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『東日本大震災関連プロジェクト』を立ち上げました。

『東日本大震災関連プロジェクト~こころの再生に向けて~』を立ち上げました。


研究期間 平成23年 4月 1日~平成 25年 3月 31日
研究目的 
 平成23年3月11日、東日本大震災という、未曾有の事態が発生した。地震・津波・原子力発電所の事故という3つの要素による複合的かつ甚大な影響をもたらす災害を経験したことで、日本における幸福感のあり方、社会関係のあり方は被災地ではもちろんのこと、その他の地域においても変化したと考えられる。
 本研究プロジェクトでは、東日本大震災関連プロジェクトとして、宗教学・民俗学・社会心理学・文化心理学のアプローチから、こころの再生に向けての取り組みを行う。
 宗教学・民俗学的アプローチとしては、「震災後の宗教の動向と世直しの思想と実践の研究」を研究題目とし、東北大学の鈴木岩弓氏が事務局の「心の相談室」、島薗進氏が代表の「宗教者災害支援連絡会」、稲場圭信氏が共同代表の「宗教者災害支援ネットワーク」などとの連携を保ちながら、①伝統文化の心と体のワザ(瞑想・武道・気功など)を活用したメンタルヘルスケア、②伝統文化および民俗芸能・芸術、聖地文化・癒し空間を活用した復興と再生、③脱原発社会の社会デザイン・世直しのありようを模索していく。その際、宗教的「世直し」思想と実践事例の解明とともに、21世紀文明のありかた、その中での日本文明の位置とありかた、そこにおける伝統文化(祭り、芸能、芸道、宗教など)の継承と活かし方、自然と人間と文明との関係の中での「生態智」の再発見・再評価と再構築、聖地などの安らぎや浄化をもたらす「癒し空間」の活かし方、などについて焦点を当てつつ考察していく。
 社会心理学・文化心理学的アプローチとしてはこれまで取り組んできた若者の適応感・不適応感の研究、社会的ネットワーク形成過程についての研究をベースに発展させ、日本文化における災害下の心理状態、対人関係、動機付けの状況やそれらに影響を与えるような報道内容を調査し、長期的・俯瞰的な視点での災害時の心理行動についての知見を呈示する。基本的には被災地以外での調査から始め、今後の災害時の教訓となるような知見を示す。

研究計画
a.「心の相談室」「宗教者災害支援連絡会」「宗教者災害支援ネットワーク」などの活動の追跡と連携
 東日本大震災後の宗教者の災害支援活動について追跡調査し、整理する。
b.伝統文化の心と体のワザ(瞑想・武道・気功など)を活用したメンタルヘルスケア
 伝統文化の精神・身体技法の活用法を調査・整理し、必要に応じてネットワーク化する。
c.伝統文化および民俗芸能・芸術、聖地文化・癒し空間を活用した復興と再生
 聖地文化を含む伝統文化や民俗芸能・芸術が被災地の復興にどのように関与するかを調査すると同時に、支援のあり方を実践的に探る。
d.世直し思想と実践の解明
 宗教的世直し思想と実践の歴史的事例の検証と、その現在形を探る。
e. メンタルヘルスとサポートの効果の検証
 これまでの文化心理学研究により、日本においてはアメリカよりもソーシャルサポートの知覚が主観的幸福感に関わっていることが示されている。一方でアメリカの9.11においてもソーシャルネットワークが果たした役割は大きいとされている。このように災害下においてサポートは大きな効果をもたらしていると考えられるが、たとえばどのようなサポートが実際的な心理的な変化を短期的・長期的にもたらすのかについて検討する。
f. メディア報道の影響
災害時の報道のインパクトを検討する。
今回の地震の後、様々なデマ情報や風評被害が広がったとされている。たとえば放射線被害の正確な情報についても、公に呈示される情報への不安感、不信感がベースとなり、その上で外国人の避難情報、インターネットの情報などに不必要にあおられた。情報が不足する中で、メディアの影響は、人の行動に影響を与えると考えられる。不安をあおる内容も、安全を強調する内容にも人々は不安を覚えるであろう。また、他国のメディア情報が容易に入手できる昨今、日本のメディアのみならず海外メディアの報道の持つインパクトもある。特に今回の場合のように、日本のメディアと海外メディアの報道内容のギャップは不安を増幅させた可能性がある。そこで日本やニュージーランド、スマトラなど、様々な災害に対するアメリカ、ヨーロッパ、日本などいくつかの国のメディア報道を分析する。そして、どのようなメディア報道に接した人がどのような信念を持ったり行動を起こしたのかを検討する。それぞれの文化における報道の特徴を精査することは、情報媒体者へのフィードバックとしても重要であると考えられる。


連携研究員
金川智恵 かながわ ちえ 追手門学院大学経営学部教授 社会心理学・博士
竹西亜古 たけにし あこ 兵庫教育大学教授 社会心理学・博士
大川清丈 おおかわ きよたけ 甲子園大学人文学部准教授 社会学・修士
原田章 はらだ あきら 追手門学院大学准教授 統計学・修士
島薗進 しまぞのすすむ 東京大学人文社会系研究科教授 宗教学・文学修士
鈴木岩弓 すずきいわゆみ 東北大学文学研究科教授 宗教民俗学・文学修士
玄侑宗久 げんゆうそうきゅう 花園大学客員教授 臨済宗僧侶・作家
金子昭 かねこあきら 天理大学おやさと研究所教授 倫理学・博士(文学)
稲場圭信 いなばけいしん 大阪大学人間科学研究科准教授 社会学・宗教学(PhD,ロンドン大学)


共同研究員
薮ノ 弘美(やぶのひろみ) 追手門学院大学大学院 経営学研究科  博士後期課程2年