「人が育つ組織」研究会第1回を開催しました【開催レポート】
2014年5月27日、「人が育つ組織」研究会第1回を株式会社ウエダ本社、NPO法人ミラツクとの共催のもと稲盛財団記念館3階大会議室で開催しました。
研究会のテーマは、「人が育つ組織とはどのような組織なのか」。ビジネス環境が目まぐるしく変化していく中、そこで重要になるのは、その中で生きている「人」、その中にある「つながり」、そしてそれを支える「組織の文化や制度」です。そこで初回はピーターMセンゲの『学習する組織』を翻訳したチェンジエージェントの小田理一郎氏をお招きし、基調講演をおこなっていただきました。
基調講演後、参加者の皆様でディスカッションをおこない、ディスカッションの中で出てきたキーワードを踏まえつつ、講演者の小田氏に、NOSIGNERの太刀川英輔氏、内田由紀子准教授を交えて鼎談をおこないました。企業の方(経営者、コンサルタント、人事担当者)を中心に、研究職、NPO, NGOの方々を含め50名ほどの方がご参加くださいました。
ミラツクの西村氏による趣旨説明:変化が激しくなっている現在、経営をうまく進めていくためには、人と組織の学習を促進していくこと。研究会では、人が育つ組織の要素を明らかにしていき、組織の違いに合った人と組織が学習する仕組みを考えていくことを目的としたい。
小田氏の講演要旨:
・学習する組織とは、「組織システムと個人が相互に発展する、好循環をうみだす相互作用をおこす組織」。目的に向けて効果的に行動するために、集団としての気づきの状態と能力を継続的に高め、伸ばし続ける組織と言いかえることもできます。それらの組織では、急激な変化に耐えられるしなやかさと適応性があり、さらにそこにいる人たちは自ら学び、創造するという特徴があります。
・「気づきの状態」の重要性:今何が起こりどのような仕組みの中にいるのか、コミュニケーションを取る相手は何を感じているのか。
・「観察の重要性」:今の自分たちのパターンを作り出すパターンには構造がある。そのような組織の内的システムの構造を知ること。
・「個々の主体性」:学習する組織に所属している人たちの特徴として、組織内の個人は組織の中の問題を自分事として捉え、自分たちで原因を発見し、組織のシステムに関わっているという主体性を持っているということが挙げられる。
小田氏は大企業のように一人一人を把握できない際に変えることができるのは思考・関係性・場所の三つの観点であると説明しました。「その中でも注目したいのは、思考の質と関係性の質。それらの変化を生み出すためには、心理的に安心・安全な場所を創り出すこと。本当の知恵は、自分たちが思っていること、感じていることを出していく中で創出する」と学習する組織を作るための「場の創出」の重要性を強調されました。また組織でビジョンを共有するために、フラットな関係で話すことができる場を設定することを勧めました。
講演後、参加者の方々で4〜5人のグループに分かれ、「それぞれの組織で、どういう課題に直面しているのか」というテーマのもとディスカッションを行いました。組織の中でフラットな関係を築けるような場所を設定することの難しさや、人をつなぐことの重要性など、様々なトピックが飛び交いました。講演に基づいたキーワードを太刀川氏・内田准教授が事前に用意したうえで、特に参加者の関心が高かった(8割近くが関心があると手を挙げた)「組織の多様性のための器、つながり・つなぐ、先行投資としての場の設定」を中心に鼎談を実施しました。
太刀川氏:多様な人を受け入れる組織作りのポイントを自分の経験談として紹介、勝ち負けを競ってしまう組織のメンバーの作業を円滑にするために、自分よりも優秀な人たちを雇うことが大事だということを挙げました。またその中で、またビジョンの共有、の重要性について語りました。
内田准教授:社会心理学の観点から農業地域における普及指導員の役割を説明しながら、組織のコミュニケーションに必要なのは「つなぐ」仕事の役割であり、ボンディング型(内部結合型)のつながりの形成とブリッジング型(橋渡し型)のつながりの形成の双方が必要であると述べました。
小田氏:話はキーワードの一つである、先行投資としての場の設定に移りました。小田氏は、「どうやってファシリテートする人を育てるのか。そういう発想を持っている組織は少ない。また場の質を高めることが重要であるが難しい」と企業の現状について話し、内田氏が「場の設定の重要性に対するエビデンスがないと、企業もそういう場を作ろうとしないのでは」と応じました。
(総括コメント)
小田氏:「組織の中の個人が人間力を培うことと経営として結果を追求していくことの両方を大事にすることが重要」
ウエダ本社の岡村氏:「日本社会の閉塞感を打破するために、オフィス環境や働き方の改善を志している、そのためには数値化、検証をしていく必要がある。」
内田准教授:「人が育つ組織に関する日本型のエビデンスを作りたい、今後の研究として、質問紙調査やインタビュー調査を様々な組織を対象におこなっていく。」
「人が育つ組織」の研究会は2ヶ月に一回ほどの頻度で定期開催していく予定(招待制)で、モデル形成にむけたディスカッションを実施します。
(報告:総合人間学部 学部生 三浦祥敬)
「人が育つ組織」研究会第1回
・日時:5月27日(火) 17:30-20:30
・場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
・内容:
第一部:ゲスト講演 (有)チェンジ・エージェント 代表取締役 小田理一郎氏「学習する組織–複雑で激しい変化の時代に、人と人が響き合いながら、しなやかに、進化し続ける組織」
第二部:トークセッション (有)チェンジ・エージェント 代表取締役 小田理一郎氏、NOSIGNER株式会社 CEO/デザイナー 太刀川英輔さん、京都大学こころの未来研究センター内田由紀子准教授
・参加者数:約50名
2014/07/01