起業家と研究者との対話記録法の有用性の評価:企業で働く人びとのウェルビーイングを目指して
研究課題 起業家と研究者との対話記録法の有用性の評価:企業で働く人びとのウェルビーイングを目指して
研究代表者 伊藤智明 京都大学経営管理大学院経営管理研究部 特定助教
本研究プロジェクトの目的は、起業家と研究者との対話記録法の有用性を企業で働く人びとのウェルビーイングの視点から評価することにある。企業を新たにつくろうとする起業家には二面性がある。一方で、経済的動機や承認欲求に過剰に駆動されやすく、自己や他者のウェルビーイングに悪影響を及ぼし得る主体としての側面である。他方で、特別な他者と対話し、省察し続けることで、経済的動機以外の自らの価値評価の基準(自らがつくる企業の社会的使命など、企業で働く人びとのウェルビーイングにつながりやすい価値評価の基準)を提示できる主体としての側面である。
申請者が開発してきた起業家と研究者との対話記録法は、起業家が経営学分野の研究者を含む他者と交流しながら、自らの価値評価の基準を自覚し、修正するための手法であり、人と組織のウェルビーイングの実現に資する手法になり得るものである。この手法を用いることで、起業家は経営学分野の研究者と継続的に対話し、その対話の逐語記録が蓄積されることになり、自らの価値評価の基準を自覚し、修正するための省察の機会を心理的な安全性が担保された中で得られるからである。
本プロジェクトを推進することで期待される効果は、上述の起業家の二面性を理解し、対処することで、コミュニティとしての企業の経営者とその家族、従業員とその家族、顧客、投資家、取引先などのステークホルダーとのつながりを重視し、企業で働く人びとのウェルビーイングに貢献する起業家の育成プログラムの開発に寄与することである。
2021/06/15