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センター特任教授の北山忍ミシガン大学教授の講演会が開催されました

2012-06-28no1.pngこころの未来研究センターには国内外の研究者が常時滞在しています。
滞在期間は、数か月という短い期間から2年間という長期滞在まで様々ですが、滞在期間中、プロジェクト研究や、センター研究員との情報交換・意見交換、学生への講義など、様々な活動をおこなっています。
6月中はセンター特任教授の北山忍ミシガン大学教授が滞在し、去る6月22日「文化神経科学(cultural neuroscience)の最前線 : 文化環境、心理、そして脳を科学する」というテーマの講演会が開催されました。
▽開催日時:2012年6月22日(金)13:00-14:30
▽場所:稲盛財団記念館 中会議室
▽講演プログラム
・13:00-14:00 北山忍(ミシガン大学教授)
         『文化神経科学(cultural neuroscience)の最前線 』
・14:00-14:30 質疑応答
この講演会は、教育学研究科の学部生・大学院生向けの演習授業の一環で、毎年前期と後期に1度ずつ開催され、多彩な講演者が登壇しています。
約1時間半のレクチャーと質疑応答で構成された今回の講演会には、多くの学生・研究者が集まり、会場となった稲盛財団記念館の中会議室が満席となりました。
2012-07-02no2.png北山教授は、京都大学文学部心理学科を卒業し、同修士課程修了後、ミシガン大学心理学部でPh.D.を取得。オレゴン大学助教授・准教授を経て、1993年から10年間、京都大学総合人間学部で助教授を務めました。現在はミシガン大学心理学部で、ロバート・ザイアンス主席教授の職にあり、Personality and Social Psychology Bulletin誌の編集長を務めつつ、ミシガン大学・「文化・心・脳研究センター」のセンター長として精力的な研究活動をおこなっています。文化心理学における第一人者としての功績により、アメリカ科学・芸術アカデミーの会員にも選出されています。
このように常に新たな領域に挑戦し続けている北山教授ですが、現在、積極的に取り組んでいるのが文化神経科学という分野での研究です。講演前半では、まず文化神経科学の研究がどのような経緯で始まり、理論的な枠組が構築されてきたのかについての紹介から始まりました。
2012-07-02no3.png従来、人間の心は「自律した計算装置」であるという見方が一般的であったが、1980年代になって、様々な学問領域において、心と社会環境の相互作用を研究しようという動きが起こったという背景があること。シカゴ大学のシュウェーダー博士が投げかけた「文化と心は互いを構成しあっている(culture and mind make each other up)」という提題が新たな研究領域を開拓する契機になったこと。そしてそれ以前の研究ではほぼ用いられることがなかったような実験手法による文化比較を行うことで、人が意識していない領域にまで踏み込んだ文化的差異をあきらかにすることが可能になったこと。その結果、どのように「文化が心を構成している」のかを明らかにする挑戦が現実的になったことなどが、北山教授のスピード感あふれる話で紹介されました。ちなみに、こういった背景から生まれた北山教授らの研究成果が現在の文化心理学研究の礎となったことは、広く知られています。
後半では、脳機能を含む様々な指標を用いた研究結果の紹介がおこなわれました。地域文化における人の心のあり方や行動に関連する文化課題に着眼し、そこに住む人々の脳神経活動にまでどのような影響を与えるかを明らかにしようとする研究例が紹介されました。とりわけ、20数種類にも及ぶ複数の実験課題を与えておこなった大規模な実験や、北海道や黒海沿岸地域の文化における人々の独立性の強さを検証するためのユニークな実験など、様々な事例が鋭い考察を交えて紹介されました。
2012-07-02no4.png講演の最後では、いま現在教授が取り組んでいる「感情と感情のコントロール」に関する研究についての紹介がありました。文化によって感情の抑制や表出が異なる点に着目し、感情抑制時の脳神経反応を調べる最新の研究成果についての紹介がおこなわれました。
締めくくりとして、過去20年に渡って文化心理学の分野でなされてきた数々の研究をふまえ、今後、概念・研究手法における新たな展開の必要性が強調されました。とりわけ脳指標を取り入れた研究方法により、感情抑制の健康への影響などを調べるような研究が新たな展開となりうるのでは、という見方を示しました。文化環境が遺伝子レベルでの変化にすら関わっていることが明らかになりつつある現在、自然科学 vs. 文化といった二分法ではなく、文化・心・脳はリカーシブ(再帰的)に影響しあうという理解にもとづいた新たな理論的枠組みを構築していくことが、これからの研究課題であると強調し、講演を終えました。
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北山教授は、今後も定期的に来日し、研究最前線からのメッセージを伝えてくださる予定です。

2012/07/02

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