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畑中助教のインタビュー記事がリビング京都に掲載されました

130323living.png 畑中千紘助教のインタビュー記事が、3月23日発行のリビング京都 (京都リビング新聞社)の特集「聞く力アップで対人関係も良好に。人の話、聞いていますか?」に掲載されました。

 リビング京都は、京都市と近辺エリアの約49万世帯に毎週配布されている総合生活情報紙です。「聞く力」や「コミュニケーション力」向上のためのノウハウを集めた今号の特集で、畑中助教は臨床心理学を専門とする自身の研究をもとに、「人が人の話を聞くとはどういう行為か」を分かりやすく解説。相手の話を理解し会話をスムーズに進めるためのコツを紹介しています。

 記事は、同紙のウェブサイトで全文をお読みいただけます。


□リビング京都 2013年3月23日号
「聞く力アップで対人関係も良好に 人の話、聞いていますか?」
http://www.kyotoliving.co.jp/article/130323/front/index.html

京都幸福会議2013に吉川センター長と内田准教授が参加しました

ZBvumtqQa7Hl_vhvIBfndbJlHLZIfsppz5A6SazzKyk.jpeg 2012年より国連決議によって3月20日が「国際幸福デー」となりました。こころの未来研究センターでは、昨年、日本で初めてブータン仏教やブータンの思想哲学を研究する「ブータン学研究室」を設置。現在も、様々な分野での研究活動を通して、人の幸福につながるこころの研究を続けています。

 2013年3月20日、「京都幸福会議2013」(主催:京都市、京都経済同友会 共催:こころの未来研究センターほか)が立命館大学朱雀キャンパスで開催され、吉川左紀子センター長と内田由紀子准教授が参加しました。

 吉川センター長は、プログラム最初の特別鼎談に、カルマ・ウラ王立ブータン研究所長、島薗進東京大学大学院人文社会系研究科教授と登壇し、コーディネーターを務めました。

 カルマ・ウラ所長は、ブータンのGHNの政策について、その考え方や掲げる目標について様々なデータをもとに紹介。「多くの人は所得や生活環境など外部的条件が満たされることが幸せだと考えるが、実は内面的な条件を満たすことが重要」と話し、ブータン人の幸福度が高い背景に、仏教精神と祈りの浸透、ゆったりとした日常の過ごし方、周囲とのつながりがあることを強調しました。島薗教授は、「東日本大震災を機に、今までの文明至上主義を考え直す必要があることを痛感した。今、ブータンを学ぶことはタイムリー」と話し、ブータン人の死生観について質問。カルマ・ウラ氏は、「ブータン人は死を受け入れ、死について熟考している。よく死ぬことがよく生きることだと身をもって感じている。仏教思想の無常を受け入れた上で、日々を悔いなきよう過ごそうとし、それが幸福感へとつながっている」と話しました。

 吉川センター長は、鼎談の結びにあたり、「ブータンは子どもから大人まで、自分だけではなく他人や生きとし生けるものすべてに対し祈る習慣がある。日本とブータンは、共通する部分がある一方、精神の奥底で異なるところもある。それぞれを知ることが、これからの日本のあり方や幸せについて、さらに考える機会になるのでは」と話しました。

ntlK-58j5gvXs-XvgddjHizHpN3RkJuKDMlEGRtf83c%2CYxEVfre5DBh3vDusbYFhekETUIBCvYvXOpmOIsvFGmc.jpeg その後、赤松徹眞 龍谷大学学長、門川大作京都市長、山田啓二京都府知事、田辺親男京都経済同友会代表幹事らによるパネルディスカッションに続いて、研究者や京都経済同友会の会員を対象に「特別セッション」が行なわれ、内田准教授が、西村周三国立社会保障・人口問題研究所所長、山崎亮京都造形芸術大学教授、岡村充泰ウエダ本社代表取締役社長、袖川芳之京都クオリア研究所研究員らと共に登壇しました。

 「成熟国家における新たな幸福への挑戦」というテーマで、内田准教授は話題提供者として、自身が研究を行なった「東日本大震災と幸福感」の調査データ等を提示し、若者の価値観や震災後の幸福感の変化、日米の幸福感に対する考え方の違いを示しました。登壇者それぞれの立場から展開される多様な幸福感についての意見で討論が白熱するなか、内田准教授は、「今、問われているのは、個人の幸福だけではなく、周囲の人を幸せにしようという幸せの求め方の転換。家族や社員を幸せにできているか、あるいは幸せであるか確認だけでもできているか、そんな意識の変化が今後の社会における鍵になるのでは」と、話しました。議長の西村氏が「世代差や地域差など、個々が持つ幸福の定義や感じ方は異なるが、こうして"幸福"とは何か、という対話を重ねることが重要ではないか」と総括し、セッションは盛況のまま終了しました。


130320kyoto_happiness.png「京都幸福会議2013 ~幸せの国ブータンから,これからの幸せの在り方を学ぶ~」
▽開催日時:2013年3月20日(祝)
▽開催場所:立命館大学朱雀キャンパス5階ホール
▽主催:京都市,京都府,京都経済同友会 共催:大学コンソーシアム京都,京都大学こころの未来研究センター,同志社大学,立命館大学,京都産業大学,龍谷大学,京都学園大学 後援:内閣府,経済社会総合研究所,京都商工会議所,京都経営者協会,京都工業会,在大阪ブータン王国名誉領事館
▽プログラム
特別鼎談「ブータンのGNHからこれからの幸福の在り方を考える」(同時通訳/午後1時から午後2時5分まで)
カルマ・ウラ(王立ブータン研究所所長)、島薗 進(東京大学大学院人文社会系研究科教授)、吉川 左紀子(京都大学こころの未来研究センター長)
▽セッション「幸福が実感できる京都づくりをすすめるためには」(午後2時15分から午後3時40分まで)
議長:赤松 徹眞(龍谷大学学長)、門川 大作(京都市長)、山田 啓二(京都府知事)、田辺 親男(京都経済同友会代表幹事)
▽特別セッション「成熟国家における新たな幸福への挑戦」
議長:西村 周三(国立社会保障・人口問題研究所所長)、内田 由紀子(京都大学こころの未来研究センター准教授)、山崎 亮(京都造形芸術大学教授)、岡村 充泰(ウエダ本社代表取締役社長)、袖川 芳之(京都クオリア研究所研究員)


〜追記(2013.4.8)〜

京都幸福会議の模様がテレビ放映されました。

KBS京都 4月7日(日)22:00〜22:30
京都幸福会議2013 「幸福を実感できる京都づくりをめざして」


□関連ページ

「京都幸福会議2013の開催について」(京都市ホームページ)

