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家族機能と社会性の進化行動遺伝学:双生児法による

研究代表者
安藤寿康 慶應義塾大学文学部 教授
連携研究員
敷島千鶴 慶應義塾大学先導研究センター 特任助教
センター受け入れ教員
平石界 京都大学こころの未来研究センター 助教
                                            (一般公募型)
【研究目的】
個性を決めるのは遺伝か環境か。行動遺伝学は、そうした二項対立が誤りであることを明らかにするだけでなく、家族成員が共有する環境要因(いわゆる“家庭環境”)よりも、個々人が独自に経験する環境のほうが、個性に与える影響が大きいことを明らかにしてきた(Turkheimer,2000)。「家庭よりも家庭外の経験の方が重要」という知見は、さまざまな論争を引き起こしてきた(Harris,1998)。しかし近年、家庭環境は、交互作用として個性に影響する可能性が指摘されている。申請者らも、親の情愛深さが平均から大きく外れる時にだけ、共感性形成に家庭環境の影響が現れることを明らかにした(敷島・平石・山形・安藤,印刷中)。本研究プロジェクトは、こうした遺伝・環境交互作用、または環境・環境交互作用が、家事・出産・育児行動を含む社会性の発達に与える影響について、双生児データにより検討する。
【期待される成果】
ヒト(ホモ=サピエンス)の特徴の一つは母親以外の存在が育児に関わることであり、そのことが、ヒトのさまざまな特徴(向社会性、文化)に影響した可能性も指摘されている(根ヶ山・柏木,2010)。一方で日本社会における父親の育児参加の少なさも繰り返し報告されている。父親の問題は、ワークライフバランスの観点から、少子化問題との関連も指摘されている(柏木・高橋,2008)。加えて、豊かな社会における少子化の進展は、進化的視点からも極めて興味深い現象である(Borgerhoff-Mulder,1998)。
本プロジェクトでは、双生児家庭の保護者に家事・育児負担などの調査を実施し、双生児本人の家族観および家族行動(家事・出産・育児行動)と合わせて分析することにより、親子の遺伝的類似性を統計的に統制した上で、両親の家事・育児行動が、子の家事・出産・育児行動を含む社会性の発達に与える影響を定量的に明らかにする。これらにより、ヒトの社会性の発達にかかわる要因を明らかにするだけでなく、少子化進展プロセスを理解するための基礎データを提供ことも期待される。

2011/07/12

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