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  4. ミクロ文化事象分析と映像実践を通じたこころの学際的研究
    -文化と医療誌における映像資料・精神生態関与資料をおもな対象として-

ミクロ文化事象分析と映像実践を通じたこころの学際的研究
-文化と医療誌における映像資料・精神生態関与資料をおもな対象として-

研究代表者
宮坂敬造 慶応義塾大学 教授
連携研究員
石井美保 京都大学人文科学研究所 准教授
Karl Heider University of South Carolina, Distinguished Professor Emeritus, 慶應大学社会学研究科特別招聘教授
共同研究員
山口 亮太 京都大学大学院アジアアフリカ地域研究科
大石高典 京都大学こころの未来研究センター 研究員
センター受け入れ教員
吉川左紀子 京都大学こころの未来研究センター 教授
昨年度の継続研究としての枠組みに、相互作用自然事態に現れる<こころ>の表現・認知過程を捉える手だてとしてミクロ文化事象分析手法を新たに組み込み、さらに、グレゴリー・ベイトソンによって提唱された精神の生態学の概念を参照することで、こころを写す映像資料および精神生態関与資料の分析理論を開拓・彫琢してゆく。その際、「こころに内在する文化」という観点から近年の認知心理人類学的認知研究を参照しつつ、医療民族誌資料の分析を中心に行う。急速な映像機器の利便化と相まってヴィジュアル・イメージが溢れ、現実と映像の関係も錯綜している近年の状況のなかで、今改めて現実を写し取る志向をもつ映像学術研究とその映像資料の分析・検討意義を掘り下げ、<こころを写す学術映像資料><こころ誌資料>のみたすべき基準の確立を念頭に継続研究をすすめる。本研究の目的は、大きく分けて次の3点に集約される。(1)映像メディアが普及した現代以降に特に注目し、こころを写す映像を主対象に、人類学、心理学、認知科学などによる学際的収集・整理・分析を通じて、こころとイメージに関する問題群を、通文化的に明らかにする。(2)第一の成果をもとに、応用研究も視野に入れた、こころ研究における、映像実践による新たな方法論を開拓する。(3)それに関連して、こころを写す映像資料・こころ誌資料を相互作用のミクロ文化事象分析と精神生態関与系の観察分析方法によって検討する方法論を確立する。具体的には、第一について、狂気や病気治しなどの記録映像を、学際的な観点から収集・整理・分析する。第二については、撮影者と被撮影者、視聴者という三項の相互関係に注目した、こころのイメージ把握と創出に関する、実践的方法論を開拓する。またこれらを実現する過程では、時代や文化地域によって変動する倫理の相対主義的側面と、人類普遍の倫理という普遍的側面に留意し、こころを写す映像と倫理の問題についても考察を加える。第三については、グレゴリー・ベイトソンのバリ島人研究以降の相互作用生態分析手法の現代的展開可能性を近年の認知心理人類学研究、Anthropology of emotion研究の枠組みを援用しつつ開拓する。このため、7月にはKarl Heiderサウス・キャロライナ大学特別名誉教授を中心に研究セミナーを開催する。平成21年度は、(1)について探索的検討を行い、ロンドンRAI映像資料から、憑依が関わる映像人類学資料を中心にとりあげ、こころを写す映像として有効な条件、その背後の人類学的調査研究の関与性について検討し、その一部について映像系列による認知の違いを検出する試論的検討も手がけた。また、2010年3月にReferentin für Ethnologie, IWF Wissen und Medienの映像人類学者Dr. Beate Engelbrechtらを訪問し映像カーカイヴ閲覧と研究討議をおこなう予定である。また、平成21年度末に動物行動学における動物の相互作用研究とそれが作成・使用する学術映像記録の方法・特徴について、人間のこころを写す映像記録のそれとの比較からくる示唆について、予備的に検討を行ったが、そこから発展させ、来年度は、特に(3)を加え、映像資料だけでなく、こころ誌関与資料としてより広範な観察記録資料を含めた研究枠組みに拡大し、認識心理人類学的研究に接続・展開させたい。また、憑依と文化医療誌のテーマに加え、現代アフリカ世界で逆説的に拡大する呪術の現象等の背後にある「嫉妬」というこころの状態や、「どん底感」のこころの状態の表出・認知のテーマを比較文化的に検討したい。――こころ研究での上記構想枠組みでの研究は、申請者の知見範囲では今までなく、実質的なパイオニア研究として本研究は国際的インパクトをもちうる。

2010/04/28

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