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河合教授の論考が『そだちの科学』24号に掲載されました

1504kawai_sodachinokagaku.png 河合俊雄教授の論考が、『そだちの科学』24号(日本評論社/2015年4月号)に掲載されました。精神発達、こころの形成と成長をテーマに扱った専門誌の特集「発達障害と発達論的理解」に、河合教授は「ユング派からみた発達障害」というタイトルで寄稿。これまでのこころの未来研究センターでの発達障害との取り組みで、主体という視点が大切なこと、発達障害の心理療法においてどのように主体が形成されてくるか、さらには文化的な側面を、ユング心理学に関連づけつつ論じたものです。
 論考では、ユング心理学の理論を紹介しつつ、プレイセラピーや箱庭などのイメージを用いた心理療法のなかでの主体の立ち現れについて、具体的な事例を挙げて解説。河合隼雄(京大名誉教授)による日本の昔話研究についても言及し、現代の発達障害研究のヒントとなり日本文化の特徴にも関わるものだと考察しています。さらに現代の発達障害の増加は、日本人の特徴であった主体の弱さが現代の社会構造のあいまいさによって浮き彫りになったのではないか、と社会の変化に対してまなざしを向けています。

ユング派からみた発達障害
京都大学こころの未来研究センター 河合俊雄

<発達障害への心理療法>
 発達障害、厳密に言うと広義での自閉症スペクトラム障害については、近年に認知科学や脳科学による研究が進み、生物学的な背景が明らかにされつつある。したがって発達障害は生育史に起因する問題ではなくて、脳中枢系の障害とされるに伴って、親子関係などに焦点を当てた心理療法よりも教育と訓練による支援が中心的な対処法になっている。ウィングは自閉症スペクトラムの三つの特徴として、相互的社会性の障害、コミュニケーションの障害と合わせて、想像力の障害を挙げている。ユング派の心理療法においては、箱庭や描画などのイメージが重視されるが、想像力の障害を特徴とする自閉症スペクトラムにおいて、そのようなアプローチは効果がないように思われるかもしれない。
 しかしプレイセラピーや箱庭などのイメージを用いた心理療法による成功例も存在する。筆者たちは京都大学こころの未来研究センターにおけるプロジェクトにおいて発達障害の心理療法に関わりつつそれを分析する中で、発達障害の問題は「主体の欠如」や「主体の弱さ」であって、心理療法を通じて主体を確立していくことが可能なのを明らかにしてきた。ここではそれをユング派の理論にも関係づけつつ、解説したい。
(論考より)

そだちの科学 24号(2015年4月号) | 日本評論社
『発達障害への心理療法的アプローチ』河合俊雄編著/田中康裕、畑中千紘、竹中菜苗著 | 創元社
『日本人の心を解く:夢・神話・物語の深層へ』河合隼雄著 河合俊雄訳 | 岩波書店

2015/04/22

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