」というテーマで講演くださいました。地球の歩みを時間軸に、広い視点からの知見とセンターの歩みとを重ねながら、社会の未来、地球の未来を展望する内容でした。


 続いて、吉川センター長の司会によりセンターの研究者らが登壇し、それぞれがコンパクトにまとめた研究プロジェクトの概要を紹介しました。休憩時間には、会場の両サイドのコーナーに掲示したプロジェクトポスターを来場者にご覧いただきました。


 午後からはセンターの准教授3名による講演とディスカッションが行われました。はじめに、阿部修士准教授が「脳の研究からこころを探る」と題して、認知神経科学の分野から人間の心理を読み解く研究の知見を紹介。続いて、内田由紀子准教授が「こころの働きの文化・社会的基盤」と題して社会・文化心理学者の立場から取り組んできた幸福感の研究の成果と、現在行っている地域および組織コミュニティ文化研究の取り組みを紹介しました。最後に、熊谷誠慈准教授(上廣倫理財団寄付研究部門)が「古文書からこころを読み解く」と題し、 仏教学・チベット学の研究者の視点から古典文献学の利点と難点を検証したうえで、 ブータン王国の幸福政策を例に挙げながら、現代社会における伝統的精神性の応用可能性と未来社会のこころのあり方を展望しました。その後、吉川センター長の進行により河合俊雄教授、広井良典教授、小村豊教授をディスカッサントに迎え、三つの講演に対するコメントから議論を深めました。


 閉会にあたって、山極寿一京都大学総長より締めくくりの言葉として、「こころをキーワードに人間の未来を構想できるかが、社会の緊急課題となっている。こころの未来研究センターは、こころの先端研究の先頭に立って走ってほしい。おおいに期待している」との激励があり、シンポジウムは終了しました。


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[DATA]
▽日時:2017年7月30日(日)13時~17時10分(開場12時30分~)
▽会場:京都大学百周年時計台記念館百周年記念ホール
▽対象:研究者、学生、一般
▽参加費:無料
▽プログラム
13:00〜13:10 開会挨拶 吉川左紀子(センター長)
13:10〜13:20 来賓挨拶 渡辺正実(文部科学省研究振興局振興企画課 課長)
13:20〜13:30 センターの活動の映像紹介 監修 吉岡洋(特定教授)
13:30〜14:10 基調講演「こころの未来から地球の未来へ」尾池和夫(京都造形芸術大学 学長)
14:10-14:40 センターの研究プロジェクト概要紹介
14:40-15:00 休憩
15:00-17:00 講演とディスカッション
講演①「脳の研究からこころを探る」阿部修士(特定准教授)
講演②「こころの働きの文化・社会的基盤」内田由紀子(准教授)
講演③「古文書からこころを読み解く」熊谷誠慈(特定准教授 上廣倫理財団寄付研究部門)
ディスカッサント 河合俊雄(教授)、広井良典(教授)、小村豊(教授)
17:00〜17:10  閉会挨拶:山極寿一(京都大学 総長)
▽参加者数:325名

シンポジウム「認知症ケアを問い直す:人間らしくあるということ -ユマニチュード-」を開催しました

170305poster.png 2017年3月5日、「孤立防止のための自助・互助強化プログラム開発」プロジェクト 2016年度シンポジウム「認知症ケアを問い直す:人間らしくあるということ -ユマニチュード-」を稲盛財団記念館大会議室で開催しました。


 こころの未来研究センターでは、2014年10月より「孤立防止のための自助・互助強化プログラム開発」プロジェクトとして、「くらしの学び庵」を実施し、大学、行政、医療の現場、社会をつなぐ取り組みを行っています。今回は、プロジェクトの拡大版として、フランスで考案されたケア技法である「ユマニチュード」をテーマに、考案者であるイヴ・ジネスト先生(ジネスト・マレスコッティ研究所長)をお招きして講演会を開催しました。


 基調講演のひとつめは、「日本のケアを切り拓く-ユマニチュードの価値と意義-」と題し、国立病院機構東京医療センター総合内科医長で、医療経営情報・高齢者ケア研究室長の本田美和子先生に講演いただきました。本田先生は、日本にユマニチュードの理念と実践をもたらし、国内での普及に尽力しています。講演では、この6年間の取り組みの実際と背景について数々の実例と共に、ユマニチュードが医療現場でどのように目に見える効果を上げているかを解説。また今後、ユマニチュードが病院施設だけでなく社会の様々な場所でいかに活用できるか、この場にいる先生方と考えていきたい、と話しました。


 続いて、ユマニチュードの考案者でジネスト・マレスコッティ研究所創設者のジネスト先生が登壇されました。人間の尊厳を守るための根源的な哲学と、言語・非言語での多様なコミュニケーション技法に基づいた実践的なケア技術で構成されたメソッドであるユマニチュードを普及するため、ジネスト先生はフランス国内のみならず世界各地の医療現場に足を運んでおられます。今回の講演では、ユマニチュードの理念の根底にある自由、人権、愛を守る大切さについて、自身が医療現場に関わり始めた当初、患者への非人道的な扱いを目の当たりにした経験が、現在のユマニチュード発案のきっかけとなったというエピソードの紹介に始まり、患者との関わりを記録した様々な実例を数多く示しながら、ケアされる人、ケアする人双方が人間性を取り戻す方法について丁寧に解説されました。壇上に参加者を呼び、時に笑いを誘いながら実践方法を紹介する場面もあり、会場は終始熱気に包まれていました。最後に、ジネスト先生は、ユマニチュードの理念と技法が高齢者や様々な患者の尊厳を取り戻し、医療現場、ひいては社会そのものを変えうると強調し、講演を締めくくりました(逐次通訳:高野勢子氏)。


 休憩をはさんで、3名の研究者から学術的な視点からみたユマニチュードについての発表が行われました。ひとつめは、「医療福祉学から見たユマニチュード」と題し、清家理助教が臨床現場と研究をつなぐ立場から、ユマニチュードが社会に浸透し介護現場に根付くための現状と課題について、政策、現場、研修教育、家族介護者の現場の4つの観点から報告・考察を行いました。続いて、吉川左紀子センター長が「心理学から見たユマニチュード」と題し、偶然の出逢いから自身がユマニチュードの研修を受けるまでに至った経緯を紹介すると共に、認知心理学の研究知見に基づいたユマニチュードの可能性について心理実験の成果を示しつつ紹介し、「ケアの実践を通して、ケアされる人だけでなくケアする人の心も育てるユマニチュードのケア技法について、心理学、認知科学、脳科学の観点から実証する研究に取り組みたい」と展望しました。最後に、情報学研究科知能情報専攻准教授の中澤篤志先生が「情報科学から見たユマニチュード」と題し、画像認識を専門とする研究のなかで、ユマニチュードの熟達者と非熟達者のアイコンタクトの数や角度等の違いを測定した最新の研究成果を紹介すると共に、今後、ウエアラブルコンピューティングによるコミュニケーションの定量化を進め、個々のトレーニングの向上やユマニチュードの効果検証に活かす方法を探っていきたい、と話しました。


 最後に、国立長寿医療研究センターもの忘れセンター副看護師長の大久保直樹先生と、榊原白鳳病院神経内科医師の中塚晶博先生にも登壇いただき、吉川センター長の司会により質疑応答とディスカッションが行われました。日々、高齢者の看護と医療に携わる立場から、ユマニチュード以外の認知症介護の手法との差異や、日本の介護の現状にどのようにユマニチュードの手法をなじませるか日本の介護現場の実情に根差した問いかけがあり、熱心に質疑が行われました。


[シンポジウムの様子]
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[ジネスト先生を囲んで集合写真] ※クリックすると拡大します
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[DATA]
「孤立防止のための自助・互助強化プログラム開発」プロジェクト 2016年度シンポジウム
認知症ケアを問い直す:人間らしくあるということ -ユマニチュード-


▽ 日時:2017年3月5日(日)13:00-17:30(開場 12:30~)
▽ 会場:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽ プログラム:
・開会あいさつ:吉川左紀子(こころの未来研究センター長・教授)
・基調講演1「日本のケアを切り拓く-ユマニチュードの価値と意義-」本田美和子(国立病院機構東京医療センター総合内科医長/医療経営情報・高齢者ケア研究室長)
・基調講演2「ユマニチュードのもつ可能性と未来」イヴ・ジネスト (ジネスト・マレスコッティ研究所長)
※逐次通訳(仏・日)フランス語通訳:高野勢子
・休憩
・「医療福祉学から見たユマニチュード」清家理(こころの未来研究センター上廣こころ学研究部門特定助教)
・「心理学から見たユマニチュード」吉川左紀子(こころの未来研究センター長・教授)
・「情報科学から見たユマニチュード」中澤篤志(京都大学情報学研究科知能情報専攻准教授)
・休憩
・「認知症ケアの未来を切り拓く-人間らしくあることを支えるために-」ディスカッションおよび質疑応答
【登壇者】イヴ・ジネスト、本田美和子、中塚晶博(京都大学東南アジア地域研究研究所人間生態相関研究部門(フィールド医学)連携准教授、榊原白鳳病院神経内科医師)、大久保直樹(国立長寿医療研究センターもの忘れセンター副看護師長)