「『社会貢献で幸福に』京でブータンに学ぶ会議」(京都新聞)

幸せの国ブータンから学ぶ「国際幸福デー」京都(MSN産経ニュース)

こころの未来研究センター連携MRI研究施設開設記念シンポジウム「脳科学の地平を拓く -こころと社会につながる新たな知-」が開催されました

 2013年2月16日、連携MRI研究施設開設記念シンポジウム「脳科学の地平を拓く -こころと社会につながる新たな知-」が、稲盛財団記念館大会議室で開催されました。


MRsympo-1.png▽開催日時:2013年2月16日(土)13:00~17:40
▽開催場所:京都大学稲盛財団記念館3F大会議室
▽対象:研究者、学生
▽参加者数:74名
▽プログラム:
・13:00 - 13:10 開会挨拶 吉川左紀子(京都大学こころの未来研究センター)
・13:10 - 13:20 来賓挨拶 澤川和宏(文部科学省研究振興局学術機関課長)代読 小坂井克也(文部科学省研究振興局学術機関課課長補佐)
・13:20 - 13:30 来賓挨拶 井村裕夫(元京都大学総長・財団法人先端医療振興財団理事長)
・13:30 - 14:10 定藤規弘(自然科学研究機構生理学研究所)「領域架橋共同研究に於けるMRIの役割 -社会神経科学を例に-」
・14:10 - 14:50 坂井克之(東京大学大学院医学系研究科)「ヒト前頭前野と認知制御」
・14:50 - 15:30 本田学(国立精神・神経医療研究センター神経研究所)「感性的質感認知へのイメージングからのアプローチ」
・15:30 - 15:50 休憩 Coffee Break
・15:50 - 16:30 Joan Chiao(Northwestern University, U.S.A.)" Cultural neuroscience: Mapping cultural and genetic diversity in the developing brain"
・16:30 - 17:10 Julie Grèzes(Ecole Normale Supérieure, France)" The interplay between the limbic and the cortical motor systems"
・17:10 - 17:50 Shihui Han(Peking University, China)" How do we understand and share others' pain? The effect of social group relationships"


■ 複雑で多様な人のこころを解明するために。開かれた共同研究施設として新たな一歩へ


130216fMRI1.png こころの未来研究センター連携MRI研究施設は、2012年4月、南部総合研究1号館に設置されました。fMRI装置(機能的磁気共鳴画像装置)を用いた脳科学研究が本格的に始まり、すでに8つの研究プロジェクトが生まれ、センター内外の研究者らが連携して研究を進めています。


 シンポジウムの開催にあたり、吉川左紀子 こころの未来研究センター長は、挨拶のなかでこのように連携MRI研究施設について紹介しています。
 「本施設は、日本学術振興会の最先端研究基盤事業に採択された『こころの先端研究のための連携拠点構築事業(WISH)』の一環として導入されたMRI装置を中心とする研究施設です。こころの未来研究センターのような人文社会系の部局にMRIという大型の先端研究設備が整備されたことは、こころの科学研究の推進にとって画期的な出来事です。設置にあたり、情報学研究科の水原啓暁先生、自然科学研究機構生理学研究所の定藤規弘先生、ATR脳活動イメージングセンタの正木信夫先生をはじめ多くの方のお力により無事に設置されました。この場をお借りして先生方のお力添えとご努力に感謝します。」


 また、2007年4月に設立した当時のセンターを振り返りながら、「開設当初、こころの未来研究センターは、例えていえば更地の上に小さな家を建てたような研究組織でした。6年後、こうした最新の実験設備が整備され、国内外で先端研究を推進されている中堅、若手の研究者の方々をお招きして記念シンポジウムを開催できることを本当に嬉しく思います。さらに先日、WISH事業に参画する東京大学、北海道大学にもfMRI装置が整備されることが決まりました。本日、会場に来られている岡ノ谷一夫先生は、東京大学におけるWISHの中心メンバーです。こころの先端研究を推進する、それぞれに異なる個性を持った国内外の研究組織を結ぶこと、そしてまさに絆を生み出すこころの仕組み、絆が作り出す人間社会のあるべき姿を複数の大学の研究者が共同して研究すること、文部科学省の支援を受けながら、新しい研究の仕組みが一歩一歩作られつつあることを実感しています」と、話しました。


 挨拶の結びには、「人のこころのように、複雑で多様で謎に満ちた働きを科学的に解明するには、様々な役割を担う複数の組織からなるネットワークの共同作業が不可欠です。それはまさに人間の脳の仕組みと同じではないか、と考えます。こころの未来研究センターは、こうした大きな事業の一翼を担い、今後、この連携MRI研究施設から多くの研究成果を発信していきたいと考えています。会場に来られている皆様も、こころの未来研究センター連携MRI研究施設を、どうぞご自身の研究にご活用ください」と、連携MRI研究施設の重要性と、今後の展望を話しました。


P2163600.JPG 来賓のご挨拶として、澤川和宏 文部科学省研究振興局学術機関課長に代わり小坂井克也課長補佐より、次のようなご祝辞をいただきました。
 「21世紀を迎えた現代社会では、心の働きの不調から生まれる様々な問題に直面しています。こころの働きの科学的解明には、認知科学や社会諸科学との連携、さらには脳科学との共同研究の場が不可欠であると考えられています。こころの未来研究センターでは、こころと密接なつながりを持つ脳のデータを科学的に解析するために研究施設内にfMRI装置を導入され、心理学者や脳科学者などに開かれた学際的な共同研究施設として運用されており、人文科学と神経科学の融合による人の社会性に関する研究の発展に大きく貢献しておられます。さらに平成24年度補正予算により、北海道大学および東京大学にfMRI装置が導入されることにより、大規模集団実験と複数fMRI装置を連携した新たな研究の展開が期待されています。文部科学省としても、こころの未来研究センターが国内外の研究者コミュニティに開かれた研究拠点として、研究成果を広く社会に還元することで、こころについての科学的知識の普及を図るとともに、顕在化しているこころの問題の本質的解決へ向けた人材育成にも大きく貢献されることを期待しています。」


