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物への依存・人への依存 移行対象研究からの検討

研究代表者
黒川嘉子 佛教大学 准教授
センター受け入れ教員
河合俊雄 京都大学こころの未来研究センター 教授
                                            (一般公募型)
 社会的きずなが弱まっている言われる現代社会において、それなしではやっていけないという依存の問題は、どのようなこころのあり方を示しているのだろうか。
 本研究では、D.W.Winnicottが移行対象(transitional object)という概念で示した、乳幼児が特定の物に強い愛着を示し、就眠時や外出時に肌身離さず持とうとする行動に着目し、物への依存・人への依存の原初的な問題について検討することを目的とする。移行対象は、ほどよい母子関係を基盤として、主観的現実と客観的現実のあいだの中間領域に位置し、母親を象徴的に代理し、絶対的依存から相対的依存、そして独立に向けてという発達過程において、その移行を助けるものとして、健康で普遍的であると考えられている。しかし、移行対象発現率は文化差が大きく、日本では約3割と低率であること、添い寝が一般的な環境において、それぞれの子どもと養育者とのあいだでさまざまな就眠儀式がおこなわれており、たとえ移行対象を持っていても母親などの養育者の存在も同時に必要としているなど、これまでの移行対象概念では捉えきれない現状がある。特定の物への愛着、物への依存と、母親などの人とのかかわり、人への依存とは、どのように関係しているのか、その原初的なあり方をあらためて問い直すことが必要であろう。また、ここには、依存性における文化の問題、依存から自立へというプロセスの問題だけでなく、人が何かに夢中になる、何かに“はまる”という現象について理解を深めることが可能になると考えられる。

2011/07/12

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