主催:京都大学こころの未来研究センター
後援:京都市、京都市教育委員会、京都府、京都地域包括ケア推進機構、文部科学省 地(知)の拠点整備事業、公益財団法人ひと・健康・未来研究財団 

第2回京都こころ会議シンポジウム「こころの内と外」を開催しました

 2016年10月10日、京都大学芝蘭会館・稲盛ホールにて第2回京都こころ会議シンポジウムを開催しました。今回の第2回シンポジウムでは、昨年度の第1回シンポジウム「こころと歴史性」で議論された閉じることと開くことの逆説性から、「こころの内と外」がテーマとなりました。当日は200名を超える参加者にご来場いただきました。


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 はじめに、吉川左紀子センター長が、主催者を代表して開会の言葉を述べました。京都こころ会議の主旨とこころの未来研究センターの10年来の取り組みを紹介し、人のこころのあり方について、科学的観点だけでなく、社会や自然、文化などさまざまな角度から議論し、認識を深めていきたいと今後の展望を述べました。
 次に、当センターの河合俊雄教授が「こころの内と外:こころ研究会から」と題して、本年度に開催された、以下の4つの京都こころ会議研究会(通称:こころ研究会)の報告を行いました。

       第1回:池上高志(複雑系・人工生命)「人工の心と現実の脳:自己組織化、アルゴリズム、マッシブデータフロー」
       第2回:Harald Atmanspacher(理論物理学)「二面一元論(dual-aspect monism)におけるこころのあり方」
       第3回:中沢新一(人類学)「理事無礙法界について」
       第4回:田中康裕(臨床心理学)「日本的風景と主体:古くて新しい意識のあり方」

 このように4回のこころ研究会は幅広い分野にまたがるものでしたが、「こころの内と外」という観点からすれば、「乱雑さ(messiness)」「全体性の崩壊と回復」「偶然」「知覚と意識の隙間」「主体と客体の融合」「奥ゆきと広がりの同一性」などのキーワードで示されるように、私たちがこころをリアルなものと感じる契機とは、真逆のもののなかに開かれる隙間や裂け目、中間にこそあるのではないかという議論が共通点であったように思われます。
 続いて、赤坂憲雄学習院大学文学部教授が「遊動から定住へ――そのとき、こころの変容は起こったか」と題して講演を行いました。民俗学を専門とする赤坂先生は、私たちが無意識に抱く「逃げる」ことに対する忌避の背景に、1万年前に生じた遊動から定住へという生存戦略上の大変革によってもたらされた「逃げられない社会」があることを示し、離合集散を認める新たな「逃げられる社会」をデザインしていくことの必要性を論じました。
 休憩を挟んで、赤坂教授、河合教授に池上高志東京大学大学院総合文化研究科教授と山極壽一京都大学総長を加えた4名による総合討論が行われ、逃げることと自由、有史を超えた時間的展望からこころを捉えていくことなどについて、大変白熱した議論が展開されました。
 最後に、湊長博京都大学理事が閉会の言葉として、京都こころ会議でのこころについての議論が、人の行動様式や社会のあり方に影響を与えられるような発信力をもっていくことを大学として期待すると述べ、第2回シンポジウムは盛会のうちに終了いたしました。当日の司会進行は内田由紀子准教授が務めました。
 今回行われた第2回京都こころ会議シンポジウムの講演内容は、近く当HPでも動画配信を行う予定です。

<報告:梅村高太郎研究員>


[シンポジウム写真]
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[開催ポスター]
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[DATA]
▽ 日時:2016年10月10日(月・祝)13:30~17:20(13:00~受付開始)
▽ 会場:京都大学芝蘭会館稲盛ホール(京都市左京区吉田近衛町)
▽ プログラム:
 13:30~13:40 開会の言葉 吉川左紀子(京都大学こころの未来研究センター・センター長)
 13:40~14:40 研究会報告 『こころの内と外:こころ研究会から』
          河合俊雄(京都大学こころの未来研究センター・教授)
 14:40~15:50 講演 『遊動から定住へ――そのとき、こころの変容は起こったか』
          赤坂憲雄(学習院大学文学部・教授)
 15:50~16:10 休憩
 16:10~17:10 総合討論 赤坂憲雄、池上高志(東京大学大学院総合文化研究科・教授)、山極壽一(京都大学・総長)、河合俊雄
 17:10~17:20 閉会の言葉 湊長博(京都大学・理事)
主催:京都大学こころの未来研究センター
後援:公益財団法人 稲盛財団

シンポジウム「超高齢社会を心地よく生きるために必要なこと」を開催しました

160327manabian_poster.png こころの未来研究センターでは、2014年度より上京区の京町家・風伝館で「孤立防止のための自助・互助強化プログラム開発プロジェクト:くらしの学び庵」を開講しており、すでに4期を終了しました。この「くらしの学び庵」の拡大版として、2016年3月27日、シンポジウム「超高齢社会を心地よく生きるために必要なこと」を開催しました。


 はじめに吉川左紀子センター長による開会の挨拶があり、清家理助教がくらしの学び庵のこれまでの取り組みを紹介しました。続いて、くらしの学び庵特別講義1として、荒井秀典国立長寿医療研究センター副院長が「いきいき毎日を過ごすために必要な健康づくり」と題して講演し、休憩をはさんで特別講義2として櫻井孝国立長寿医療研究センター もの忘れセンター長が、「認知症と診断されたら -医療者と本人、家族が共に考えたいこと-」と題して講演をおこないました。その後、特別講義3では三宅聖子東京都渋谷区障害者福祉センター施設長が、参加者と一緒に歌や手の動きなどを用いたレクチャーをおこない、会場に歌声と笑い声が響き渡りました。


 講義の後、京都市保健福祉局長寿社会部の西川保子長寿福祉課担当課長、京都府健康福祉部の山本勇人高齢者支援課担当課長が、行政としての取り組みを紹介しました。その後、吉川センター長の司会進行により質疑応答の時間が持たれ、高齢化社会を心地よく生きるために今日からできることについて、登壇者がアドバイスや情報提供をおこないました。


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シンポジウム「超高齢社会を心地よく生きるために必要なこと」
▽日時:2016年3月27日(日)13:00-17:15(開場 12:30~)
▽会場:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽プログラム:
13:00‐13:10 開会あいさつ:吉川左紀子(こころの未来研究センター教授・センター長)
13:10-13:40 くらしの学び庵総括「こころ・からだ・くらしの学びの足跡」清家理(こころの未来研究センター上廣こころ学研究部門 特定助教)
13:40-14:20 くらしの学び庵特別講義1:「いきいき毎日を過ごすために必要な健康づくり」荒井秀典(国立長寿医療研究センター 副院長)  
14:20-14:25 休憩
14:25-15:05 くらしの学び庵特別講義2:「認知症と診断されたら -医療者と本人、家族が共に考えたいこと-」櫻井孝(国立長寿医療研究センター もの忘れセンター長)
15:05-15:10 休憩
15:10-15:50 くらしの学び庵特別講義3:「よりよく生きるための笑・唱・掌」三宅聖子(東京都渋谷区障害者福祉センター 施設長)
15:50-16:05 休憩
16:05-16:15 京都市よりみなさまへ:西川保子(京都市保健福祉局長寿社会部 長寿福祉課 担当課長)
16:15-16:25 京都府よりみなさまへ:山本勇人(京都府健康福祉部 高齢者支援課 担当課長)
16:25-17:05 くらしの学び庵Q&A編「心地よく生きるために今日からできること」
司会:吉川左紀子、回答者:荒井秀典、櫻井孝、三宅聖子、西川保子、山本勇人、清家理
17:05-17:15 閉会あいさつ:松林公蔵(東南アジア研究所 教授)
▽参加人数:122名


主催:京都大学こころの未来研究センター
後援:京都市、京都市教育委員会、京都地域包括ケア推進機構、京都府、
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター、文部科学省 地(知)の拠点整備事業(50音順)

船橋新太郎教授 退職記念講演会を開催しました

 2016年3月5日、京都大学稲盛財団記念館大会議室にて「船橋新太郎教授 退職記念講演会」を開催しました。


 2007年4月にこころの未来研究センターが創設された当初からのメンバーとして、船橋新太郎教授は、神経生理学、神経科学を専門に、ヒトのこころの働きである知性や創造性をはじめ、思考、判断、意思決定などに関わる大脳皮質前頭連合野の働きについて、長年研究してきました。


 講演会では、はじめの挨拶として吉川左紀子センター長が、船橋教授と共にこころの未来研究センターを設立した当時のエピソードをまじえながら、共に活動をおこなった日々を振り返り、はなむけの言葉を贈りました。続いて、船橋教授の恩師である久保田競京都大学名誉教授が来賓挨拶に立ち、教授との長年の思い出や研究生活について話されました。


 その後、司会進行を務めた阿部修士准教授が船橋教授の経歴を紹介し、最終講義がおこなわれました。「前頭連合野との35年」と題し、船橋教授は、35年間に渡る研究人生を振り返り、自身の取り組んできた研究とその成果、今後の展望について話しました。また、講演会終了後には、京都大学構内にて定年退職祝賀会が開催され、船橋教授にゆかりのある出席者や研究室のメンバーらによって、教授を囲んでの祝いと歓送の時間がもたれました。