 続いて、井村裕夫 元京都大学総長・財団法人先端医療振興財団理事長からは、次のようなご挨拶をいただきました。
 「脳とこころの研究は、21世紀の生命科学に残された最大のフロンティアであるといえます。しかし脳は、その構造の複雑さのゆえに、また、現時点では少なくともこころは最終的に主観的にしか分からないゆえに、アプローチがきわめて困難な分野であります。それゆえにこそ、ゲノム科学、生化学、生理学、臨床医学、心理学をはじめとした様々な手法が研究に用いられています。MRI、特にfMRIが極めて有力な研究手技であるということは言うまでもなく、この度のセンター連携MRI研究施設の完成により、京都大学を中心とした脳とこころの研究が、新しい飛躍の足場を作ることができたのではないか、と思います。本日のシンポジウムでは、こころと社会の関係についての最近の研究が、脳科学の視点から議論されるものと考えております。第一線の研究者の方々から新しい知見を聴くことは大変愉しいことです。そういう意味で、私も愉しみにしてこの会にやって参りました。皆様も、このシンポジウムをおおいに楽しんでいただきたいと思っています。」


 その後、神経科学の第一線で活躍する6名の研究者らが登壇し、特別講演を行なっていただきました。定藤規弘先生(自然科学研究機構生理学研究所)、坂井克之先生(東京大学大学院医学系研究科)、本田学先生(国立精神・神経医療研究センター神経研究所)、Dr. Joan Chiao(Northwestern University, U.S.A)、Dr. Julie Grèzes(Ecole Normale Supérieure, France)、Dr. Shihui Han(Peking University, China)が、それぞれ最新の研究成果と活動内容を紹介しました。シンポジウム会場には、ポスター掲示も同時に行なわれ、休憩時間にはこれらを眺めながらの活発な会話と交流が見られ、盛況のままシンポジウムは終了しました。


 当日のプログラムと特別講演のアブストラクトは、こちらよりダウンロードしてご覧いただけます。


▽登壇者とシンポジウム風景
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京都大学ブータン友好プログラム第10次ブータン訪問団に千石真理研究員が参加しました

京都大学ブータン友好プログラムの第10次訪問団メンバーとして、千石真理研究員がブータンに滞在しました。訪問団の概要につきましては京都大学ブータン友好プログラムのページをご覧ください。


以下に、千石真理研究員のレポートを掲載します。


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 平成25年1月18日から28日まで、第10次ブータン訪問団として出張させていただきました。写真を添付して、要点を報告させていただきます。
 この度の訪問で最も重要だったのは、26日に行われたテインプー病院での保健省とのミーテイングに参加したことでした。ブータンは今年度、初めての医学部設立で検討を重ねています。ミーテイング中で特に印象に残ったのは、憲法で、西洋医学と伝統医療は対等であると定められており、それぞれの分野の医師が協力し合い、患者の治療にあたるということでした。さらに、近代化が進むブータンでは、かつてはなかった自殺者の問題が発生し、それに対応することも大きな課題だということです。
 また、日本人小児科医でテインプー病院勤務の西澤和子医師に病院内を案内していただき、サムテガン、テキアゴナ、ポプジカのBHU(Basic Health Unit)を訪問し、現地の医療事情について学ばせていただきました。
 その他、タシチョゾン、プナカゾン、メモリアルチョルテン記念碑、チミ・ラカン寺院等を訪れたこと、モテイタン動物園で国獣、ターキンを、ポプジカ谷でチベットからの渡り鳥、オグロヅルを観察したことも得難い経験となりましたが、サムテガンでのキャンプと民家宿泊は現地での生活を肌で感じられ、素晴らしい思い出となりました。
 ブータンの人たちは幸福だと言われますが、それは自然と共生し、生きとし生けるもののために祈るからであると私は実感しています。自分の欲望を満たすためだけでは、本当に幸福にはなれない。今回の旅で、改めてそう感じました。社会や家族の中の絆やつながりを考えると、日本が今、ブータンから学べることはたくさんあると思います。今後、京都大学が益々ブータンとの交流を深め、社会貢献につながる研究や、発信ができることを、期待しています。


Sengoku_BHU1.jpgサムテガンBHUにて Sengoku_Punaka1.jpgプナカゾンにて Sebgoku_mani1.jpgメモリアル・チョルテンのマニ車
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内田准教授の記事「文化心理学から見た日本文化と心」が『経済セミナー 2013年2・3月号』に掲載されました

130321keizai.png 内田由紀子准教授の記事「文化心理学から見た日本文化と心」が、日本評論社が発行する経済学系の隔月刊誌『経済セミナー 2013年2・3月号』に掲載されました。

 記事は、2012年8月に開催された「第9回行動経済学研究センターシンポジウム」での報告に加筆・修正を加えたもので、内田准教授は文化心理学者の立場から「文化と心」のかかわりについて、様々な研究事例を紹介しています。後半には大垣昌夫慶應義塾大学経済学部教授、大竹文雄大阪大学社会経済研究所教授とのディスカッションの様子も収められています。

【特集】文化と経済学
文化心理学から見た日本文化と心......京都大学こころの未来研究センター准教授 内田由紀子

文化と心はどのような関係にあるのか。ある文化において評価される価値やその文化において解釈される意味と、その文化に属する人々の心理傾向の間には、日常的なルールや習慣を介して密接な関連がある、との考え方を提示し、子育てや幸福感についての、文化心理学における研究事例を紹介する。

1.文化と心のかかわり
2.何を重視した教育か
  2.1 自尊心か、協調か
  2.2 絵本に見る文化差
  2.3 家庭内のルールの比較
3.幸福感の日米比較
  3.1 人間関係重視の日本
  3.2 「幸福の意味」
4.日本文化の心の変化
5.ディスカッション
  5.1 経済学における文化研究の位置付け
  5.2 個人間の幸福感比較に意味はあるか
  5.3 幸福度を高める教育とは
  5.4 幸福の追求に意味があるのか

(本誌記事より抜粋)


『経済セミナー 2013年2・3月号』
発行:日本評論社
雑誌コード: 03545
発刊日:2013.01.26
B5判 奇数月27日発売
定価:税込 1,300円(本体価格 1,238円)
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内田准教授による幸福感研究の解説記事が『心理学ワールド 60号』に掲載されました

 日本心理学会が発行する心理学関連情報誌『心理学ワールド 60号』に、内田由紀子准教授の解説記事が掲載されました。特集記事「幸福感 次のステージ」の巻頭記事として、「日本人の幸福感と幸福度指標」というタイトルで、内田准教授が取り組む幸福感研究の紹介と得られた知見を解説しています。

