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東アジア的自己観から多層的社会へ

研究課題      東アジア的自己観から多層的社会へ

研究代表者     出口康夫    京都大学大学院文学研究科 教授

共同研究者     大西琢朗    京都大学 特任准教授
          秋吉亮太    早稲田大学高等研究所 招聘研究員
          山森真衣子   東京大学/日本学術振興会 特別研究員
          八木沢敬    カリフォルニア州立大学 ノースリッジ校 教授
          白川晋太郎   一橋大学/日本学術振興会 特別研究員

本研究では東アジアの伝統的自己観である「真なる自己の哲学的再現役化を試み、そこから西洋的人間観に対するオールタナティブ を導き出した上で、それにもとづいて現代社会が直面する様々な課題に対する新たな処方箋を描くことを目指す。
(1)大乗仏教 如来蔵思想)・老荘 思想・禅思想( 道元哲学)・京都学派の 哲学を通底する「真なる自己」の現代版として、本研究は、「行為主体」としての「自己」を、個人的「私」ではなく、行為を支えるアフォードする)多数のエージェントからなる「われわれ」と見なす「われわれとしての自己」という新たな自己観を構築する。
(2)その上で、本研究は、この自己観から、能動と受動の側面を併せ持った)「両動態的主体性」や 、行為者性(エージェンシー)を自足的に占有しない「分散的行為者性、単独では身体行為を行えない「単独行為不可能性」といった諸概念を析出し、それらを組み込んだ「できなさ」を基軸とする新たな人間観を、「能動的主体性」「自足的行為者性」「自己決定性」「できること」を軸とする西洋的人間観に対する対抗案として提案する。
(3)この対抗的人間観にもとづき、本研究では、AIやロボットといった人工的エージェントと人間が「集団的行為主体」を構成する近未来社会における行為責任や倫理に関して 、従来の西洋モデルに回収されないアジア発の新たなビジョンを提示する。そのことで、西洋一 極主義を脱し、ますます多元化しつつある21 世紀にふさわしい、様々な価値観の多層的な共存を許す「多層的社会」の実現が目指される。

2021/06/15

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