 船橋教授の研究実績は、下記のリンク先ページで閲覧可能です。また、これまでの研究の歩みが詳細に紹介されたインタビュー記事が、京都大学学術研究支援室のウェブサイトで公開されています。合わせてお読みください。


船橋新太郎|こころの未来研究センター
船橋庵・船橋研究室ウェブサイト
前頭連合野の機能解明〜船橋研究室の船出秘話 | ドキュメンタリー


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[DATA]
「船橋新太郎教授 退職記念講演会」
▽日時:2016年3月5日(土) 16:00~17:30 (開場15:30~)
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽参加者数:83名
▽プログラム:
センター長挨拶:吉川左紀子(こころの未来研究センター・教授/センター長)
来賓挨拶:久保田競(京都大学名誉教授)
講演者紹介
講義「前頭連合野との35年」:船橋新太郎(こころの未来研究センター・教授)
こころの未来研究センターからの花束・記念品贈呈:吉川センター長、畑中千紘(こころの未来研究センター上廣こころ学研究部門・特定助教)
人間・環境学研究科教授会からの花束贈呈:カール・ベッカー(こころの未来研究センター・教授)
司会進行:阿部修士(こころの未来研究センター上廣こころ学研究部門・特定准教授)

鎌田東二教授 退職記念講演会・シンポジウムを開催しました

1603kamata_kinen.png 2016年2月21日、京都大学芝蘭会館稲盛ホールにて「鎌田東二教授 退職記念講演会・シンポジウム」を開催しました。


 こころの未来研究センターが設立された2007年4月に教授として着任した鎌田教授は、宗教哲学、民俗学、日本思想史、比較文明学を専門に研究活動をおこなってきました。


 200名の参加者を迎えた退職記念講演会の第一部は、はじめの挨拶として吉川左紀子センター長が、こころの未来研究センターと鎌田教授の歩みを振り返りました。続いて、司会の熊谷誠慈准教授による鎌田教授の紹介があり、「日本文化における身心変容のワザ」という演題にて鎌田教授が1時間の講演をおこないました。鎌田教授は、石笛、横笛、法螺貝に続いてギターを手にオリジナルソングを演奏し、神道ソングライターとしてのパフォーマンスを披露しました。


 第二部は、シンポジウム「日本文化とこころのワザ学」として、3名のシンポジストが講演をおこないました。上智大学グリーフケア研究所の島薗進所長は、「道の思想と日本宗教史」という演題にて、日本における技芸等を通した道の追求と宗教あるいは宗教的な伝統との関わりについて考察しました。次に、河合俊雄教授は「心理療法とこころのワザ学」という演題にて、心理療法における「ワザ」の独自性について紹介し、日本文化の中で創り上げられたワザと中世における錬金術を重視したユングの思想を比較することで考察を深めました。続いて、奥井遼パリ第五大学研究員(日本学術振興会海外特別研究員)は、「身心変容とアート教育ーフランスサーカス学校の現場から」という演題にて、現在フランスでフィールドワークを重ねているフランス国立サーカス学校におけるワザの継承を通して、文化の継承と発展、芸術と教育の関係について論じました。その後、休憩をはさんで鎌田教授と3名のシンポジストに加え、コメンテーターに広井良典千葉大学教授を迎えて、総合討論がおこなわれました。


 閉会後は、同じ芝蘭会館の山内ホールにて懇親会がおこなわれ、岡野弘彦國學院大學名誉教授、長尾真元京都大学総長、山極壽京都大学総長、陶芸家の近藤高弘氏らがはなむけの言葉を贈り、鎌田教授を囲んで和やかな交流のときを持ちました。


 鎌田教授の業績一覧、シンポジウム当日の資料は、下記より閲覧・ダウンロードが可能です。


鎌田先生退職講演・シンポジウム資料集.pdf


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「鎌田東二教授 退職記念講演会・シンポジウム」
▽日時:2016年2月21日(日) 13:00~17:00(12:30~受付開始)
▽場所:京都大学芝蘭会館稲盛ホール
▽参加者数:200名
▽プログラム:記念講演会+シンポジウム
・第一部(13:00~14:20)鎌田東二教授退職記念講演
13:00~13:05 センター長挨拶:吉川左紀子(こころの未来研究センター・教授/センター長)
13:05~13:10 講演者紹介
13:10~14:10 講演「日本文化における身心変容のワザ」鎌田東二(こころの未来研究センター・教授)
14:10~14:20 パフォーマンス(石笛・横笛・法螺貝他)
・休憩(14:20~14:30)
・第二部(14:30~17:00)シンポジウム「日本文化とこころのワザ学」
14:30~14:35 イントロダクション
14:35~15:00「道の思想と日本宗教史」島薗進(上智大学グリーフケア研究所・所長)
15:00~15:25「心理療法とこころのワザ学」河合俊雄(こころの未来研究センター・教授)
15:25~15:50「身心変容とアート教育ーフランス国立サーカス学校の現場から」奥井遼(日本学術振興会・海外特別研究員/パリ大学)
15:50~16:00 休憩
16:00~16:50 総合討論
ディスカッサント:鎌田東二、島薗進、河合俊雄、奥井遼
コメンテーター:広井良典(千葉大学法政経学部・教授)
16:50~17:00 閉会
総合司会:熊谷誠慈(こころの未来研究センター上廣こころ学研究部門・特定准教授)

第6回ブータン文化講座 「輪廻のコスモロジーとブータンの新しい世代」を開催しました

 2015年10月20日、こころの未来研究センターブータン学研究室の主催による第6回ブータン文化講座 「輪廻のコスモロジーとブータンの新しい世代」が、稲盛財団記念館3階大会議室で開催されました。

 ブータン学研究室では、アウトリーチ活動の一環として「ブータン文化講座」を定期開催しています。今回は、教育学研究科の西平直教授をお招きし、「輪廻のコスモロジーとブータンの新しい世代」をテーマにご講演いただきました。司会進行は、ブータン学研究室の熊谷誠慈准教授が務めました。


○参加者アンケートより


・教育、現代の若者という側面でブータンについて知ることができた。(学部生)
・ブータンの人たちの根源としての輪廻の話が面白かった。(社会人)
・ブータンの方々の来世を意識する生活がとても印象的だった。(大学院生)
・グローバリゼーションを西側のモノサシで測ることで他国を見ることは無理であることが分かった。(社会人)
・表面的には発展が急速に進んでいても、思想等の根底にある部分はそう簡単に変わらないのだと感じ興味深かった。(学部生)
・抽象的なGNH論ではなく、現実のブータンで若者がどのように生きているのかを知り興味をもちました。(社会人)


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[開催ポスター]
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[DATA]
第6回ブータン文化講座
「輪廻のコスモロジーとブータンの新しい世代」


▽ 日時:2015年10月20日(火) 17:00~19:00(16:30開場)
▽ 場所:京都大学稲盛財団記念館3階 大会議室
▽ 講演者:西平 直(京都大学大学院教育学研究科・教授)
▽ 司会進行:熊谷誠慈(京都大学こころの未来研究センター准教授)
▽ 主催:京都大学こころの未来研究センター ブータン学研究室
▽ 参加者数:98名

第1回京都こころ会議シンポジウム「こころと歴史性」を開催しました

 2015年9月13日、京都ホテルオークラにて第1回京都こころ会議シンポジウム「こころと歴史性」を開催しました。4月に発足した「京都こころ会議」の第1回シンポジウムとして、こころの歴史性に焦点をあて、5人の講演者がそれぞれの専門分野から講演、討論をおこないました。当日は、400名を超える参加者にご来場いただきました。