【特集】幸福感 次のステージ
「日本人の幸福感と幸福度指標」京都大学こころの未来研究センター准教授 内田由紀子

 幸福感についての研究が大きく取り上げられるようになってきた。それにともない、「幸福」というキーワードを核に、心理学、哲学、社会学、経済学、政治学など、幅広い社会人文科学の恊働が進んできていると感じる。内閣府では2010年から「幸福度に関する研究会」が発足し、2011年12月に指標案が発表された。(略)ブータンのGNH指標(国民総幸福度:Gross National Happiness)が世界的な注目度を集めるなど、幸福度指標を活用しようとする動きが大きなうねりとなっている。このような中で心理学ではどのように幸福感をとらえ、社会に貢献できるか。以下は筆者が内閣府の幸福度に関する研究会に参画していることで得られた見解を述べるとともに、文化心理学による幸福感の国際比較研究の知見を概観する。

(記事より抜粋)

 上記記事は、2013年4月10日頃より日本心理学会のウェブサイトで公開され、全文をお読みいただけます。


『心理学ワールド』
発行:公益社団法人 日本心理学会
発行月:年4冊発行(1月・4月・7月・10月)(季刊)
B5判
価格:500円(税込)〈別途送料1冊につき140円)
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鎌田教授の共著書『仏教は世界を救うか』が仏教タイムスで紹介されました

 鎌田東二教授の共著書『仏教は世界を救うか―"仏・法・僧"の過去/現在/未来を問う』(地湧社)が、宗教情報専門紙・仏教タイムス(3月7日付)の書評記事で紹介されました。

「本だな:仏教は世界を救うか 井上ウィマラ 藤田一照 西川隆 鎌田東二」

「仏とは誰か」「仏法は真理か」「仏教は社会に有用か」と、根源的な問いに4人は議論を重ねる。フリーランス神主でもある鎌田氏は「仏教は、世界の諸宗教の『サニワ(審神者)』になることができる」「『心直し』と『世直し』に活用できる実践智」とかなり好意的な発言。一方、他の3人は仏教界に身を置くためか、けっこう厳しい言葉も飛び出す。(略)しかし、皆が仏教のポテンシャルを力強く語り、現代におけるサンガの再構築や座禅・瞑想、あるいは震災後の仏教的ケアといった実践の重要性を確信している。(略)「真理」や「霊魂」の高度に哲学的な話も飛び出し、シンポジウムならではのライヴ感と熱気、知的興奮がびんびんに伝わってくる。

(掲載記事より抜粋)

 同書は、鎌田教授が理事長を務めるNPO法人 東京自由大学で2010年から2011年秋にかけて行なわれた連続シンポジウムでの議事録がまとまった一冊です。多彩な顔ぶれの講師らが仏教の根本を掘り下げ、仏教の功罪と可能性、未来をみつめた示唆に富む一冊です。


121227bukkyo.jpg『仏教は世界を救うか―"仏・法・僧"の過去/現在/未来を問う』
発売日:2012年12月1日
発行元:地湧社
定価:2,520円
ISBN 9784885032219
単行本・318頁
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河合教授の編著書『ユング派心理療法』と『ギーゲリッヒ 夢セミナー』が出版されました

河合俊雄教授の編著書二冊が出版されました。


130301kawai.png■『ユング派心理療法』(ミネルヴァ書房)――河合俊雄 編著

出版年月日  2013年03月01日
ISBN 9784623065752
判型・ページ数 A5・308ページ
定価 2,940円
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「気鋭のユング派分析家による最新の入門書。詳しい解説と事例で学ぶ。」

「発達障害」「解離」「摂食障害」......ユング心理学は現代をどう受け止めるか。
ユング派心理療法は現代の問題に実践的な光を当てる。「第Ⅰ部 解説編」では,歴史的背景を踏まえた理論的基礎をレクチャーする中で,今現在のこころの問題の源泉を探る。そして「第Ⅱ部 事例編」では,11の臨床事例を著者が鮮やかに読み解く。「内面」と「深層」についてのとらえ方が劇的に変わる一冊。

ミネルヴァ書房・書籍紹介より)

前半の「解説編」では、「1.心理療法という場と主体性」「2.近代の心理療法とユング心理学的アプローチ」「3.中間対象としてのイメージ」「4.物語と象徴」「5.物語と象徴以前・以後」「6.イメージとの関係」という構成から成り、ユング心理学の基礎を河合教授が解説しています。

後半は「事例編」とし、11の臨床事例が紹介され、河合教授が個々の事例に対してコメントしています。巻末には「ユング派心理療法を学ぶ人のためのブックガイド」と索引も掲載。ユング心理学の基礎から具体的な実践例までを網羅した一冊となっています。


130226kawai.png■『ギーゲリッヒ 夢セミナー』(創元社)――ヴォルフガング・ギーゲリッヒ著/河合俊雄編著/田中康裕編

出版年月日  2013年02月26日
ISBN 978-4-422-11560-3
判型・ページ数 A5・256ページ
定価 2,940円
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心理療法を行っていると、クライエントからの夢の報告が結構あるという。本書では、夢を非常に大切にするユング派のなかでも独特のアプローチで尊敬を集めるギーゲリッヒ博士の夢セミナーの記録を逐語録形式で紹介する。簡単な事例概要のほかには、ごく短い夢の記述があるのみ。それらの素材だけで進められるセミナーは、驚くほど深い洞察へと導かれる。なぜ、夢の記述だけでそうした洞察が生まれるのだろうか?そのプロセスを丁寧にたどる。

創元社・書籍紹介より)

本書の刊行にあたり、河合教授から次のような紹介コメントが寄せられています。

「ユング派分析家であるギーゲリッヒ博士のもとで行われた夢セミナーの記録です。ギーゲリッヒは、夢を現実での出来事や家族関係など、外的なものに還元するのではなくて、夢を「内から見て」、そのインパクトを治療に生かそうという方法論をとっています。わずかなクライエントの情報と、2つくらいの夢について徹底的に取り組んだセミナーの記録で、私がイントロダクションを書いています。」


本の目次など、それぞれの詳しい内容は、出版社のウェブサイトでご覧いただけます。

『ユング派心理療法』(ミネルヴァ書房)の書籍ページへ
『ギーゲリッヒ 夢セミナー』(創元社)の書籍ページへ

『農をつなぐ仕事』(内田由紀子、竹村幸祐 著)が毎日新聞「京都・読書之森」で紹介されました

 内田由紀子准教授と竹村幸祐連携研究員(京都大学経営管理大学院助教)の共著『農をつなぐ仕事 ~普及指導員とコミュニティへの社会心理学的アプローチ~』(創森社)が、毎日新聞京都版「京都・読書之森」(2月17日付)で紹介されました。毎日jpのウェブサイトで全文をお読みいただけます。

