第1回「進化と文化とこころ」研究会
2010年度より京都大学こころの未来研究センターでは、”生物学的な視点からヒトを見る「進化心理学」と、文化という視点からヒトを見る「文化心理学」の知見を統合的に理解する枠組みを、研究者同士の交流を通じて探ることを目的”に「進化と文化とこころ」連携研究プロジェクトをスタートさせました。第1回の研究会では、Zurich大学のErnst Fehr博士の研究室で研究されている森島洋介さんに講演をしていただけることになりました。皆さまのご参加をお待ちしております。
日時:2010年9月6日(月)13:00-14:30
場所:京都大学稲盛財団記念館・3F中会議室
話題提供者
森島陽介
Institute for Empirical Research in Economics, University of Zurich
講演タイトル:
「神経経済学から見た社会的選好の個人差とその神経基盤」
講演要旨:
ヒトの利他行動は遺伝的に近い者だけでなく、全くの他人にも向けられる点で非常に特異的である。これまでの研究により利他行動は不平等回避モデルによって定性的には説明が出来ることが示されてきた。しかしながら、独裁者ゲームの行動を詳細に見てみると、全てを自分に配分する者や平等に配分する者に分かれる傾向があり、社会的選好には大きな個人差があることを示唆している。我々は社会的選好の個人差とその神経基盤を明らかにすべく、不平等回避の程度を個人レベルで評価する方法を開発した。健常成人被験者に独裁者ゲームを行わせ、加えて正もしくは負の互恵性が関与した時に独裁者ゲームでの意志決定がどのように変化するかも検討した。Fehr-Schmidt 不平等回避モデル内のパラメーターを個人レベルで推定した所、自分が有利な時の不平等回避には非常に個人差が大きいが、自分が不利な時の不平等回避はその程度、個人差共に小さい事が明らかとなった。機能的MRIによる脳活動データの解析では、負の互恵性が生じた時には右背外側前頭皮質の活動が増大し、不平等が大きい時には左背外側前頭皮質の活動が増大した。また、これらの脳活動の変化と行動パラメーターに相関関係があることが分かった。以上の結果から社会的選好の個人差は前頭皮質の相互作用によって説明される。
問い合わせ先:京都大学こころの未来研究センター 平石界
2010/08/26