PJ-2 伝統知・倫理思想領域

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プロジェクト2 伝統知・倫理思想領域

アジアと日本の精神性、幸福感、倫理観

研究代表者

熊谷 誠慈  上廣倫理財団寄付研究部門 特定准教授

概要

 産業革命以降、人類は科学や経済の分野において大きな成長を遂げた。特にわが国は、第二次大戦後の高度経済成長を経て、世界有数の経済大国となった。生活は便利になり、人生の選択肢も増え、物質的豊かさを大いに享受できるようになった。
 その経済成長も、1970年代のオイルショック、1990年代のバブル崩壊を経て伸び悩み、ポスト経済成長時代が到来した。経済成長こそ停滞したものの、科学技術はなおも発展し続け、情報化や国際化が進み、多様な生き方や価値観が生まれるに至った。他方、科学技術の爆発的発展は核にまつわる戦争や事故を引き起こし、急速なグローバル化は伝統を崩壊させ、過剰な情報が人生設計を複雑化し、人々の悩みを深めた。結果、豊かで便利な社会でありながら、生きづらさが増大しつつあり、今後もこうした傾向が止まる気配はない。
 このような難局を打開するには、いかにして幸せな人生を過ごすことが可能であるか、「良き人生の道筋(倫理)」を再考し、それを社会実践に繋げていく必要がある。
 しかし、国民全員の状況を個別に調査、対応することは困難である。他方、時代や地域、年代、性別を超えて共有され続けてきた伝統的な価値観や倫理などは(少なくともその一部は)、未来の社会においても人類に広く幸せをもたらす普遍性を備えている可能性がある。
 以上の背景から、本プロジェクトでは、①日本と近隣アジア諸国の伝統的な精神性、幸福観、倫理観を体系化した上で、②現代社会に応用・還元し、より幸せな人生や社会の構築に寄与していくことを目的とする。

研究プロジェクト

日本と東アジアの伝統的な精神性と倫理

 わが国は、第二次大戦後の高度経済成長を経て豊かで便利な社会となりながら、格差社会など生きづらさが増大しつつある。このような難局を打開するには、いかにして幸せな人生を過ごすことが可能であるか、「良き人生の道筋(倫理)」を再考し、それを社会実践に繋げていく必要がある。本プロジェクトでは、問題の本質を探るべく日本の伝統的な精神性、幸福観、倫理観を体系化することを目的とする。また、近隣東アジア諸国にも目を向け、日本と東アジアの伝統的な精神性や倫理観の解明を進める。
 社会還元の一環として、中国や日本の精神性、倫理観を把握すべく、鎌倉時代の東大寺の学僧・凝然(ぎょうねん, 1240-1321)の著した、中国・日本の伝統仏教8宗派の概説書『八宗綱要』を精読する勉強会を一般向けに開講する予定である。また、現代日本のコミュニティの再形成や相互情操教育についても、多世代間での共助、共育、共創といった視点から調査を進め、調査結果を行政や社会にフィードバックしていく。

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B. インド・ヒマラヤの宗教精神とその現代的意義

 我が国では近年、諸種のメディアを通じて、ヒマラヤ地域に関する沢山の情報が流入して来るようになり、ヒマラヤ地域は我が国にとって身近さを増したと言えるが、関心の方向性の大半は政治的・経済的側面に限定されているのが現状であり、同地域の文化的特性、とりわけ、地域固有の精神性については、あまり顧みるむきがない。
 このような現況に鑑みて、本プロジェクトは、ヒマラヤ地域の2大宗教である「チベット仏教」と「ボン教」を中心に、同地域の宗教的・伝統的精神の解明を目標とする。なお、「チベット仏教」は7世紀以後、ブータン、ネパール、シッキム、ラダック、インド東北部、中国西部、さらにはモンゴルにまで伝播し、各地域で土着化が進んだ。「ボン教」も大よそ同様の広がりを見せている。本研究では、2大宗教がどのように他地域に伝播し、地域化していったかという問題にも取り組み、ヒマラヤ文化圏における宗教精神の普遍性と地域性の双方を理解することを目指す。また、ヒマラヤ地域には古来よりインドからの文化的影響が大きかったことを鑑みて、インドの宗教精神についても調査を進める。
 インドからチベット圏、東北アジアにかけての伝統的な精神性や倫理観を比較考察すべく、「ヒマラヤ宗教研究会」を定期的に開催する予定である。

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C.国民総幸福(GNH)を支える倫理観・宗教観研究

 国際社会は近年、「幸福」に対して意識を高めつつある。その顕著な現れとして、2012年に国連が「国際幸福デー」(毎年3月20日)を採択したことが挙げられるが、その背景として、ブータン王国が国策として打ち出している「国民総幸福」(GNH)に対する国際的な関心の広がりを見逃すわけにはいかない。このGNHについては従来、経済学や開発学などの視点から研究が推進されてきているが、しかし、そもそもGNH政策の依って立つ基盤が、ブータン王国に深く根付いた独自の宗教的倫理観の上にある事実は看過されている。
 以上の経緯を鑑みて、本プロジェクトでは「国民総幸福」に着目し、同政策の土台となっている倫理観・宗教観の内実について、ブータン王国はもとより、広くチベット・ヒマラヤ文化圏全体を視野に収めつつ多角的に検証し、さらには、わが国の宗教倫理、精神文化との比較考察をも行う。専門家向けの「京都大学ブータン研究会」、また、市民向けの「ブータン文化講座」を定期開催する予定である。

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