■京都・読書之森『農をつなぐ仕事』(内田由紀子・竹村幸祐著 創森社刊 1890円)

 本書では、農村コミュニティーで農業技術を指導したり、関係機関との連携や協同を促進する「普及指導員」の、コーディネート機能=「つなぐ」仕事に着目し、社会心理学的なアプローチによって、分析、考察している。2人の著者は京都大の若手研究者だ。
 農業についての知識もなく、読み進められるかという不安はすぐに消えた。扱われているのが、日本の社会で、どのように「つながり」が形成され、それはどんな意味や効果を生むか、といった普遍的な問いだからだ。むしろ、本書ではその答えを導くための、いわば「狂言回し」的役割を普及指導員が担っている、と読むこともできよう。

掲載記事(毎日jp)より抜粋)

『農をつなぐ仕事』は、昨年11月に出版。農業者をつなぐ普及指導員という職業にスポットをあて、心理学の視点と方法で「普及指導員が農村社会で構築するきずな」を検証し、その研究成果をまとめた一冊です。心理学や農業という枠にとどまらず、「つながり」「コミュニケーション」「ワザを伝える」といった人間の普遍的な知恵に通じるエッセンスが随所にちりばめられ、一般の方にもおすすめしたい一冊です。


no_wo_tsunagu.png『農をつなぐ仕事 ~普及指導員とコミュニティへの社会心理学的アプローチ~』
発売日:2012年11月19日
定価:1,890円(本体1,800円+税)
A5判・184頁
ISBN 978-4-88340-274-8 C0061
発行元:創森社
書籍の紹介ページ(Amazon.co.jp)へ

『農をつなぐ仕事』(内田由紀子、竹村幸祐 著)が3つの農業専門紙で紹介されました

 内田由紀子准教授と竹村幸祐連携研究員(京都大学経営管理大学院助教)の共著『農をつなぐ仕事 ~普及指導員とコミュニティへの社会心理学的アプローチ~』(創森社)が、日本農業新聞(2月24日付)、全国農業新聞(1月25日付)、農業共済新聞(1月16日付)で紹介されました。

■日本農業新聞(2月24日付)「普及と信頼の心理を探る 書評:学習院女子大学教授 荘林幹太郎」

――普及事業を事例にしているものの、心理学をベースにするというこれまでの農村の社会関係資本分析とは異なる視点で書かれた本書は、普及以外の部門にも多くの示唆を与えてくれる。(中略)普及や心理学についての知識がない読者も想定して、議論の厳密性を保ちつつ読みやすくする工夫が随所にちりばめられている。

■全国農業新聞(1月25日付)「『農をつなぐ仕事 ~普及指導員とコミュニティへの社会心理学的アプローチ~』(内田由紀子、竹村幸祐 著)

――2人の心理学者が、普及指導員を対象に行なった大規模調査から「普及指導員と農業者のきずな」について考察した書。(中略)農村社会ではつながりは絶対的なもの。その中で奮闘する普及指導員の考え方や取り組みを知るには絶好の書。

■農業共済新聞(1月16日付)「『農をつなぐ仕事』(内田由紀子、竹村幸祐 著)」

――心理学者の著者が農業改良普及指導員の実態調査などをもとに普及指導員の現状や農業者とのきずなを検証。普及指導員の本来の仕事と役割を浮き彫りにする。

(各紙記事より抜粋)


no_wo_tsunagu.png『農をつなぐ仕事 ~普及指導員とコミュニティへの社会心理学的アプローチ~』
発売日:2012年11月19日
定価:1,890円(本体1,800円+税)
A5判・184頁
ISBN 978-4-88340-274-8 C0061
発行元:創森社
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平成24年度こころを整えるフォーラム「観阿弥生誕680年世阿弥生誕650年記念―観阿弥と世阿弥の冒険―」が開催されました

 2013年2月17日、京都府/京都大学こころの未来研究センター共同企画 平成24年度こころを整えるフォーラム「観阿弥生誕680年世阿弥生誕650年記念―観阿弥と世阿弥の冒険―」が、京都市中京区の大江能楽堂で開催されました。


130217forum.png▽開催日時:2013年2月17日(日)13:00~16:30(12:30受付開始)
▽開催場所:大江能楽堂
▽プログラム
・13:00~13:05 開会挨拶 吉川左紀子(京都大学こころの未来研究センター長)
・13:05〜13:15 趣旨説明 鎌田東二 (京都大学こころの未来研究センター教授・宗教哲学・民俗学) 
・13:15~13:50 基調講演 「能の世界と苦悩の表現」観世清和(二十六世観世宗家)ナビゲーター:鎌田東二
・13:50~14:30 実演 舞囃子「敦盛」観世清和 
・14:30~14:50 休憩
・14:50~15:30 講演「能の発生とその時代」松岡心平(東京大学大学院総合文化研究科教授・日本文学・演劇)
・15:30~16:30 鼎談「観阿弥生誕680年・世阿弥生誕650年記念 観阿弥と世阿弥の冒険:伝統と革新」観世清和+松岡心平+鎌田東二(司会)


■100年を超える歴史の大江能楽堂で観阿弥・世阿弥の世界を探る

 こころの未来研究センターでは、京都府との共同企画で数々のシンポジウムを行なってきました。2013年は、100年の歴史を持つ大江能楽堂を会場とする初の試みで開催。観阿弥、世阿弥の流れを汲むシテ方五流の最大流派である観世流の二十六世観世宗家・観世清和師、能を中心とする日本の中世芸能・中世文学の研究者として活躍する東京大学大学教授の松岡心平氏を迎え、能の発生と起源伝承、観阿弥・世阿弥が生き抜いた時代、能の表現と創造性について、舞囃子の実演をまじえたダイナミックな内容で繰り広げられました。

 本シンポジウムの企画・ナビゲーターを務めた鎌田東二教授は開催の挨拶文で下記のように趣旨を紹介しています。

 これまで京都府との共同企画として、2008年11月に「平安京のコスモロジー」(創元社より2010年に『平安京のコスモロジー』として出版)、2009年11月に「遠野物語と古典――物語の発生する場所とこころ」(創元社より2011年に『遠野物語と源氏物語――物語の発生する場所とこころ』として出版)、2010年11月に「平安京と祭りと芸能」(報告書掲載、また創元社より2013年に創元社より出版予定)、2011年11月に「ワザとこころ-葵祭から読み解く」(報告書および『モノ学・感覚価値研究第6号』に掲載、2012年3月刊)、2012年11月に「ワザとこころPartⅡ 祇園祭から読み解く」(報告書作成中、2013年3月刊予定)と5回にわたるシンポジウムを開催し、歴史都市・京都に伝わる伝統文化を、世界観・物語・芸能などの観点から論議してまいりました。

