鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 12」(12月2日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。同郷である徳島出身の小説家・詩人の富士正晴が生誕100年を迎えたことを取り上げ、彼の郷里である徳島県三好郡山城谷村(現三好市)を訪ねた記憶と印象を振り返り、「竹林の隠者」と評され俗世から距離を置き作家活動を続けた富士の「望見の感覚」こそが、現代社会にとって重要であると綴っています。
「富士正晴生誕100年『皆酔うとき一人醒め』望見の感覚で自他捉え」鎌田 東二 京大こころの未来研究センター教授
10月30日、作家富士正晴の生誕100年を迎えた。富士は三好郡山城谷村(現・三好市山城町)で生まれたが、3歳で小学校訓導をしていた母に連れられて平城(朝鮮)に移住したので、子どものころの故郷の記憶は一切ないと記している。
だが数年前、富士の故郷を訪ねて彼が住んでいた家の跡地に立った時、富士の文学を生み出すまなざしの原点を垣間見たような気がした。そこは谷合にへばりつくように身を寄せる集落を見下ろす天上界のような高さにあった。そこから見ると、まるで雲の上から超ロングスパンの遠近法によって世界を眺めているような「望見」の感覚があった。(中略)
直木賞候補作となった「帝国軍隊に於ける学習・序」に「国法はこわいのである。国法は守ってくれる気がしない。国法は罰を加えにくる」と記す富士のまなざしと感覚こそ、さしたる議論もないままに衆院を通過してしまった「秘密保護法案」が成立してしまいそうな今、必要なまなざしと感覚であると思う。
(記事より抜粋)
2013/12/04