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第1回こころを整えるフォーラム「沖縄久高島と京都の中学生の『地元文化自慢授業』」が開催されました

 10月20日、第1回こころを整えるフォーラム「沖縄久高島と京都の中学生の『地元文化自慢授業』」が京都大学稲盛財団記念館大会議室で開催されました。
121020poster.png▽開催日時:2012年10月20日(土)13:00~17:00
▽開催場所:京都大学 稲盛財団記念館3階大会議室
▽プログラム
13:00-13:20 趣旨説明(鎌田東二 こころの未来研究センター教授)
挨拶:兼島景秀(沖縄県南城市立久高小中学校長)
13:20-14:10 久高中学校(沖縄県南城市久高島)の生徒による「島自慢授業」
14:10-15:30 西賀茂中学校(京都市北区)・和知中学校(京都府船井郡京丹波町) の生徒による「地元文化自慢授業」
15:30-15:45 休憩
15:45-17:00 ディスカッション
コメンテーター:やまだようこ 京都大学名誉教授・立命館大学特別招聘教授(発達 心理学)
司会:鎌田東二(宗教哲学・民俗学)
閉会挨拶 新宮雅之(京都府京丹波町立和知中学校長)
【特別関連企画】
10:30~12:00/記録映画上映「久高オデッセイ第二部 生章」(大重潤一郎監督作 品)
 京都府とこころの未来研究センターの共同企画として開催した本フォーラムでは、初めての試みとして、「神の島」として尊崇される沖縄県の久高島で、島民と共に伝統文化を守り続けている久高中学校と、地元の伝統的な祭りを守る活動を行っている京都市立西賀茂中学校、芸能の伝承を担っている京丹波町立和知中学校の三校の生徒が集い、「地元文化自慢授業」と称して、地元文化の実演発表等とディスカッションを行いました。
 開催の趣旨と経緯について、京都府と共にフォーラムを企画し、当日の司会進行を務めた鎌田東二教授はこのように紹介しています。
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「この催しは、1年以上の準備を経て開催にこぎつけました。昨年9月に行われた久高 島の大運動会(幼稚園・小学校・中学校・島民全員参加)にやまだようこ先生(京都大学名誉教授)ともども参加し、兼島景秀久高小中学校長先生や久高島留学センター代表の坂本清治先生とお話しする中で、今日の催しの基本構想が生まれてきました。
 いじめや不登校や無気力など、学校現場を浸食している教育の諸問題を解決してい く糸口の一つとして、生徒本人が生活しているそれぞれの地域の「地元文化」をどう捉えるかは、問題解決にすぐにはつながらなくても、重要な糸口になるはずだと考えます。なぜなら、それによって、生徒自身が、自分自身の立ち位置や、自分たちの家族や、 共同体や社会の歴史と現実を深く見つめ、考えていくきっかけとなると思うからです。そして何よりも重要なのは、この社会を、この世界を構成しているのは、自分た ちだけでなく、いろいろな人々、もの、いのち、環境あってのことと、他者を理解し 大切に思う心を育む機会になると確信するからです。「地元文化」に対する深い関心と愛情と誇りなしに、「他文化」に対する深い理解と 尊敬心は生まれにくいのではないでしょうか?