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 はじめに吉川左紀子センター長が、京都こころ会議発足の経緯を紹介し、その意義と取り組みについて、「歴史や文化、自然や環境など大きな枠組みと関係づけながらこころの豊かさやかけがえのなさを明らかにし、豊かなこころを育む人間社会のあるべき姿を国内外に"Kyoto Kokoro Initiative"として発信していきたい」と挨拶しました。
 続いて、公益財団法人稲盛財団の稲盛和夫理事長より、「稲盛財団では、人類の未来は科学の発展と精神的進化のバランスがとれて初めて安定するとの理念を掲げ、さまざまな取り組みを続けてきた。ひとのこころの大切さを問い直し、日本人に古くから伝えられて来た倫理観や道徳心について、その実践や提言を世界に向けて発信する本事業が、今後の人類の精神的進化に大きく貢献することを願っています」と、激励の言葉を頂きました。
 また、文部科学省研究振興局学術機関課の牛尾則文課長より、「こころの未来研究センターは、学問の領域をこえてこころに関する学際的な研究を進め、社会にも積極的に成果を発信している。真のこころの豊かさが問われている今この時期に、本会議が始まるのはタイミングとしても素晴らしい。ますますの発展を祈念します」とお祝いの言葉を頂きました。
 続いて、中沢新一明治大学野生の科学研究所所長が「こころの構造と歴史」というテーマで基調講演を行いました。中沢先生は「自然科学と人文学が考えるこころをつなぐことが、今こそ必要である」とし、現代の神経科学において解明されてきたこころと、人文学が捉えてきたこころを比較しながら「21世紀は、ものとこころの統一が重要な要素となる。今後、脳の過程とこころの過程が近付き、さらに深い理解が可能になるだろう」と、京都こころ会議への期待を話されました。
 次に、こころの未来研究センターの河合俊雄教授が「こころの歴史的内面化とインターフェイス」というテーマで講演しました。「自然や異界にまで広がるオープンシステム」として捉えられてきた日本人のこころと、キリスト教での祈りから精神分析にまでつながる「個人の中に閉じ込められたクローズドシステム」としての西洋人のこころを比較すると共に、インターネット社会が出現してこころをインターフェースとして捉える傾向へと変化してきた流れについて、臨床心理学の視点から考察をおこないました。
 午後は、広井良典千葉大学教授が「ポスト成長時代の『こころ』と社会構想」というテーマで講演をおこないました。公共政策、科学哲学を専門とする広井先生は、拡大・成長から成熟・定常へと変化する日本において人のこころや社会はどのように対応するべきか、文化的史実やデータに光をあてながら、ポスト成長時代のこころと社会の在り方について展望しました。
 休憩をはさんで、下條信輔カリフォルニア工科大学教授・こころの未来研究センター特任教授が「こころの潜在過程と"来歴"~知覚、進化、社会脳」というテーマで講演をおこないました。下條先生は、自身の研究から生まれた「こころの来歴(らいれき)」という概念について、「年輪がその木の生育歴を一瞬で示すように、来歴は遺伝-経験、環境-脳の相互作用の痕跡が、あらゆる時間スケールで、個体の歴史を超えて重ね合わさったもの」とし、自分や他者の来歴を丹念に振り返ることで人間の本性や、未来のこころを探る手がかりになる、と考察しました。
 最後に、山極壽一京都大学総長が「こころの起源――共感から倫理へ」というテーマで講演をおこないました。霊長類学が専門の山極先生は、性を隠匿し食を公開するという、他の霊長類とは逆の独自システムを持つ人間の特性に注目し、複雑な人間社会の背景にある人のこころの成り立ちについて、ゴリラをはじめとする霊長類研究の成果を様々な動画とデータとともに示しながら、こころの理解における比較研究の意義について論じました。
 その後、5名の講演者による総合討論がおこなわれ、総括コメントとして、鎌田東二こころの未来研究センター教授が「知のフロントランナーたちがこころについて様々な角度から考察した豊かな時間だった」と語り、日本人のこころとアニミズムに関連して、戦後に流行した「リンゴの唄」の歌詞を紹介し、「りんごにもこころを見出す日本のアミニズムがどんな可能性をもつのか、今後の京都こころ会議での議論の展開に期待している」と述べました。
 また、閉会の言葉として湊長博京都大学理事・副学長が、「京都大学には20をこえるたくさんの研究所、センターがあり、こころの未来研究センターはそのうち最も小さいセンターだが、こころという最も大きいものを対象に研究をおこなっている。こころをめぐる研究が今後、個人と社会の道しるべにつながるよう発展していくことを期待しています」と話し、シンポジウムは閉会しました。
 今回おこなわれた第1回京都こころ会議シンポジウムの講演内容は、書籍として出版される予定です。また、2016年には「国際京都こころ会議」を開催する予定です。


[シンポジウム写真(登壇順)]

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[開催ポスター]
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[DATA]

▽ 日時:2015年9月13日(日)9:30~18:00(9:00~受付開始)
▽ 会場:京都ホテルオークラ3階 翠雲(アクセス)
    (京都市中京区河原町御池)
▽ プログラム:
   9:30-9:50  開会の言葉 吉川左紀子(京都大学こころの未来研究センター・センター長)
            挨拶    稲盛和夫(公益財団法人稲盛財団・理事長)
            祝辞    牛尾則文(文部科学省研究振興局学術機関課・課長)
   9:50-11:00  講演①   「こころの構造と歴史」
                  中沢新一(明治大学野生の科学研究所・所長)
   11:00-12:00 講演②   「こころの歴史的内面化とインターフェイス」
                  河合俊雄(京都大学こころの未来研究センター・教授)
   12:00-13:20 休憩
   13:20-14:20 講演③   「ポスト成長時代の「こころ」と社会構想」
                  広井良典(千葉大学法政経学部・教授)
   14:20-15:20 講演④   「こころの潜在過程と"来歴"~知覚、進化、社会脳」
                  下條信輔(カリフォルニア工科大学生物・生物工学部・教授)
   15:20-15:40 休憩
   15:40-16:40 講演⑤   「こころの起源――共感から倫理へ」
                  山極壽一(京都大学・総長)
   16:40-17:40 総合討論  中沢新一、河合俊雄、広井良典、下條信輔、山極壽一
   17:40-18:00 総括    鎌田東二(京都大学こころの未来研究センター・教授)
            閉会の言葉 湊長博(京都大学・理事)

主催:京都大学こころの未来研究センター
後援:公益財団法人 稲盛財団

第6回東日本大震災関連シンポジウム「こころの再生に向けて~5年目を迎えた被災地の「復興」と現実」が開催されました

 第6回東日本大震災関連シンポジウム「こころの再生に向けて~5年目を迎えた被災地の「復興」と現実」が7月9日、京都大学稲盛財団記念館大会議室でおこなわれました。


 こころの未来研究センターでは、東日本大震災後に「震災関連プロジェクト」を立ち上げ、被災地での調査活動やこころのケアに関する支援活動を継続しておこなっています。第6回目を迎えた震災関連シンポジウムは、「震災後の「復興」と現実」をテーマに開催しました。はじめに、司会者の鎌田東二教授が法螺貝を奉奏したのち、参加者全員で黙祷を捧げました。鎌田教授は、これまで震災プロジェクトで取り組んだ調査研究活動の報告をおこなうと共に、今回のシンポジウムについて、「現実に進行している事態の中から目に見える『物質的復興』を測ることは比較的容易です。しかし、目に見えない『心の復興』を測ることは極めて困難だと言えます」と話し、5年目を迎えた被災地の現状について討論していきたい、と主旨を伝えました。


 第一部初めの基調講演では、福島県三春町の福聚寺住職で作家の玄侑宗久氏が「福島、いとあはれなり」という演題にて講演しました。復興活動の陰に隠れている福島の過酷な現状について、「あはれ」という言葉の意味を紐解きながら語りました。続いて、鈴木岩弓東北大学教授が「被災地に誕生する"祈りの場"」という演題で講演。多くの人の命が失われた震災で、残された人々がいかに死者と繋がりを持っているかを様々な事例とともに挙げ、死者と生者を結ぶ場として祈りの場が創出されてきた現場を伝えました。続いて、稲場圭信(大阪大学准教授が「被災地の記憶と震災伝承:気仙沼震災伝承マップの取り組み」という演題で、気仙沼市で取り組む心のケアの道のりや被災地の記憶を記録し伝承する取り組みについて話し、新たに生まれた「共感縁」などについて紹介しました。続いて、井上ウィマラ高野山大学教授が「津波復興太鼓:マインドフルネスとレジリエンスの視点から」という演題で、震災後から継続して通い取り組んでいる被災地の心のケアを段階的に紹介し、マインドフルネス、レジリエンス(極度の不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持することができる能力)などの観点から震災後の心のケアと今後の復興に必要な「トランスレーション型のリーダー」について提唱しました。4人の講演後、金子昭天理大学教授と黒崎浩行國學院大學准教授が、それぞれの専門からコメントを提供。その後、鎌田教授が進行役となって、登壇者らによる総合討論がおこなわれました。


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▽日時:2015年7月9日(木)13:00~17:30
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽テーマ:「5年目を迎えた被災地~その「復興」と現実」
▽プログラム:
趣旨説明:鎌田東二(京都大学こころの未来研究センター・教授(宗教哲学・民俗学))
基調報告(1):「福島、いとあはれなり」玄侑宗久(作家/福聚寺(福島県三春町)・住職)
基調講演(2):「被災地に誕生する"祈りの場"」鈴木岩弓(東北大学・教授(宗教民俗学))
基調報告(3):「被災地の記憶と震災伝承:気仙沼震災伝承マップの取り組み」稲場圭信(大阪大学・准教授(宗教社会学))
基調報告(4):「津波復興太鼓:マインドフルネスとレジリエンスの視点から」井上ウィマラ(高野山大学・教授(スピリチュアルケア))
コメンテーター:金子昭(天理大学・教授(倫理学))、黒崎浩行(國學院大學・准教授(宗教学・神社地域論))
司会:鎌田東二
▽参加者数:約100名


主催:京都大学こころの未来研究センター震災関連プロジェクト「こころの再生に向けて」
共催:科研「身心変容と霊的暴力~宗教経験における負の感情の浄化のワザに関する総合的研究」(身心変容技法研究会)+聖地文化研究会(「生態智の拠点としての聖地文化」)

身心変容技法研究会一般公開講座「丹道峨眉気功と身心変容のワザ」を開催しました

 鎌田東二教授が研究代表者を務める身心変容技法研究会の一般公開講座が、2015年4月9日、稲盛財団記念館3階大会議室で開催されました。


 身心変容技法研究会は、科研基盤研究A「身心変容技法の比較宗教学-心と体とモノをつなぐワザの総合的研究」を正式名称とし、多彩な研究メンバーによる最新の研究成果を結びつけ、身体と心との相互的な関わりをワザやモノを媒介として分析・研究するプロジェクトです。一般に向けて公開する今回の講座は、昨年に続いて中国峨眉丹道医薬養生学派第十四代伝人の張明亮老師(北京黄亭中医薬研究院院長)をお招きし、基調講演とワークショップをおこなっていただきました。