 そして今回、これらの共同企画の延長で、シンポジウム「観阿弥と世阿弥の冒険」を開催する運びとなりました。本年は、観阿弥(1333~1384)生誕680年にして、世阿弥(1363~1443)生誕650年となります。その節目の年に、南北朝時代の混乱期を生き抜き、日本芸能史に新しい「複式夢幻能」という形式を確立していく観阿弥と世阿弥という2人の独創的な芸能者・芸術家の創造性の秘密とその「ワザとこころ」を探ることを通して、現代という混乱期を生き抜いていく知恵と活力と勇気を得たいと考えました。

 そこで、能(猿楽・申楽)という芸能が、源平の合戦を始めとする戦乱や生老病死や無常の世相を含め、どのように時代の「苦悩」を掬い上げ、表現しているかを、観世宗家・観世清和師と能研究の第一人者である松岡心平氏を迎えて探ってみたいと思います。

(開催趣旨全文はこちらからダウンロードできます)


 前半の基調講演は、演題 「能の世界と苦悩の表現」で観世清和 二十六世観世宗家のお話で始まりました。ナビゲーター役の鎌田教授から「宗家にとっての観阿弥、世阿弥とは」という質問が投げられると、「昨今、観阿弥、世阿弥に関する様々な研究がなされ論文や書籍も出ているが、私にとって流祖・世阿弥はより身近な存在」と話し、代々観世家に伝わる世阿弥自筆の能本『第六花修』をいかに守り通してきたか、宗家ならではのエピソードを披露されました。

 観阿弥と世阿弥の違いについては、世阿弥の室町幕府という北朝方の規範の中で能を確立したスタイルと、おおらかに表現した観阿弥との差異は明らかであるとし、観阿弥の代表作『自然居士』をにふれながら、両者の生きざまと時代性について臨場感たっぷりに話しました。また、世阿弥の生涯を振り返り、晩年の奈良への回帰を表す作品の数々や、佐渡に流された出来事の真偽について「流刑された」とする鎌田教授と小気味よく意見を闘わせるなど、エネルギッシュな宗家の語りに満員の会場のムードが高まりました。

 また、観世家が代々守り通してきた『風姿花伝』の話を皮切りに、特別な演目とされる修羅能『朝長』を紹介し、死者の魂を鎮め供養する能の役割について触れ、実演する『敦盛』の見どころについて、「ワキである敦盛を討ち取った熊谷直実が出家をした姿で現れたり、前シテが木こりを演じるという珍しい演目であり、今日お見せする舞囃子では敦盛が合戦前夜の酒宴を想起して舞い、敵であった直実に対して今は許し共に成仏しようという優しい願いが感じられる、そのような部分を見ていただきたい」と紹介。講演後、宗家による舞囃子「敦盛」の実演がありました。

 続いて、松岡心平 東京大学大学院総合文化研究科教授が「能の発生とその時代」という演題で講演を行ないました。13世紀とされる能の成立について、それ以前の11世紀からの「後戸猿楽」に源流があると提唱する松岡教授は、本年1月に出版された『能を読む(1) 翁と観阿弥 能の誕生』(角川学芸出版、2013/1/24)に所収された「翁芸の発生」を紹介し、猿楽から能へと至る流れについて、滑稽な時代を演じた「散楽・猿楽の時代」、修正会で寺院の後戸に詰めて乱声を担当した猿楽が「鬼」を演じて仮面を獲得したとする「後戸猿楽の時代」、仮面のパフォーマンスを確立した「翁猿楽の時代」、そして仮面演劇、複式夢幻能が成立した「能の時代」と、4つの区分をもとに当時の様子を生き生きと解説しました。さらに、今回のテーマである「能の苦悩の表現」について、「受苦、苦の瞬間『朝長』は、人間の苦をとてもリアルに描く、その源流として下衆猿楽の人たちが翁より以前に後戸猿楽で演じていた"鬼"につながるのではないか」と説明。壮大な歴史の中での能の位置付け、その起源について長年の研究成果からの深い考察と知見で聴衆を惹きつけました。なお、3月には前述の書籍第二弾『能を読む(2) 世阿弥 神と修羅と恋』が出版され、松岡教授は鬼と世阿弥についての稿を執筆しています。

 その後、登壇者3人による鼎談の時間となり、松岡教授の講演から続く形で「鬼と能」をテーマにディスカッションが始まりました。鬼を生涯のテーマとし、先の講演で出た『朝長』の最期に先祖が立ち会ったという鎌田教授の話を受け、宗家はシンポジウムのポスター(右上の画像)に登場する赤鬼(しゃっき)、黒鬼(こっき)の能面を紹介しながら、これらが代々観世家の「怨念」を納めているという本面たんすに翁面と共に収められていると話し、観世家と鬼の強い関係について語りました。その話に対し、鎌田教授からは天河弁財天社における鬼の祭祀について、松岡教授からは前述の本面たんすに収められた能面の順序が、翁が最も上ではなく鬼が上だという話から「やはり能の発生源として翁猿楽よりも鬼が出る後戸猿楽があるのでは」と自説との関連についての考察が出て場が盛り上がりました。また、能面に続いては囃子で用いられる楽器についての話題へと移り、鎌田教授は、能管が雅楽の笛では出ないひしぎの音の独自性について、死者の魂を呼び鎮める古来からの石笛に繋がるものでは、という考えを示しました。そこから発展し、宗家による海外で囃子を聞いた外国人からの「かけ声」に対する驚きの反応や、役者として能に登場する囃子方とオーケストラとの違いなどを紹介、さらに能面の持つ役割や鬼の面、女性面をつける際の精神、肉体のあり方、『翁』『三番叟』などに通ずる宗教性など、興味深いエピソードの数々が語られ、終始、会場は熱気で溢れました。

 シンポジウムの締めくくりとして、観世宗家は東日本大震災後における鎮魂供養のための活動に触れ、「天下太平、国土安穏だけではなく、やはりいま生かされている、あるいは亡くなられた方々に対する供養ということを忘れてはいけないと思い、演じている。さらには未来に向かって明るい日本、美しい日本のための祈りの心を持ち続け、脈々と伝わる伝統を守り引き継ぎながらも、多くの皆様に能を観ていただくための能を日々考えている。どうか、皆様にはお気軽に能楽堂へ足を運んでいただき、自由な雰囲気でお能に接していただきたい」と話し、会場は大きな拍手で包まれ、鎌田教授の結びの法螺貝をもって、シンポジウムは終了しました。


