第8回京都大学ブータン研究会の報告

【イベント名】第8回京都大学ブータン研究会
【日時】 2013年12月5日(木)17:00~18:30
【場所】 京都大学こころの未来研究センター(稲盛財団記念館2階)225会議室
【発表者】 永澤哲氏(京都文教大学 総合社会学部 准教授)
【講演題目】「浄土のために踊ること―第二次ドゥアル戦争とドチュラ祭―」

【概要】
 ブータンといえばGNH(国民総幸福)が思い起こされますが、この理念の背景にはブータンの伝統的な思想、とりわけ仏教思想が存在しています。ブータンという国の理解にはブータンの仏教を理解しておく必要があります。今回は、チベット密教の専門家(仏教学・文化人類学)である永澤哲氏に、2003年の第二次ドゥアル戦争とドチュラ祭との関係についてお話を頂きました。
 ブータンは1990年代後半より、ブータン南部に立て籠もっていたアッサム分離・独立派ゲリラに対し、再三の退去要求をしていましたが要求は受け入れられませんでした。2003年にはインド側からゲリラ掃討に関する最後通牒を受けたことで、アッサムゲリラの国外一掃軍事作戦を行いました。しかし、非暴力・不殺生を掲げる仏教的倫理観と、この軍事行動との狭間で、ブータンは大きなジレンマを抱えるに至りました。戦争後、勝利パレードなどは一切行われず、ドチュラ峠には、ゲリラ側およびブータン側の戦没者慰霊のため仏塔が建立され、ドチュラ祭が行われるようになりました。
 本ご発表では、戦争に至る経緯やその後の展開について時系列にご解説頂いたのち、ドチュラ祭で行われている踊りについても詳細に解説をして頂きました。会場からは、ブータンにおける仏教の位置づけや、経典や踊りの浸透具合や理解度などについて多岐にわたる質問がなされました。
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