 はじめに、張老師による「丹道峨眉気功と身心変容のワザ」というテーマでの講演(通訳:山元啓子氏)があり、丹道峨眉気功の成り立ちに始まり、心と体を一つにするための実習と実践の方法まで、分かりやすい解説と実技の披露を組み合わせながらレクチャーいただきました。続いて、老師による表演と、参加者全員による実践ワークショップがあり、会場は熱気に包まれました。その後、司会進行を務めた鎌田教授との対談と総合討論によって議論を深めました。会場には、のべ240人を超える参加者にお越しいただき、盛況のまま終了しました。


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[開催ポスター]
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▽ 日時:2015年4月9日(木)13時~17時
▽ 場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽ プログラム:
13:00~14:30 基調講演「丹道峨眉気功と身心変容のワザ」張明亮(北京黄亭中医薬研究院院長・中国峨眉丹道医薬養生学派第十四代伝人)
14:45~15:45 ワークショップ「丹道峨眉気功の実践」張明亮          
16:00~17:00 対談・総合討議:張明亮×鎌田 東二(京都大学こころの未来研究センター・教授/宗教哲学・民俗学)
通訳:山元啓子、司会:鎌田東二
▽ 参加者数:約240名

「超高齢社会を健やかに幸せに生きる」シンポジウムを開催しました(清家助教によるイベントレポート)

 2015年3月21日、「超高齢社会を健やかに幸せに生きる」シンポジウムが稲盛財団記念館3階大会議室で開催されました。研究プロジェクトの代表を務める清家理助教(上廣こころ学研究部門)のレポートを掲載します。


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1503manabian_sympo_poster.png「孤立防止のための互助・自助強化プログラム開発」プロジェクト
2014年度シンポジウム「超高齢社会を健やかに幸せに生きる」
報告:清家理 助教(上廣こころ学研究部門)


 当日は、京都や大阪、滋賀などにお住まいのおよそ150人の参加者にご来場いただきました。はじめに、吉川センター長が挨拶に立ち、「今日は、くらしの学び庵で提供している『学びあい』の内容を凝縮させて、『健やかに幸せに生きる』ためのヒントを皆さんにご提供できる1日になればと願っています」と話しました。次に、司会進行を務める清家助教より、2014年10月より京都市上京区でスタートした「くらしの学び庵」の歩みについて説明しました。


 続いて、白眉センター助教の坂本龍太先生が「ブータンからの叡智-幸せに生きるとは-」というテーマで講演しました。ブータンは、「幸福の国」として報道等を通じ、すっかりおなじみになりつつありますが、坂本先生は、診療・検診の場面を通じて実感したこと、体験したことをもとに、お話くださいました。休憩をはさんで基調講演では、独立行政法人国立長寿医療研究センター総長の鳥羽研二先生が、「こころも身体もすこやか歳を重ねるために必要なこと」というテーマで講演をおこないました。講演では「フレイル」をキーワードに、早期発見をして、対処することの必要性について、即実践できるアドバイスが数多く紹介されました。


 その後、くらしの学び庵での「よろず相談会」の拡大版として、参加者の方々よりいただいた質問に対し、講師陣が各自の専門領域から回答する、「くらしの学び庵Q&A『幸せに歳を重ねるために必要なこと』」が、吉川センター長の司会進行でおこなわれました。冒頭では、パネラーとして、西窪一京都市役所保健福祉局長寿社会部長と田中聡京都信用金庫業務部ていねい推進課副長が登壇し、行政、金融それぞれのフィールドで超高齢社会を迎えて直面している課題、課題に対し、独自で取り組んでいることを5分間ずつレクチャーしました。Q&Aでは、参加者から寄せられた数多くの質問の中から、多くの方々が抱えておられると想定される悩みや疑問を中心に6点の質問が取り上げられ、講師ひとりひとりが丁寧に回答しました。


 最後に、くらしの学び庵で「老化と病気の予防で錆び知らず!」の講義を担当している独立行政法人国立長寿医療研究センター副院長の荒井秀典先生より挨拶があり、「参加者の皆さんには、ぜひ今日の学びを活かしつつ、ここにいない人たちにも何かしら還元していただけたら幸いです。また、講師陣は、くらしの学び庵を通じて『健やかに幸せに生きるための術』を今後も多くの人に伝えていきたい」というお話があり、シンポジウムは終了しました。


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▽日時:2015年3月21日(土)14:00-17:00(開場13:30~)
▽会場:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽プログラム
14:00‐14:10 開会あいさつ :吉川左紀子(こころの未来研究センター教授・センター長)
14:10-14:25 くらしの学び庵と歩み「学びあいから生まれているもの」清家理(こころの未来研究センター上廣こころ学研究部門特定助教)
14:25-14:55 くらしの学び庵特別講義編「ブータンからの叡智-幸せに生きるとは-」坂本龍太(白眉センター特定助教)  
14:55-15:10 休憩
15:10-15:40 基調講演「こころも身体もすこやかに歳を重ねるとは」鳥羽研二(独立行政法人国立長寿医療研究センター総長)
15:40-15:50 休憩
15:50-16:50 くらしの学び庵Q&A編「幸せに歳を重ねるために必要なこと」司会:吉川左紀子
パネラー:鳥羽研二、西窪一(京都市役所保健福祉局長寿社会部長)、田中聡(京都信用金庫業務部ていねい推進課副長)、坂本龍太、清家理
16:50-17:00 閉会あいさつ:荒井秀典(独立行政法人国立長寿医療研究センター副院長)
▽主催:京都大学こころの未来研究センター 後援:京都市、京都市教育委員会、研究大学強化促進事業「百家争鳴」プログラム、文部科学省 地(知)の拠点整備事業(50音順)
▽参加者数:150名


くらしの学び庵初級コース3期目は、5月~7月開講予定です。開催決定が決まり次第、当ホームページに詳細を掲載します。

京都府との共同企画「ワザとこころ 能の伝承~稽古と修行と教育」を開催しました

150112.png 2015年1月12日、京都府/京都大学こころの未来研究センター共同企画シンポジウム「ワザとこころ 能の伝承~稽古と修行と教育」を左京区岡崎の京都観世会館で開催しました。


 今回の「ワザとこころ」シンポジウムは、「『稽古』や能楽修行の問題を、現代の教育との比較によって浮き彫りにし、『学び』(真似び)のあり方を再考する」というテーマにもとづき、観世流二十六世宗家・観世清河寿氏とその御子息、観世三郎太氏をお招きし、京都を代表する能楽堂のひとつである京都観世会館を舞台におこなわれました。企画立案の中心となった鎌田東二教授が司会進行をおこない、後半のディスカッションでは、教育人間学を専門とする西平直京都大学教育学研究科教授、臨床心理学を専門とする河合俊雄教授を交え、日本を代表する伝統芸能である能におけるワザの伝承と歴史を縦軸に、現代の教育学とこころをめぐる研究を横軸に活発な議論が繰り広げられました。


 シンポジウムは、鎌田東二教授による法螺貝の奉奏で始まりました。続いて、吉川左紀子センター長が来場者の皆さんにご挨拶し、鎌田教授が企画主旨の説明をおこないました。続いて、観世流二十六世宗家・観世清河寿氏を舞台上に迎え、鎌田教授が聞き手となって「能のワザの伝承」をテーマにお話しいただきました。そして清河寿氏のもとで修行に励む御子息の三郎太氏も登壇。宗家親子が並んで互いの立場で能における切磋琢磨の日々について語るという非常に貴重な時間となりました。「教え込むのではなく、自らの力でワザを体得することが重要」と稽古を与える者と受ける者との真剣勝負の日々を語る清河寿氏は、気迫に満ちた内容ながらも冗談を交えて気さくに聴衆に語りかけ、三郎太氏は、学業やクラブ活動に励みながらの修行の日々について「気付けばこの家にいたから」能の世界に溶け込んでいた、と清々しいほどの自然体の姿を見せ、会場の人々を魅了しました。その後、お二人を中心に素謡と仕舞の実演がおこなわれ、素謡「神歌」、続いて清河寿氏の仕舞「高砂」が披露されました。


 後半は、お二人、鎌田教授、河合俊雄教授、西平教授が壇上に上がり、「能の伝承~稽古と修行と教育」をテーマにディスカッションをおこないました。伝統文化のワザの伝承と現代の教育との比較論、若い世代を育成するための教え手や周囲の人々のあるべき姿勢についてなど、活発な議論が交わされました。


 会場となった京都観世会館には300人を超える参加者の皆さんにお越しいただきました。アンケートの感想には「非日常的な空間で、精神性の深い話を聴くことができた」「能楽が抱える伝承の形の一端をかいま見せていただいた」「能の世界に興味を持つことができた。今の日本社会にとって必要なことが感じられた」「西平先生、河合先生、鎌田先生のおかげで違った解釈で能を理解できた」「神歌、高砂の実演がとても良かった」など、好評なコメントを数多くお寄せいただきました。


