河合教授、畑中助教による『大人の発達障害の見立てと心理療法』が出版されました
河合俊雄教授が田中康裕教育学研究科准教授と編・著者を務め、畑中千紘助教(上廣こころ学研究部門)が第7章、第13章を執筆した『大人の発達障害の見立てと心理療法 (こころの未来選書)』が創元社より11月11日に出版されました。本書は、上廣こころ学研究部門における臨床心理学領域のプロジェクトの一つである「大人の発達障害への心理療法的アプローチ」の研究成果がまとまった一冊です。
河合教授は「第Ⅰ部 概説」において、近年増える大人の発達障害について社会的背景を説明し、その大きなキーワードとして「主体のなさ」に着目。主体の成立へとつながる心理療法的なアプローチの具体的な事例を紹介しつつ、その可能性を探り、本書の全体像を明らかにしています。第IV部「社会・文化的背景」では「家族関係の希薄化と密着化」というタイトルで、心理療法からみた日本社会における家族関係の変化と個の主体の喪失について考察。「あとがき」では各章のポイントと執筆者のねらいをまとめています。
畑中助教は、「第III部 アセスメント」の「第7章 発達障害のロールシャッハ・テストにおける不確定反応――主体と対象の確定の試み」と、「第IV部 社会・文化的背景」の「第13章 発達障害の時代における自己の現況と変遷――ミクシィからフェイスブックへ」を執筆。第7章では、ロールシャッハ・テストの実験結果から「不確定反応」という指標を取り上げ、発達障害の人の主体性の弱さを明らかにすると共に、その現われ方を分析し、発達障害理解のための手がかりを提示しています。第13章では、ミクシィとフェイスブックという日本におけるソーシャルネットワークサービスの人気の変化に注目し、それぞれの特徴の違いから、現代のネット社会と個人の主体のあり方の変化をみつめ、考察しています。
○内容紹介
近年増加が指摘され、治療も困難とされる大人の発達障害に対して、どのような見立てを持ち、どのようにアプローチすればよいのか。描画や箱庭、夢分析を用いた数多くの心理療法の試みと、発達障害の背景にある社会・文化的要因の考察を通じて、従来の「主体」を前提とした心理療法モデルに代わる、「主体」の成立を図る新たなアプローチを提示する。さまざまな問題や症状に覆い隠された大人の発達障害の核心に迫る。
(書籍紹介文より)
○目次
第Ⅰ部 概説
第1章 大人の発達障害における分離と発生の心理療法 …. 河合俊雄
第2章 未だ生まれざる者への心理療法――大人の発達障害における症状とイメージ …. 田中康裕
第II部 事 例
第3章 社交不安障害と診断された20代女性との心理面接――絡まりがほどける時 …. 安念直子
第4章 発達障害傾向のある男性との心理面接――夢分析における「私」が立ち上がるプロセス …. 西谷晋二
第5章 アスペルガー障害と診断された10代男子との面接過程――分離の契機という観点から …. 橋本尚子
第6章 産婆としての心理臨床――母と息子が個々の心を実感したプロセス …. 渡辺あさよ
第III部 アセスメント
第7章 発達障害のロールシャッハ・テストにおける不確定反応――主体と対象の確定の試み …. 畑中千紘
第8章 発達障害的世界の理解のために――描画・箱庭等の表現媒体を通じて …. 石金直美
第9章 風景構成法に見る大人の発達障害の心的世界 …. 長野真奈
第IV部 社会・文化的背景
第10章 家族関係の希薄化と密着化 …. 河合俊雄
第11章 「発達障害増加」と言われる裏側にあるもの――絵本の代わりにタブレット …. 岩宮恵子
第12章 現代におけるユビキタスな自己意識――サイコロジカル・インフラの消失と発達障害 …. 田中康裕
第13章 発達障害の時代における自己の現況と変遷――ミクシィからフェイスブックへ …. 畑中千紘
註および文献
あとがき …. 河合俊雄
・出版社:創元社
・刊行年月日:2013/11/11
・ISBN978-4-422-11226-8
・判型 A5判 210mm × 148mm 256頁
※出版社の書籍ページでは、河合教授による概説の一部とあとがきの全文をお読みいただけます。下記リンクよりアクセスしてご覧ください。
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2013/12/02