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東洋の山水画の伝統と今日の心理療法

研究課題      東洋の山水画の伝統と今日の心理療法

研究代表者     田中康裕    京都大学大学院教育学研究科 教授

(1) 研究目的
 風景、あるいは、風景画の歴史は、その民族や文化に固有の意識のあり方を反映している田中2017b;Tanaka, 2021。16世紀頃に生まれた西洋の風景画とは別に、東洋には、山水画と呼ばれる風景を描く伝統が1 0世紀頃から あり、その後、12世紀頃、鎌倉時代に禅仏教とともに日本に入り、「 画聖 」とも称される雪舟等楊(1420-1506)において一つの完成をみた。
本研究では、西洋の風景画の「 線的遠近法 」とはまったく異なる、東洋の山水画の「 多重遠近法 」それ自体、あるいは、それを用いた山水画の描法には、どのような意識のあり方が表されているのか、さらには、雪舟によって独自の発展を遂げた日本の山水画には、ひいては日本的な風景には、どのような特徴があるのか、そこに実現されていた「 内包性 」とはいかなるものであるのかを明らかにする。さらには、このような日本的な風景のあり方を歴史的な推移においても考察し、上記の「内包性を失ったとも言える今日、われわれ日本人のこころは、どのような様相を呈しているのか、心理療法はそれにどのようにかかわることが可能なのかについて論考を深めたい。この研究に当たっては、とりわけ、雪舟の山水画に焦点を当てることになるが、それだけではなく、彼が遺した雪舟庭 と呼ばれる「 庭 」も考察の射程に入れることとする。
(2) 期待される効果
東洋的な山水画や禅庭を通して、西洋で生まれた心理学、あるいは心理療法とはまた異なる東洋的な心理学・心理療法のあり方について論じることは、「 東洋知 」の今日的な展開について具体的な形で論考することを可能にするものと思われる。また、そこに見いだされる日本的な風景は、われわれにとって古くて新しいものであり 、それについて検討することによって、自らのこころの基盤を確かめ、未来への一つの展望をもつことができる だろう。

2021/06/15

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