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[開催ポスター]
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[DATA]
▽ 日時:2015年 1月12日(月・祝)13:00~17:00(受付開始:12:30~)
▽ 場所:京都観世会館(京都市左京区岡崎)
▽ 参加費:無料 
▽ プログラム:
開会挨拶:吉川左紀子(京都大学こころの未来研究センター長)
趣旨説明:鎌田東二(京都大学こころの未来研究センター教授・宗教哲学・民俗学)
第1部:能の稽古の伝承のトーク/観世清河寿(観世流二十六世宗家)、観世三郎太、鎌田東二(司会)
実演 舞囃子:素謡「神歌」観世清河寿、観世三郎太、大江泰正、坂口貴信、大江又三郎氏、林宗一郎/仕舞「高砂」観世清河寿、大江泰正、坂口貴信、大江又三郎氏、林宗一郎
休憩
第2部:シンポジウム「能の伝承~稽古と修行と教育」/観世清河寿、観世三郎太、西平直(京都大学教育学研究科教授・教育人間学)、河合俊雄(京都大学こころの未来研究センター教授・臨床心理学)、鎌田東二(司会)
▽ 参加者数:338名
○主催:京都府、京都大学こころの未来研究センター
○後援:一般財団法人観世文庫、古典の日推進委員会
○協力:公益社団法人能楽協会京都支部、公益社団法人京都観世会、京都観世会館


□関連情報
公益財団法人禅文化研究所のブログに本シンポジウムの感想が掲載されました。
ワザとこころ 能の伝承 -京都観世会館- | 公益財団法人禅文化研究所


□メディア掲載情報
京都新聞(2015年1月7日付朝刊)に本シンポジウムの開催告知記事「能の教育学や舞囃子の実演 12日、左京でシンポ」が掲載されました。

第5回ブータン文化講座 「『関係性』から読み解くGNH(国民総幸福)」を開催しました

 2014年12月4日、こころの未来研究センターブータン学研究室の主催による第5回ブータン文化講座「『関係性』から読み解くGNH(国民総幸福)」が、稲盛財団記念館3階大会議室で開催されました。


 ブータン学研究室では、アウトリーチ活動の一環として「ブータン文化講座」を定期開催しています。今回は、名古屋大学大学院国際開発研究科の上田晶子先生をお招きし、「関係性から読み解くGNH(国民総幸福)」をテーマにご講演いただきました。


○参加者アンケートより


・GNHについてブータン人の生活感覚、そして関係性の視点から通常聞くGNHの議論以上に主体的でリアリティある議論を聞くことができてよかった(大学院生)
・自分が関心を持っている分野のお話だったので、勉強になった(社会人)
・非常に具体的なレベルに落としこまれていて興味深かった(大学院生)
・GNHを「 関係性」 から考えると今までと違いブータンの幸福の見え方をより具体的に感じることができた(学部生)
・多方面からの幸福論を伺うことができ、未来の政策論を考えていく上で大変参考になった(大学院生)


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[開催ポスター]

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[DATA]
第5回ブータン文化講座
「関係性」から読み解くGNH(国民総幸福)


▽日時:2014年12月4日(木)17:00 ~ 19:00 (16:30開場)
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽主催:京都大学こころの未来研究センターブータン学研究室
▽講演者:上田晶子(名古屋大学大学院国際開発研究科准教授)
司会進行:熊谷誠慈(京都大学こころの未来研究センター准教授/上廣こころ学研究部門)
▽参加者数:44名

「大荒行シンポジウム(科研 身心変容技法の比較宗教学)」を開催しました

 鎌田東二教授が代表研究者を務める身心変容技法研究会(科研基盤研究A「身心変容技法の比較宗教学-心と体とモノをつなぐワザの総合的研究」)が、2014年11月20日、21日に「大荒行シンポジウム」を開催しました。20日は一般向けの公開シンポジウム、21日は研究者向けの研究会をおこない、日本各地で伝統を継承する荒行の先達による講演とディスカッションが繰り広げられました。


 初日の一般公開シンポジウムでは、鎌田東二教授が企画趣旨説明をおこないました。その後、田中利典師(大峯金峯山修験本宗宗務総長・金峯山寺執行長)が「吉野修験道の荒行(奥駈け)」について、星野尚文師(本名:文紘、羽黒修験道松聖・所司役)が「羽黒修験道の荒行(峰入り)」について、高木亮英師(西国三十三所一番札所那智山青岸渡寺副住職)が「熊野修験:那智四十八滝の荒行(青岸渡寺滝行)」について、戸田日晨師(日蓮宗大荒行堂遠壽院住職・傳師)が「日蓮宗遠壽院の100日荒行」について、それぞれ講演をおこないました。これらの講演の後、倉島哲関西学院大学教授(社会学)がコメントを提供し、鎌田教授の進行のもと総合討論の時間を持ちました。


 翌日・二日目は、「大荒行 身心変容技法研究会」と称し、研究者を対象により専門的な内容で研究会がおこなわれました。発表は、「1.吉野修験道の荒行の検討」(田中利典師、コメンテーター:町田宗鳳広島大学教授・僧侶、小西賢吾こころの未来研究センター研究員)、「2.羽黒修験道の荒行の検討」(星野尚文師、コメンテーター:棚次正和京都府立医科大学教授、奥井遼こころの未来研究センター上廣こころ学研究部門研究員)、「3.日蓮宗の荒行の検討」(戸田日晨師、コメンテーター:津城寛文筑波大学教授、アルタンジョラーこころの未来研究センターワザ学共同研究員)、「4.天台修験道の荒行(千日回峰行と十二年籠山行)と総合討論」(発題者:鎌田東二教授、コメンテーター:篠原資明京都大学教授、井上ウィマラ高野山大学教授、永澤哲京都文教大学准教授)の順で進められました。会の締めくくりに、鎌田教授の進行により総合・総括討論が行われ、盛況のまま終了しました。


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[開催ポスター]
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[DATA]
「大荒行シンポジウム」(一般公開、申込み不要)
▽日時:2014年11月20日(木)13:00~17:30
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室 アクセス

1.企画趣旨説明
 鎌田東二(京都大学こころの未来研究センター教授・宗教哲学・民俗学)
2.吉野修験道の荒行(奥駈け)
 田中利典師(大峯金峯山修験本宗宗務総長・金峯山寺執行長)
3.羽黒修験道の荒行(峰入り)
 星野尚文師(本名:文紘、羽黒修験道松聖・所司役)
4.熊野修験:那智四十八滝の荒行(青岸渡寺滝行)
 高木亮英師(西国三十三所一番札所那智山青岸渡寺副住職)
5.日蓮宗遠壽院の100日荒行
 戸田日晨師(日蓮宗大荒行堂遠壽院住職・傳師)
6.コメント
 倉島哲(関西学院大学教授・社会学)
7.総合討論
 司会:鎌田東二


「大荒行」身心変容技法研究会(研究者対象、申込み不要)
▽日時:2014年11月21日(金)10:00~16:30
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室 アクセス
1.吉野修験道の荒行の検討:田中利典
コメンテーター:町田宗鳳(広島大学教授【僧侶】)、小西賢吾(京都大学こころの未来研究センター研究員)
2.羽黒修験道の荒行の検討:星野尚文
コメンテーター:棚次正和(京都府立医科大学教授)、奥井遼(京都大学こころの未来研究センター 上廣こころ学研究部門特定研究員・教育学)
――――昼食――――
3.日蓮宗の荒行の検討:戸田日晨
コメンテーター:津城寛文(筑波大学教授)
アルタンジョラー(京都大学こころの未来研究センターワザ学共同研究員・人類学)
4.天台修験道の荒行(千日回峰行と十二年籠山行)と総合討論 発題:鎌田東二
コメンテーター:篠原資明(京都大学教授)、井上ウィマラ(高野山大学教授)、永澤哲(京都文教大学准教授)
――――休憩――――
5.総合・総括討論 司会:鎌田東二(京都大学こころの未来研究センター教授・宗教哲学・民俗学)

井筒俊彦生誕100年記念トークセッション(11月8日/慶應義塾三田キャンパス)に河合教授が登壇します

141108izutsu_poster.png 2014年11月8日に慶應義塾三田キャンパス(東京都港区)で開催されるイベント「井筒俊彦生誕100年記念トークセッション 『伝播する井筒俊彦』」(主催:三田文學会)に河合俊雄教授が登壇します。


 世界的な思想家として知られる井筒俊彦の生誕100年にあたる今年、あらためて偉大な功績にスポットが当たっています。ユング心理学は井筒俊彦の思想活動の流れの中で強い関わりを持ち、互いに影響し合ってきました。今回のトークセッションには、井筒俊彦関連の書籍や雑誌等に多数の論考を提供している河合俊雄教授が、文芸評論家の安藤礼二氏や若松英輔氏らと共に登壇。今日と未来における井筒哲学の可能性について考えていきます。


 現在、トークセッション参加者を募集中です(要事前申込)。下記リンクの主催者ホームページをご覧のうえお申し込みください。


井筒俊彦生誕100年記念トークセッション 「伝播する井筒俊彦」

京都府/京都大学こころの未来研究センター共同企画「第13回こころの広場」を開催しました

1408kokoronohiroba_1.png 8月6日、京都府と京都大学こころの未来研究センターの共同企画による「第13回こころの広場 悩みと不安のイマ、むかし ~心理学と宗教学から考える~」が稲盛財団記念館3階大会議室でおこなわれました。


