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オンライン空間で生まれる政策コミュニティの可能性インドネシアの事例

研究課題      オンライン空間で生まれる政策コミュニティの可能性インドネシアの事例

研究代表者     岡本正明    京都大学東南アジア地域研究研究所 教授

共同研究者     亀田尭宙    国立歴史民俗博物館 特任助教

本研究においては、インドネシアの35自治体を事例として、どういった政策分野において、オンライン空間で政策コミュニティが生まれるのか、そして、そうしたコミュニティが地域社会にとってどういう意味を持つのかを明らかにする。
どの新興国においても急速なデジタル化が進み 、フェイスブック、ツイッター、インスタグラム、微信、ラインなどのソーシャルメディアで何らかのイシューや出来事について発言することは当たり前になっている。
東南アジアについては、オンライン空間が公共生活との関わりで最も活性化するのは選挙のときであり、候補者を取り巻くコミュニティ間で激しいサイバー選挙戦が展開する。それでは、もう少し日常的な自治体が行う行政サービスについてのソーシャルメディア上の発言はどうなのであろうか。東南アジアに関する限り、大半の国が地方分権化を試みており、少なくとも建前では地方ガバナンスへの住民参加の必要性が訴えられており、ソーシャルメディアを通じた参加も重要なはずである。また、急速に進む都市化が生み出す渋滞や大気汚染などさまざまな問題に対処するために、IOTを利用したスマートシティづくりが急ピッチに進められており、ますますサイバー空間における市民の声の重要性は高まってきている。 しかし、選挙に関するソーシャルメディア研究はあっても、地方ガバナンスのソーシャルメディア研究は先進国でもまだ少ない。
こうしたことから、東南アジアの中でも民主主義が比較的安定しており、分権化も進んでいるインドネシアの公共サービスをめぐるオンライン・コミュニティに着目したい。ソーシャルメディアでの発信が多い自治体、社会的亀裂が深く課題の多い自治体、合計35自治体を選択して、コロナ感染症対策も含め、自治体が担うべき政策分野に関するソーシャルメディア上の発言を分析して、政策分野ごとにどういった政策コミュニティがサイバー空間上で見られるのか、あるいは、全く見られないのかを検討してみたい。ソーシャルメディアのプラットフォームとしては、アクセスがオープンで世論喚起能力が高く、インドネシアの生産年齢人口のインターネット利用者 のうち、6割が利用しているツイッターを分析対象とする2021 年1月現在。
仮説としては、地方ガバナンスのなかでも喫緊性の高いコロナ感染症対策や地方エリートの汚職取締といった喫緊性が高かったり、センセーショナルなテーマでは多様なアクターによる政策コミュニティが作られる一方、教育や住宅政策については限定的なアクターによる狭いコミュニティが形成されているというものである。そして、後者ほど少数者の発言が政策変更につながるというリスクが高いと考えている。

2021/06/15

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