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日本的群島文明の生命観・・・新しい地球倫理に向けて

研究課題      日本的群島文明の生命観・・・新しい地球倫理に向けて

研究代表者     小倉紀蔵    京都大学大学院人間・環境学研究科 教授

申請者は2013年に『新しい論語 』(ちくま新書)をさらに2020年に『群島の文明と大陸の文明』( PHP 新書)を刊行した。これらの本で提唱したのは、〈第三の生命〉という新しい概念であった。その意味は、以下の通りである。人類がこれまで明確に認識してきた生命は、大きく分けると ①肉体的・生物学的生命と、②霊的・宗教的生命の二種であった。いま、これら二つの生命観をそれぞれ 〈第一の生命: the first life 〉 、〈第二の生命:the second life 〉 と名づけることにする 。われわれが日常的に「生命」と呼んでいるものは前者であり、キリスト教における永遠なる「霊のいのち」は後者の代表的な例である。 だが申請者は、もうひとつの別の次元の多様な生命観を人類精神史の中から抽出し、それらをまとめて〈第三の生命:the third life 〉 と名づけた。
〈第三の生命〉とは、生物学的生命でも霊的生命でもない〈いのち〉である。これは日本に固有なものではなく、世界のどの文明・文化でも見出される。だが 日本的なアニミズム の世界観において 特に顕著な現われ方をする 。それは、 偶然性・偶発性に支配された、関係性のなかで立ち 現われるか立ち現われないか予測できない〈 あいだの いのち〉 である。この新しい生命観にもとづくことによっ て、人類が直面している生命倫理・地球倫理 など現代の現実的課題に対する新しい視座の開発 をすることが、 本研究の目的である。これらの諸問題に取り組む際に、わたしたちは いまだに、 西洋近代的な生命観・人間観を自明なものとして設定したのちに考察を始めるという作業から抜け出しえていない 。本研究ではその出発点自体を疑問符でくくることにより、日本発の 群島的人間観・生命観による生命倫理・地球倫理への接近を試みる。

2021/06/15

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