 「こころの広場」は、毎年、「こころ」について多彩なテーマで一般の皆さんと考えるシンポジウムです。今年も大会議室を埋め尽くす満員のご参加をいただき開催しました。今回は、臨床心理学者と仏教学者がそれぞれの専門分野から、「悩みや不安」のむかしといまにスポットをあて、現代の私たちがどんな悩みと向き合っているかについて考える、ユニークなイベントとなりました。


 冒頭、司会進行を務めた河合俊雄教授が、シンポジウムの主旨とこころの未来研究センターの取り組みについて紹介しました。「センターは、幅広い視点からこころを研究しています。私は臨床心理学が専門ですが、現代の人々の『悩み』のタイプが変わってきたように思います。この『悩み』や『不安』の変化について、文献に基づいた研究を進める熊谷准教授と、実践に基づいた研究を進める畑中助教、それぞれの知見から広く長い視点で見つめていきます」と話しました。


 はじめの講演者として熊谷誠慈准教授(上廣こころ学研究部門)は、「悩みと不安のむかし 古き仏教は悩みや苦しみとどう向き合ってきたか」というタイトルにて発表をおこないました。「私は仏教学、宗教学を専門としているので、過去と現在、あるいは世界と日本を比べながら、仏教が悩みや不安とどう向き合ってきたかを考えてみたい」と話し、講演を「0.イントロダクション」「1.原始仏教の説く『苦』」「2.部派仏教や大乗仏教の説く『苦』」「3.仏教の死生観」「4. 悩みと不安のイマ」に分け、仏教の大きな流れ、苦悩への対応、死生観、時代や宗派、地域差について紹介しました。


 熊谷准教授は、原始から教典で説かれているブッダの教えの目標は、心の生み出す「苦」をいかにしてのりこえるか、ということであり、仏教の根源的なテーマが苦悩から開放され乗り越えることだと、紹介しました。その「苦」にも様々な原因とタイプがあり、怒りや恨み、妬みや物惜しみなど、苦悩に関わる心の作用が部派仏教や大乗仏教で事細かに分類され、仏教における「苦」がいかに大きなテーマであるかを詳細に解説しました。また、死の恐怖について仏教は民衆の苦悩といかに向き合ってきたか、それぞれの時代と地域における死生観を紹介しました。最後に現在、世界各地で仏教がどのように広がっているのか、インド、ブータン、チベット、アメリカ、日本それぞれの仏教の特徴を紹介。日本では古くからの仏教が衰退する一方で、娯楽、観光の対象として文化的側面で注目されているものの、仏教の本質が再評価されているにはまだ到っていない、現代人の苦悩や悩みに対応する仏教としてはまだ課題なかばである、と現状を話しました。締めくくりとして、熊谷准教授は、「今日は仏教にかぎって話したが、仏教に限らず様々な古き知恵や伝統をたずねることで、現代の苦悩をのりこえ幸福の可能性を見いだすことができるのではないか」と提言しました。


 続いて、畑中千紘助教(上廣こころ学研究部門)が「悩みと不安のイマ:現代の悩みのかたちを考える」というテーマで講演をおこないました。「私のほうでは現代人のこころの変化についてお話ししたい。悩みや不安の形から今のこころはどうなっているのか、私自身の10年の臨床心理士の経験からみつめてきた変化を追いながらご紹介したい」と前置きをし、「1.心理療法の前提:こころの『中』への窓口」「2.イマの悩みのかたち:『深さ』の消滅?」「3.くさいものにもふたいらず?:社会・文化的側面」「4.心理テストに現れた変化:プロジェクト研究より」「5.イマのこころのかたち:『関係』に溶け出す<私>」という分け方で、数多くの事例と共に解説しました。


 畑中助教ははじめに、河合隼雄名誉教授の著書『カウンセリングを語る』(講談社+α文庫)や『新版・心理療法論考』(創元社)などを引用し、「心理療法は、その人の悩みのさらに中をみつめる作業。悩んでいる人は、悩みを話すことで自分のこころを見つめ直すことができる」と、心理療法が果たす役割と意義について説明。最近のクライエントの特徴として「簡単にカウンセリングにやってくる」「自分の心のなかで葛藤しない」など、悩み方の変化を紹介。「学期のはじめには授業登録の仕方が分からない、という悩みが心理相談室に寄せられる」というエピソードでは会場に笑いとどよめきが起こりました。また、過去に共同で取り組んだ「トイレ研究」の事例を紹介し、汚さを感じさせず他の空間と区別がなくなってきたトイレが現代人のこころのありようと共通している、と指摘。ロールシャッハ・テストに見る心理テストでは、何が見えているかをはっきりと答えない反応をする人が増え、主体性のなさが浮き彫りとなっていること、SNSやラインに見られるインターネットのサービスでタイムラインの中にそれぞれのつぶやきがまぎれ、中身よりもつながりを重視する傾向、「自分というものが関係に溶け出している」ことを指摘し、「悩みも不安も自分の内部に宿るものではない。だから葛藤もしない。それがイマの悩みや不安の形なのではないか」とこころの変化について考察しました。


 講演のあと、河合教授の進行にて討論の場がもたれました。来場者からの質問やコメントに応えながら、三人によるディスカッションがおこなわれました。河合教授は、「熊谷さんの話を聴き、仏教は心理学であり、分析的な心理療法に通じると思った」と話し、「近代の意識は関係性が重視されるなか、その関係というものがどんどん狭まっている。仏教の関係性はおのれと宇宙にまで及ぶが、現代人の関係性はどんどん閉じた方向へと進んでいる」と指摘しました。熊谷准教授は、「『我がない』という意味では現代の若者が持っている悩みはある種、仏教的だと思ったが、仏教はもともとある我を徹底的に否定する。しかし、現代人には最初から我がない、というのは不思議。似て非なりという感覚だ」と感想を述べました。同じような指摘は参加者から寄せられたコメントにもあり、自我、主体性、関係性をめぐる興味深い考察がなされました。畑中助教は、「人の苦しみに入っていき、それを超えるための教えを説く仏教は、心理療法そのものだと思った。今回、思いがけず仏教と心理療法のつながりを実感した」と話し、河合教授は「今回で得たことをヒントに研究を進めて、共同プロジェクトへとつなげていければ」と今後への展望を話し、シンポジウムを締めくくりました。


 参加者へのアンケートからは「古き仏教の話と現代人のこころの話、それぞれを対比できて良かった」、「熊谷先生の話で仏教の全般が分かり、勉強になった。畑中先生の話からは日頃感じている『今の若者像』がやはり現実なんだなと感じられ、納得しつつも不安になった」、「若い研究者二人の発表は新鮮で興味深く、元気になれた。こころに関する取り組みが知れてよかった」「河合教授の話から二人の発表者の人柄や意図がよく分かった」といった感想が数多く寄せられました。今後も、こころの未来研究センターでは、研究現場からの知見や研究者の声を多くの方々にお届けし、こころについて共に考える場を持ち続けて参ります。


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<開催ポスター>
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<DATA>
▽日時:2014年8月6日(水)15:00~18:00 (受付開始 14:30~)
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽プログラム
15:00~15:10 はじめに 河合俊雄(こころの未来研究センター・教授/臨床心理学)
15:10~16:00 講演1 熊谷誠慈(こころの未来研究センター・上廣こころ学研究部門・特定准教授/仏教学・チベット学)『悩みと不安のむかし:古き仏教は悩みや苦しみとどう向き合ってきたか』
16:00~16:50 講演2 畑中千紘 (こころの未来研究センター・上廣こころ学研究部門・特定助教/臨床心理学)『悩みと不安のイマ:現代の悩みのかたちを考える』※講演順序が当日変更となりました
16:50~17:10 休憩
17:10~18:00 ディスカッション+質疑応答
総合司会:河合俊雄
主催:京都府/京都大学こころの未来研究センター
▽参加者数:131名

第5回東日本大震災関連シンポジウム「こころの再生に向けて~震災後の自然と社会」を開催しました

1407shinsai_poster.png 第5回東日本大震災関連シンポジウム「こころの再生に向けて~震災後の自然と社会」が7月22日、京都大学稲盛財団記念館大会議室でおこなわれました。


 こころの未来研究センターでは、東日本大震災後に「震災関連プロジェクト」を立ち上げ、被災地での調査活動やこころのケアに関する支援活動を継続しておこなっています。第5回目を迎えた震災関連シンポジウムは、「震災後の自然と社会」をテーマに環境に焦点を当て、震災後の自然と社会がどう変化したのかを具体的な事例を各発表者によって紹介。被災地の森と海が、そして里や町がどのように変貌しつつあるのか、その未来を見据える会となりました。


 はじめに、司会者の鎌田東二教授による鎮魂の法螺貝が鳴り響いたのち、参加者全員で黙祷を捧げました。開始にあたって、鎌田教授は、これまでの震災プロジェクトにおける調査研究活動の報告をおこない、今回のシンポジウムの登壇者の紹介およびテーマの説明をおこないました。


