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鎌田教授、河合教授の論考が『井筒俊彦 言語の根源と哲学の発生』に掲載されました

1407izutsu.png 今年は、世界的な思想家として知られる井筒俊彦の生誕100年にあたります。6月、河出書房新社より出版された『井筒俊彦 言語の根源と哲学の発生』に、鎌田東二教授と河合俊雄教授の論考が掲載されました。
 同書では、井筒俊彦の思想、哲学を様々な識者が様々な角度から論じています。鎌田教授は「井筒俊彦と東洋哲学」の章において、「詩と宗教と哲学の間 言語と身心変容技法」という題にて、井筒俊彦を「詩と宗教と哲学の間をつなぐ思想家」と位置づけ、西脇順三郎と折口信夫が与えた影響や、身心変容技法研究の視点から見た井筒の神秘哲学について、詳細に要点をまとめ解説しています。河合教授は「井筒哲学の基層」という章において、「井筒俊彦とエラノス精神」という題で執筆。ユング心理学と大きな関わりを持ったエラノス会議に何度も赴いた井筒俊彦の思想と「エラノス精神」について、また、井筒のあとをうけてエラノス会議に参加した河合隼雄京大名誉教授のエラノス、井筒との関わりについて論じています。

「詩と宗教と哲学の間 言語と身心変容技法」 鎌田東二
 井筒俊彦の仕事は実に広範に亘っているが、その全体を井筒自身がもくろみ多用した「共時的構造化」という観点を用いていえば、「詩と宗教と哲学の間」を探求したといえるだろう。その三者の間を往還しながら、自在かつ必然にその間を思索したといえるだろう。(中略)
 折口信夫と西脇順三郎。この韜晦で独自の創造的詩的言語を駆使する詩人研究者に接した特異な青年井筒俊彦。それがどれほどの強力で過酷な教育と思想錬磨と思索深化の機会となりトレーニングとなったか。実にゴージャスで過酷な学生時代を過ごしたものである。凡庸な学生なら到底務まらず、音を上げていたにちがいない。井筒俊彦は、詩と宗教と哲学の間を西脇順三郎と折口信夫という稀代の二人の慶應義塾大学教授によって往還させられたのだ。それは特異な経験であり僥倖ともいえる「修行」であった。『意識と本質 – 精神的東洋を索めて』(岩波書店、一九八三年)を読んでいると、井筒の問いの基底に、いつもこの特異な二人の詩人学者の「檄薬」が仕組まれ、効いているような思いに捕われる。
「井筒俊彦とエラノス精神」 河合俊雄
 井筒の論考は、常に現代に生きるこころを意識しており、「主体性、実存的な関わりのない、他人の思想の客観的な研究には始めから全然興味がない」とさえしている。だからこそ井筒の研究は、狭い意味の思想史研究や比較思想研究にとどまらずに、東洋思想を共時的に絡めて、現代における意義を問うものになったと思われる。主著の『意識と本質』はそれを端的に示しているであろう。
 井筒は冒頭にも引用した「『エラノス叢書』発刊に際して」の中で、次のように述べている。「エラノス会議は終わっても、エラノス精神は終わらない。それは現に、今もなお生きているし、おそらく今後も生き続けてゆくだろう。(中略)存在の異次元、不可視の次元にたいして人々の胸に情熱が燃え続けるかぎり。実存の深層領域にたいする人々の探究心が働き続けるかぎり……」その意味で、井筒の言うエラノス精神を受け継ぐとは、現代の思想のコンテキストで、また現代のこころのあり方に関連して実存の深層領域を捉えることではなかろうか。
 まさに河合隼雄が最晩年に華厳哲学と取り組もうとした試みも、このようなものとして理解できる。

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2014/07/11

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