▽シンポジウムの様子
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大江能楽堂のHPはこちら
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シンポジウム「日本の聖地文化~相模国一宮寒川神社と延喜式内社研究」が開催されました

 2013年2月27日、シンポジウム「日本の聖地文化~相模国一宮寒川神社と延喜式内社研究」が稲盛財団記念館3階大会議室で開催されました。本シンポジウムは、こころの未来研究センター 鎌田東二教授が研究代表を務める「癒し空間の総合的研究」プロジェクトにおける研究成果発表の場として開催。2012年3月に出版された『日本の聖地文化――寒川神社と相模国の古社』に収録した内容について、それぞれの研究者が最新の知見をまじえて紹介しました。また、寒川神社宮司の利根康教氏、寒川神社禰宜で方徳資料館副館長を務める加藤迪夫氏をコメンテーターとしてお迎えしました。


130227seichi.png▽日時:2013年2月27日(水)13:00~17:00
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽主催:京都大学こころの未来研究センター「癒し空間の総合的研究」プロジェクト(研究代表:鎌田東二)
▽プログラム
第一部『日本の聖地文化――寒川神社と相模国の古社』(鎌田東二編著、創元社、2012年3月刊)からの提言 13時~15時30分
話題提供者:原田憲一、中野不二男、五反田克也、湯本貴和、河角龍典 ※登壇者の所属・肩書・専門は下記書籍の目次を参照ください
司会:鎌田東二
第二部 総合討論「日本の聖地文化と寒川神社と延喜式内社研究」15時45分~17時
コメンテーター:加藤迪夫(寒川神社方徳資料館副館長・寒川神社禰宜)+話題提供者

seichi_hon.png『日本の聖地文化――寒川神社と相模国の古社』鎌田東二編著、創元社、2011年3月刊

序 章 パワースポット・ブームと聖地文化 鎌田東二(京都大学こころの未来研究センター教授・宗教哲学・民俗学)
第1章 相模の国の地質と古代 原田憲一(前京都造形芸術大学教授・現在:NPOシンクタンク京都自然史研究所特別研究員・地球科学)
第2章 相模の国の花粉分析 五反田克也(千葉商科大学准教授・花粉分析)
第3章 相模湾の海水準と宇宙人文学 中野不二男(JAXA主幹研究員・京都大学宇宙総合学ユニット特任教授・宇宙人文学)
第4章 相模の国の生態系と古代遺跡 湯本貴和(前総合地球環境学研究所教授・現在:京都大学霊長類研究所教授・生態学)
第5章 相模の国と寒川神社周辺の地理学的考察 河角龍典(立命館大学文学部准教授)
第6章 縄文中期最大の住居跡・岡田遺跡と寒川神社 小林達雄(國學院大學名誉教授)
第7章 寒川神社と相模国の古社の歴史と民俗 鎌田東二
終 章 関東地方の聖地文化 鎌田東二


■多角的な視点から総合的に「癒し空間」「聖地文化」を研究

 シンポジウムの第一部では、「『日本の聖地文化――寒川神社と相模国の古社』(鎌田東二編著、創元社、2012年3月刊)からの提言」として、プロジェクトに参画した研究者達が一堂に会し、本にまとめたこれまでの研究成果を発表しました。

 「癒し空間の総合的研究プロジェクト」の要(かなめ)的な位置付けにある相模国一之宮 寒川神社は、方位除・八方徐で全国唯一といわれ、年間参拝者数200万人を超える関東を代表する神社です。平安時代の『延喜式』によれば、相模国の古社13社の中でもとりわけ格式の高い社格に位置づけられています。

 冒頭、登場した鎌田教授は、寒川神社を中心とする縄文寒川文化圏や方位信仰、延喜式内社を多角的に調査したプロジェクトの歩みを説明。寒川神社が2009年に開設した方徳資料館が方位信仰に関する研究を開始するにあたり、鎌田教授に声がかかったエピソードなども紹介し、「プロジェクトは人々に安心や救済をもたらす『癒し空間』の役割を多角的に解明することを目的とし、様々な手法で総合的に研究を進めてきた。宇宙空間からの衛星データに基づいて、延喜式内社が時代毎の海水準とどのような関係になるかを調べるなど、科学的なデータをもとに、日本の聖地である神社の歴史的・環境的位置関係の推定に取り組んだ。京都をひとつのめやすとして、寒川神社のある相模の国の癒し空間までを研究することにより、癒しと救済がどのようにおこなわれていたかを総合的に研究した成果の全てをまとめたのが本書である」と、『日本の聖地文化~相模国一宮寒川神社と延喜式内社研究』の意義について語りました。

 また、2011年の東日本大震災や和歌山での洪水被害がプロジェクトに与えた影響についても説明。「震災後は4度に渡り、現地の被災状況とそこにおける延喜式内社を含む神社仏閣の調査を行なった。浸水線ギリギリのところで津波被害の難を逃れ、震災後に人々の救済の場として役割を果たす神社や寺を訪問調査したことで、聖地が人々の安全を守り救う役割を果たしたことが分かった。間もなく5度目の調査に行き、震災があった3.11には被災地の海でみそぎを行ない、この時季の冷たい水に自ら浸かることで、被災地の問題を実感的に捉えていきたい。また、もうひとつ重要なポイントとして、神事によって神をなぐさめ人々を悦ばせる神楽など、人々の力を内側から活性化させる力が芸能にある。東日本大震災では石巻市の雄勝法印神楽の復興を目の当たりにし、芸能の力を実感した。今回のプロジェクトは、災害も含めた自然との関係性も対象としながら自然科学の方法を駆使し、神社の持つ機能を追究してきた」と語りました。

 本書の章順に行なわれたプロジェクト成果発表では、原田憲一 前京都造形芸術大学教授・現NPOシンクタンク京都自然史研究所特別研究員が「相模の国の地質と古代」、五反田克也 千葉商科大学准教授が「相模の国の花粉分析」、中野不二男 JAXA主幹研究員・京都大学宇宙総合学ユニット特任教授が「相模湾の海水準と宇宙人文学」、湯本貴和 前総合地球環境学研究所教授・現京都大学霊長類研究所教授が「相模の国の生態系と古代遺跡」、河角龍典 立命館大学文学部准教授が「相模の国と寒川神社周辺の地理学的考察」について、それぞれ報告しました。

