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京都府/京都大学こころの未来研究センター共同企画「第12回こころの広場 in 宮津 天橋立とこころ」を開催しました

■丹後・宮津で初開催。テーマは「こころと天橋立」
PB106600.JPG 11月10日、京都府と京都大学こころの未来研究センターの共同企画による「第12回こころの広場 in 宮津 天橋立とこころ」が宮津市でおこなわれました。
 過去11回、すべて京都市内で開催していた「こころの広場」ですが、今回、初めて宮津市で開催。舞台となったのは、元禄年間(1600年代末)創業の老舗旅館、清輝楼(せいきろう)です。江戸時代の京都の絵師たちや、作家の菊池寛、吉川英治など数多くの文人墨客に愛されてきた宿で、築およそ100年の館内には貴重な襖絵や名書・詩歌などが残っています。
 12回目を迎えたこころの広場のテーマは「こころと天橋立」でした。天橋立を中心とする丹後の地にいきづく生態智、伝統知にスポットをあてながら、宗教学・民俗学を専門とする鎌田東二教授、臨床心理学を専門とする河合俊雄教授、仏教学を専門とする熊谷誠慈准教授(上廣こころ学研究部門)が宮津を訪れ、「こころと天橋立」について考察しました。
 清輝楼三階の大広間には、あいにくの強い雨にも関わらず来場してくださった地元の方が多く集まりました。冒頭、鎌田教授がこころの広場の趣旨説明をおこない、天橋立のある宮津が日本の歴史・文化において重要な土地であることに着目し、開催地を宮津に決定した経緯を紹介。続いて、河合教授がこころの未来研究センターの活動について、脳科学から臨床心理学や仏教まで、様々な専門を持つ研究者らが横断的にユニークな学際的研究をおこなっていることを紹介しました。
 リレートークのトップバッターを務めた鎌田教授は、はじめに熊野地方の水害や東日本大震災など近年の自然災害において寺社が果たした役割の大きさを数多くの写真と共に紹介。日本の地形と神社の分布を見せながら、自然そのものを畏れ敬い神としてきた日本人の精神史と、65座の式内社数を誇る丹後が神の国として重要な地であった歴史を解説しました。とりわけ天橋立については、『丹後国風土記』においてイザナギノミコトが「天の梯立(天橋立)」という「梯(はし)」を創造し、眠っている間に倒れて今のような形になったという伝承を紹介し、この土地の水域と境界が「常世(とこよ)とあの世」を結ぶ神秘的な場所であり、政治的にも地理的にも避けがたい場所として古来より人々が大切にしてきたと考察。最後に「今後の地域の未来を考えるとき、経済最優先ではなく伝統知や生態智を大切にすることが重要であり、自然災害多発の現代において丹後に数多く現存する寺社を大切にすることが、地域や人々を護ることにつながる」と強調して、締めくくりました。
 次に、熊谷准教授がマイクを持ち、「天橋立とブータン」をテーマにセッションをおこないました。チベット仏教やブータン学研究の視点から丹後の地に注目した熊谷准教授は、文殊信仰が今なお宮津の地に残っていることにふれ、文殊菩薩と般若経との関連や、ダライラマやチベット仏教の最高僧が文殊菩薩の化身といわれていることを紹介し、丹後とヒマラヤチベット仏教とが文殊菩薩を介してつながっている点を指摘。熊谷准教授みずから何度も調査訪問しているブータンについて、山岳地帯で豊かな文化が育まれてきた歴史のなかで厳しい自然と動物や人が共生し、仏教思想に基づく利他の精神が人々の暮らしに今なお根付いており、「知恵・慈悲・力」のバランスが重要という教えが浸透していること、仏教思想が国策や教育にうまく取り入れられている点などを紹介しました。最後に熊谷准教授は「仏教を大切にしてきた日本人には、ブータン人と同じ心と知恵が備わっている。丹後は、仏教的にも素晴らしい伝統の知恵が残った土地。こうした伝統の知恵は現代社会においても大きく私たちの幸せや生活へとつながっていくはず」と、締めくくりました。
 続いて、河合教授が「天橋立とこころのコスモロジー」というテーマで臨床心理学と心理療法の視点から「丹後のこころの古層」について話しました。河合教授は、ユング派の心理療法の一つである箱庭療法を紹介し、「たとえば天橋立を箱庭に表現したらどうなるのか?現在の心理療法と照らし合わせたらどんなことが見えてくるのか?」と問いかけ、天橋立の物語と当地の精神史が現代社会の人のこころとどうつながり、そこから何が見えてくるのか考えてみたいと話しました。イザナギの伝説にある「梯」(はしご)について、ヤコブの夢、春日大社の入口の神木、ジャックと豆の木など、「つなぐと同時に分離」を象徴するはしごの意味について考察し、「あの世への通路」として天橋立が強い力を持っており、「かぎりなく常世に近い国」であると話しました。さらに心理療法と世界創造、物語の持つ重要性に焦点をあて、統合失調症や発達障害の患者に対する心理テストの事例を数多く紹介し、心の自立を象徴するものとして「垂直性」が重要な鍵を持つことと、神話における「橋が立つ」ことの垂直性とのつながりをダイナミックに分析しました。河合教授は最後に天橋立と美意識について言及し、「天橋立の美しさは貴族の庭のモチーフとしても大きな役割を果たしてきた。心理療法的な視点から、”こころ”を考える意味でも、”形”をサイコロジカルに見るという点でも、天橋立は面白い」と話し、リレートークを締めくくりました。
 後半は、三者によるディスカッションがおこなわれました。はじめに鎌田教授が京都より持参した石(いわ)笛、横笛、法螺貝の3つを順に奏じました。鎌田教授は「石笛は垂直(神道)を意味し、横笛は水平(仏教)を意味し、法螺貝は全てを包含する意味で丸(まる)を意味する。丹後半島の地形は法螺貝に通ずると思う」と述べ、参加者は大広間に鳴り響いたそれぞれの音に耳を澄ましていました。ディスカッションでは、丹後における観音信仰、地理の持つコスモロジーと人のコスモロジー、神の国としての日本における天橋立の立地の重要性、「常世」「聖地」としての聖地力の強さなど、様々な話題について討論しました。質疑応答の時間には、丹後における古墳の多さと伝承について、米と豊受神との強い関係性についての質問があり、最後は参加された方からのリクエストにより、鎌田教授の法螺貝でお開きとなりました。
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[DATA]
京都府/京都大学こころの未来研究センター共同企画「第12回こころの広場 in 宮津 天橋立とこころ」
▽日時:2013年11月10日(日)13時00分~16時30分(受付開始12時30分~)
▽会場:清輝樓(せいきろう/京都府宮津市)
▽プログラム
13時00分 開会挨拶・趣旨説明:鎌田東二(かまたとうじ)(京都大学こころの未来研究センター教授・宗教哲学、民俗学)、河合俊雄(かわいとしお)(京都大学こころの未来研究センター教授・臨床心理学)
13時30分 リレートーク ①「丹後地方の『伝統知』とこころの未来~宗教民俗学の視点から」鎌田東二 ②「天橋立とブータン」熊谷誠慈(京都大学こころの未来研究センター特定准教授/上廣こころ学研究部門・仏教学、チベット学)③ 「天橋立とこころのコスモロジー」河合俊雄
15時00分 休憩
15時15分 ディスカッション (鎌田東二 河合俊雄 熊谷誠慈)
16時30分 閉会
▽主催:京都府/京都大学こころの未来研究センター
▽協力:宮津市
▽参加者数:70名
[開催ポスター]
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2013/11/18

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