第5回東日本大震災関連シンポジウム「こころの再生に向けて~震災後の自然と社会」を開催しました
第5回東日本大震災関連シンポジウム「こころの再生に向けて~震災後の自然と社会」が7月22日、京都大学稲盛財団記念館大会議室でおこなわれました。
こころの未来研究センターでは、東日本大震災後に「震災関連プロジェクト」を立ち上げ、被災地での調査活動やこころのケアに関する支援活動を継続しておこなっています。第5回目を迎えた震災関連シンポジウムは、「震災後の自然と社会」をテーマに環境に焦点を当て、震災後の自然と社会がどう変化したのかを具体的な事例を各発表者によって紹介。被災地の森と海が、そして里や町がどのように変貌しつつあるのか、その未来を見据える会となりました。
はじめに、司会者の鎌田東二教授による鎮魂の法螺貝が鳴り響いたのち、参加者全員で黙祷を捧げました。開始にあたって、鎌田教授は、これまでの震災プロジェクトにおける調査研究活動の報告をおこない、今回のシンポジウムの登壇者の紹介およびテーマの説明をおこないました。
第一部初めの基調講演では、田中克京都大学名誉教授が「震災後の自然環境の変化」という演題にて講演しました。自然再生を目的とした森から海までのつながりの科学「森里海連環学」を展開し、有明海と三陸の海の再生の共通の課題として、陸と海の境界域に当たる水際の復元に取り組んでいる田中名誉教授。様々な生きた事例を紹介し、海と共に生きる人々の暮らしの現状を伝え、自然と共に生きるための課題を問いかけました。続いて、草島進一山形県議会議員が「震災後の社会と持続可能な未来」という演題で講演。阪神淡路大震災でのボランティア活動を契機に自然との共生を鍵にした持続可能な社会の実現を目指し活動を続けている草島議員が、現在の拠点で力を注ぐ山形でのダム問題の現状報告や各地でのエネルギー施策の事例まで、今後の暮らしと直結する自然、資源と人々の暮らしについて熱く語りました。二人の講演者のお話をうけ、コメンテーターとして金子昭天理大学教授が登壇し、「被災地の問題と、他の地域の問題をつなげ、普遍的な問題として考えられるようになったことは意義深い。次の世代のために今の課題を考えていくことが非常に重要。後半の島薗先生の原発問題に関するお話にも注目していきたい」と話し、第一部での各講演のポイントを明確にまとめ、前半を締めくくりました。
第二部は、島薗進東京大学名誉教授・上智大学グリーフケア研究所所長が「原発事故が問いかけるもの」という演題で講演しました。原発事故という問題に直面する日本社会がいま問われている課題について、自然との共生を目指したドイツのエネルギー政策の事例、日本における各宗教的視点からの原発問題との向き合い方、原発の非倫理性、被災地での生活者の声など、様々な角度からみつめながら「今回の福島を通して日本の近代化は何を見逃してきたのかあらためて考えていくべき。社会で起きていることと人間の倫理、精神文化の問題を合わせて考えていく時期にきたのではないか」と問題提起しました。続いて、大西宏志京都造形芸術大学教授が、震災の現場と芸術、アートがどのように関わってきたのか、震災時からの様々な芸術家の活動、実際の被災地での取り組みについて紹介しました(詳細は、学術情報誌『こころの未来』11号56ページに記事が掲載されています→PDFはこちら)。その後、鎌田教授を中心に講演者らによる総合討論がおこなわれました。
[DATA]
▽ 日時:2014年7月22日(火)13:00~17:00
▽ 会場:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室(アクセス)
▽プログラム
テーマ:「震災後の自然と社会」
第一部
13:00~13:10 「趣旨説明」
鎌田東二(京都大学こころの未来研究センター教授・宗教哲学・民俗学)
13:10~14:00 基調講演(1) 「震災後の自然環境の変化」
田中克(京都大学名誉教授・森里海連環学)
14:00~14:50 基調講演(2) 「震災後の社会と持続可能な未来」
草島進一(山形県議会議員・羽黒山伏・元神戸元気村副代表」
14:50~15:00 コメント : コメンテーター・金子昭(天理大学教授・倫理学)
休憩:15:00~15:15
第二部
15:15~15:55 報告 「原発事故が問いかけるもの」
島薗進(東京大学名誉教授・ 上智大学 グリーフケア研究所所長)
15:55~17:00 総合討論 「震災後の自然と社会」
田中克、草島進一、島薗進、大西宏志(京都造形芸術大学教授・情報デザイン)
司会:鎌田東二
▽主催:京都大学こころの未来研究センター震災関連プロジェクト 「こころの再生に向けて」共催:科研「身心変容の比較宗教学」(身心変容技法研究会)+聖地文化研究会(「生態智の拠点としての聖地文化」)
▽参加者数:72名
2014/07/25