■神社、研究者が力を出し合い研究成果へ

 第二部では、はじめに2本の資料映像「方位信仰と平安京」「寒川神社と相模國の聖地文化」が上映されました。プロジェクト研究の基本知識を網羅した映像を視聴したのち、第一部の発表者とコメンテーターによる総合討論・質疑応答が行なわれました。

 コメンテーターとして登壇した寒川神社方徳資料館副館長・寒川神社禰宜の加藤迪夫氏は、「このような形で神社と研究者が力を出し合い成果を上げたことは、神社界としても新たな方法であり先見の明があるといえる」とコメント。学問調査対象としても注目される寒川神社の調査をさらに深め、神社の歴史と謎を紐解いていきたいと話しました。

 活発な質疑応答が行なわれた第二部の締めくくりとして、寒川神社宮司の利根康教氏より挨拶があり、「寒川神社では、地域への還元事業として病院、老健施設、結婚式場を運営している。こうした社会活動の一環として、本プロジェクトでは3年間、先生方に寒川神社と相模国について研究を行なっていただいたが、地質学や宇宙物理学などの側面から神社を調査する手法に驚くと共に、様々な現象に対して子細に調べ上げる研究者の取り組みに感心した。素晴らしい試みに感謝申し上げたい」との感想がありました。

 最後に鎌田教授は「長時間に渡って最新の研究成果をふまえた有意義な会を持つことができた。今回のプロジェクトの成果として本書があり、この本をふまえてシンポジウムを開催できた。これに続いて第二弾、第三弾と調査研究を進化させていきたい」とさらなる研究の発展へと意気込みを語り、シンポジウムを終了しました。


▽発表者・コメンテーター・シンポジウム風景
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寒川神社のHPはこちら
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「『心のケア』で果たす宗教者の役割」ベッカー教授のインタビューが中外日報に掲載されました

 カール・ベッカー教授のインタビュー記事が中外日報(2月9日付)に掲載されました。東日本大震災後の日本で課題とされる大切な人をなくした遺族の心のケアを中心としたテーマで、宗教儀式、傾聴の大切さと宗教者の役割について具体的な事例を挙げて語っています。

IMG_6068.JPG■「心のケア」で果たす宗教者の役割―相手の心を癒やすこと 京都大大学院教授 カール・ベッカー氏に聞く

 東日本大震災から2年近くの歳月が過ぎようとしているが、愛する人たちを失った人々や不自由な避難生活を強いられ続けている被災者の心のケアが今後の大きな課題だと言われている。またいじめや体罰、自殺、貧困など肉体だけではなく心を蝕む現代社会の病巣を数え上げればきりがなく、われわれの生活はストレスとの闘いの日々でもある。「心の時代」とは程遠いこのような時代に、宗教、宗教者の果たすべき役割について、京都大大学院教授のカール・ベッカー氏の意見を聞いた。

(記事より抜粋/中外日報 2013.2.9 5面「論・談」)


記事本文を中外日報ウェブサイトでお読みいただけます。

■中外日報 宗教・文化の新聞 since 1897 論・談
http://www.chugainippoh.co.jp/ronbun/2013/0209rondan.html

河合教授の共著論文が『心身医学』に掲載されました

130228shinshinigaku.png こころの未来研究センター 河合俊雄教授の共著論文「甲状腺疾患の心身医療」が『心身医学』53巻第1号に掲載されました。


深尾篤嗣・高松順太・河合俊雄・宮内昭・花房俊昭(2013)「甲状腺疾患の心身医療」『心身医学』53(1),42-50.


■論文紹介
 甲状腺疾患は、頻度の高い代表的な内分泌・代謝疾患ですが、心身相関が問題になる例が多いことが知られています。こころの未来研究センターの「甲状腺疾患におけるこころの働きとケア」プロジェクトでは、臨床心理学の立場から、甲状腺疾患における心理的機序について研究してきました。
 本論文では、これまでの調査研究・臨床研究の成果を紹介し、主体性という視点から考察しています。「本症患者の心理臨床において、病気になったのは因果ではなくて、縁とみることにより,患者自身の生き方を考え直していくことにつながっていく」という知見を提示しています。


■【月刊】心身医学 53巻 1号
https://www.miwapubl.com/products/detail/1401

■医学論文ダウンロードサイト「メディカルオンライン」心身医学 53巻 1号
http://mol.medicalonline.jp/archive/search?jo=cv6jpsym&ye=2013&vo=53&issue=1

内田准教授の論文が『International Journal of Wellbeing』に掲載されました

130228uchida_journal.png こころの未来研究センター 内田由紀子准教授の論文(英語)が『International Journal of Wellbeing』に掲載されました。幸福の感じ方である「幸福感」と幸福の意味そのものである「幸福観」が文化とどのようにかかわっているのかについて、これまでの実証研究をレビューした論文です。


Uchida, Y., & Ogihara, Y. (2012). Personal or interpersonal construal of happiness: A cultural psychological perspective. International Journal of Wellbeing, 2(4), 354-369. doi:10.5502/ijw.v2.i4.5



Cultural psychological research reveals considerable variation in how people construe happiness and experience subjective wellbeing. This paper identified substantial cultural differences in (1) meanings of happiness, (2) predictors of happiness, and (3) how social changes such as globalization are related to happiness. In European-American cultural contexts, happiness is construed as including experience of a highly desirable and positive emotional state defined in terms of a high arousal state such as excitement and a sense of personal achievement. Moreover, individual happiness is best predicted by personal goal attainment and high self-esteem or self-efficacy. In contrast, in East Asian cultural contexts (i.e., those found in Japan), happiness is construed as including experience of both positive and negative emotional state. Happiness is defined in terms of experiencing a low arousal state such as calmness and interpersonal connectedness and harmony. Furthermore, individual happiness is best predicted by relationship harmony and emotional support from others. While people maintain traditional cultural norms, some societies and organizations are under pressure from globalization and this might affect happiness. We examined how cultural change affects wellbeing, especially focusing on current Japanese contexts where individuals have experienced an increasing shift toward individualism and have experienced a large national disaster. Cultural psychological perspectives regarding happiness provide important contributions to psychological science and society at large.

( ABSTRACT )


オンラインジャーナルにより全文をお読みいただけます。下記リンクにアクセスのうえ、PDFを開いてお読みください。

論文(英語)はこちら(『International Journal of Wellbeing』)
http://www.internationaljournalofwellbeing.org/index.php/ijow/article/view/139/268