 第一部初めの基調講演では、田中克京都大学名誉教授が「震災後の自然環境の変化」という演題にて講演しました。自然再生を目的とした森から海までのつながりの科学「森里海連環学」を展開し、有明海と三陸の海の再生の共通の課題として、陸と海の境界域に当たる水際の復元に取り組んでいる田中名誉教授。様々な生きた事例を紹介し、海と共に生きる人々の暮らしの現状を伝え、自然と共に生きるための課題を問いかけました。続いて、草島進一山形県議会議員が「震災後の社会と持続可能な未来」という演題で講演。阪神淡路大震災でのボランティア活動を契機に自然との共生を鍵にした持続可能な社会の実現を目指し活動を続けている草島議員が、現在の拠点で力を注ぐ山形でのダム問題の現状報告や各地でのエネルギー施策の事例まで、今後の暮らしと直結する自然、資源と人々の暮らしについて熱く語りました。二人の講演者のお話をうけ、コメンテーターとして金子昭天理大学教授が登壇し、「被災地の問題と、他の地域の問題をつなげ、普遍的な問題として考えられるようになったことは意義深い。次の世代のために今の課題を考えていくことが非常に重要。後半の島薗先生の原発問題に関するお話にも注目していきたい」と話し、第一部での各講演のポイントを明確にまとめ、前半を締めくくりました。


 第二部は、島薗進東京大学名誉教授・上智大学グリーフケア研究所所長が「原発事故が問いかけるもの」という演題で講演しました。原発事故という問題に直面する日本社会がいま問われている課題について、自然との共生を目指したドイツのエネルギー政策の事例、日本における各宗教的視点からの原発問題との向き合い方、原発の非倫理性、被災地での生活者の声など、様々な角度からみつめながら「今回の福島を通して日本の近代化は何を見逃してきたのかあらためて考えていくべき。社会で起きていることと人間の倫理、精神文化の問題を合わせて考えていく時期にきたのではないか」と問題提起しました。続いて、大西宏志京都造形芸術大学教授が、震災の現場と芸術、アートがどのように関わってきたのか、震災時からの様々な芸術家の活動、実際の被災地での取り組みについて紹介しました(詳細は、学術情報誌『こころの未来』11号56ページに記事が掲載されています→PDFはこちら)。その後、鎌田教授を中心に講演者らによる総合討論がおこなわれました。


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[DATA]
▽ 日時:2014年7月22日(火)13:00~17:00
▽ 会場:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室(アクセス)
▽プログラム
テーマ:「震災後の自然と社会」
第一部
13:00~13:10  「趣旨説明」
鎌田東二(京都大学こころの未来研究センター教授・宗教哲学・民俗学)
13:10~14:00 基調講演(1)  「震災後の自然環境の変化」
田中克(京都大学名誉教授・森里海連環学)
14:00~14:50 基調講演(2)  「震災後の社会と持続可能な未来」
草島進一(山形県議会議員・羽黒山伏・元神戸元気村副代表」
14:50~15:00 コメント : コメンテーター・金子昭(天理大学教授・倫理学)
休憩:15:00~15:15
第二部
15:15~15:55 報告 「原発事故が問いかけるもの」
島薗進(東京大学名誉教授・ 上智大学 グリーフケア研究所所長)
15:55~17:00 総合討論  「震災後の自然と社会」
田中克、草島進一、島薗進、大西宏志(京都造形芸術大学教授・情報デザイン)
司会:鎌田東二
▽主催:京都大学こころの未来研究センター震災関連プロジェクト 「こころの再生に向けて」共催:科研「身心変容の比較宗教学」(身心変容技法研究会)+聖地文化研究会(「生態智の拠点としての聖地文化」)
▽参加者数:72名

京都大学東京オフィス連続講演会「東京で学ぶ 京大の知」シリーズで内田准教授が講演しました

 京都大学東京オフィス連続講演会「東京で学ぶ 京大の知」シリーズ15 こころの未来 -私たちのこころは何を求めているのか-」が、全4回に渡って港区の京都大学東京オフィスでおこなわれています。第1回目は、2014年5月28日、内田由紀子准教授が「日本文化における主体性とは何か -日本人の意識、感情、関係性からの考察」という演題で講演しました。当日は、吉川左紀子センター長が司会進行とディスカッサントを務め、内田准教授の講演に先立ってセンターの概要や取り組みを紹介するとともに、講演後に文化と世代間コミュニケーションをめぐりディスカッションを行いました(参加者150名)。


 なお、第2回目は6月4日、阿部修士准教授による講演がおこなわれました。第3回は6月11日、第4回は6月18日に開催されます(申し込み受付終了)。後日、ホームページにてご報告します。


 京大のウェブサイトでもレポートが掲載されました。
「東京で学ぶ 京大の知」シリーズ15 こころの未来-私たちのこころは何を求めているのか- 第1回を開催しました。(2014年5月28日)- 京都大学


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[開催ポスター]
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[DATA]
「東京で学ぶ 京大の知」シリーズ15 こころの未来 -私たちのこころは何を求めているのか-」
第1回「日本文化における主体性とは何か -日本人の意識、感情、関係性からの考察」
▽日時:2014年5月28日(水) 18時30分~20時00分
▽場所:京都大学東京オフィス(港区)
▽講師:内田 由紀子(こころの未来研究センター・特定准教授)
▽内容:「近代社会の中で私たちは自分の意思で何かを選ぶ「自由」を手に入れてきました。自由選択には、責任と主体性が伴いますが、これは日本社会において難しい課題の一つです。日本人の心を巡る諸問題について、文化心理学の観点から論じます。」
▽参加者数:150名

上廣倫理財団との共催で「上廣フォーラム~日本人の生き方『わが先人・師を語る』京都大学知の伝統」を開催しました

 1月26日(日)、公益財団法人上廣倫理財団とこころの未来研究センターの共催により『上廣フォーラム~日本人の生き方 「わが先人・師を語る」京都大学知の伝統』が、稲盛財団記念館大会議室で開催されました。


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 はじめに、主催者を代表して上廣倫理財団の丸山登事務局長がご挨拶のため登壇されました。2012年の3月、東京大学でおこなわれた島薗進教授(宗教学)の退官記念講演において、安丸良夫一橋大学名誉教授(歴史学)との師弟関係について島薗教授が話されていたことにインスピレーションを受け、今回のフォーラムの構想を得たという丸山事務局長は、「偉大な先人たちも、豊かな師弟関係に支えられて近代日本を作り上げた。今日は現代の知を代表する方々に、一世代前の師や先人から受けた学問的、人間的影響について率直に語っていただきたい」と、フォーラムにこめた思いについてお話しになりました。


 続いて、こころの未来研究センターの吉川左紀子センター長が共催の挨拶として、「この会場にも今日、語られる三名の先人から影響を受けてお越しになった方も多いと思います。ぜひゆっくりとお聞きになり、これからの日本人の生き方について思いをめぐらせていただければ、と思います」と話しました。


 フォーラムは、河合俊雄こころの未来研究センター教授、河合雅雄京大名誉教授、中西寛京大法学研究科教授がそれぞれの師について1時間半ずつ講演しました。河合俊雄教授は「河合隼雄との三度の再会」という演題で、河合隼雄京大名誉教授と過ごした日々について、父と同じ心理学の道を歩むことを選んだ若き日の葛藤、京都大学で教鞭をとる父から学びを得た時間、単身渡ったスイスで年に一度開催された「エラノス会議」講演のためにやって来た父と過ごした濃密な時間、そして没後、膨大な量の著書や講演録の編纂にたずさわるなかで出逢うことのできた新たな父の姿について、静かに語りました。


 河合雅雄京大名誉教授は「今西錦司先生と仲間たち」という演題にて、生態学者、人類学者、登山家として多くの後進を育てた今西錦司京大名誉教授との日々を、「猿の行動のその先にある『人間とは何か』という普遍的なテーマのもと集った仲間らと切り拓いた、かけがえのない時間だった」と振り返り、日本の霊長類学の誕生期に伊谷純一郎氏ら個性あふれる研究者たちと経験した様々なエピソードを散りばめながら、終始ユーモアたっぷりに語ってくださいました。


 中西教授は「髙坂正堯先生の日本への思い」という演題で、国際政治学者として60年代以降の日本の外交と政策に多大な影響を与えた高坂正堯(まさたか)元京都大学法学部教授のもとで学んだ13年間を振り返り、国際政治のオピニオンリーダーとして戦後の日本を疾走し、63才の若さでこの世を去った恩師の活躍の軌跡とその人となりについて、数々の具体例を挙げながら切れ味鋭く紹介しました。


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 なお、このフォーラムはNHKラジオ第二放送の「文化講演会」にて後日放送される予定です。詳しい日程は、下記リンク先の番組ホームページにて放映月になりましたら発表されます。


文化講演会|NHKラジオ第2 文化番組 - NHKオンライン


[開催ポスター]
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[DATA]
上廣フォーラム~日本人の生き方「わが先人・師を語る」京都大学知の伝統
▽日時:2014年1月16日(日)10:30~16:30(10:00~受付開始)
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽プログラム:
10:30~10:40 開会挨拶
丸山登(公益財団法人 上廣倫理財団 事務局長)
吉川左紀子(京都大学こころの未来研究センター教授・センター長)
10:40~12:10 「河合隼雄との三度の再会」
河合俊雄(京都大学こころの未来研究センター 教授)
13:10~14:30 「今西錦司先生と仲間たち」
河合雅雄(京都大学名誉教授)
15:00~16:30 「髙坂正堯先生の日本への思い」
中西寛(京都大学法学研究科 教授)
▽参加者数:110名(関係者をのぞく)