そんなことを考えながら、本日の催しに取り組んでまいりたく思います。」
(当日の配布資料より)
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 第一部では、鎌田教授による趣旨説明の後、兼島景秀 久高小中学校長の挨拶があり、久高島中学校生徒と先生らによる「地元文化自慢授業」が始まりました。
 はじめに引率担任で琉球舞踊の名手である大城寿乃先生が琉球古典舞踊「かせかけ」 を披露し、会場が一気に沖縄ムードに包まれました。その後、生徒みずからの手によるパワーポイントでの久高島紹介があり、生徒がお面をかぶって踊る「あぶじゃーまー」、琉球空手の実演、ダイナミックなエイサーが披露され、ラストは会場の参加者を巻き込んでのカチャーシーで盛り上がりました。
 続いて西賀茂中学校の生徒が、地元の上賀茂神社との繋がりを紹介し、職場体験プロジェクトで習った「神楽(かぐら)」の舞を披露したほか、東日本大震災を機に始まった福島県いわき市立小名浜中学との交流活動を紹介。「東日本に元気と笑顔を」というキャッチフレーズで大規模な募金活動やビデオレター交換、Tシャツ制作など被災地を支援するために元気に活動する様子を伝えました。
 第一部最後には和知中学校が登場。ハッピを着た生徒らによる和太鼓の演奏で始まり、激しい動きと共に見事な太鼓の音が会場全体に響き渡りました。パワーポイントでは四季折々の和知の様子が紹介され、京都府指定無形民俗文化財となっている和知人形浄瑠璃を生徒らが地元の人々の指導のもと、昨年の国民文化祭での上演に向けて必死に取り組む活動の様子が、臨場感あふれる写真説明とビデオで紹介されました。
 第二部では、各校の生徒によるディスカッションが行われ、冒頭で挨拶に立ったコメンテーターのやまだようこ京都大学名誉教授が「久高中の発表は、自分たちの文化を誇りに思いながら世界に発信する力を感じた。伝統文化が血肉となっている。西賀茂中は、自然への感謝や祈りと、東日本大震災の被災地への取り組みを繋げて発表し、その大切さを私たちに教えてくれた。和知中は、人形浄瑠璃や和太鼓の迫力や、発表のなかでの『和知が好き。誇りに思う』という言葉がとても良かった。(イベント全体を通じて)自分たちの地域や文化を誇りに思い、他文化、他地域と交流して世界に開いていくことが大切だ」と感想を述べ、米心理学者のエリクソンが作った「Generativity=ジェネラティビティ(次世代へと繋ぎながら、価値を生み出す行為に積極的にかかわっていく、という意味)」を引用しながら、「3校の発表から、伝統を継承し次へ伝え、新しいものを生み出しながら、生きる力も生み出す、そんな良い循環を感じた」と感想を述べました。
 鎌田教授の進行のもと行われたディスカッションでは、各校の生徒が自分たちの発表の感想や、他校の発表を見て感じたこと、やまだ名誉教授からの「なぜ伝統を守りたいと思うのか?」といった質問に対する意見を活発に発言しました。「久高島のエイサーはとてもカッコ良かった。自分たちの太鼓にも取り入れたい(和知中学)」「自分たちの発表は、他校ほどダイナミックではなかったが、祈りや自然への感謝の気持ち、被災地への支援活動などは独自のものだと再確認した(西賀茂中学)」「沖縄の伝統行事は、僕たちの祖先が大事にしてきたもの。僕たちの代でそれをなくしたくない。これからも後輩に伝えていきたい(久高中学)」など、各校がそれぞれの思いを熱く語っていました。
 来場した参加者もマイクを取り感想を述べました。過疎が進む久高島の再生をめざして設立され、島の活性化に貢献する山村留学センターの坂本清治さんが、「このようなフォーラムが実現して嬉しい。全国の限界集落といわれる場所の状況が年々厳しくなっているなか、地元と外部の人が繋がっていく取り組みが大切だと感じている。中学生の皆さんは今日のフォーラムで出会った人、関心を持ってくれた人と関わっていくことで、次の社会を作り出してほしい」と話しました。
 フォーラムの締めくくりにあたり、西賀茂中学校の西田教頭は「京都には数多くの伝統文化があるが、あるのが当たり前という感覚になっているところがある。今回、あらためて伝統を足もとから見直す機会が得られたのではないか」とコメント。和知中学の新宮校長は、「今日はこころを整えるというテーマについて考えてきたが、生徒たちが一生懸命取り組み、発表した伝統芸能は、今後も途絶えることなく自然と調和しながら、世代から世代へと引き継がれるべき日本の誇れる文化だと思う。この文化が継承されていくことが日本の未来を支るものと信じています」とフォーラムを総括しました。
 鎌田教授は、フォーラムを終えた感想として、このようにコメントしています。
「こころの未来研究センターは、その名の通り、豊かな “こころの未来” を創造していくというミッションを持っていますが、研究方面からだけでなく、さまざまな社会実践や社会教育活動と連携しながら “豊かなこころの未来” を創造していくことも大事な仕事の一つだと考えてます。とりわけ、今回、14~15歳の、本当に打てば響く年齢の少年・少女たちに “こころを 整え、練る” 機会と場と環境を提供できることがどれほど重要ですばらしいことか、 改めて強く感じました。これを機に、さらに構想をあたため、何らかの形で、継続していくことができれば “豊かなこころの未来づくり” に少しでもお役にたつことができるのではないかと、 一層気を引き締めて頑張っていきたいと思います。」
▽フォーラムの様子
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 こころの未来研究センターでは、引き続き京都府との連携により地域と文化、学際研究と社会を結ぶ様々な取り組みを行って参ります。
 次回の京都府との共同企画シンポジウムは、「ワザとこころ パートⅡ ~ 祇園祭から読み解く」というテーマで11月25日(日)に開催します。
ご案内はこちら

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