河合教授が監訳した『ユング『赤の書』の心理学 – 死者の嘆き声を聴く』が出版されました
河合俊雄教授が監訳をおこなった『ユング『赤の書』の心理学 – 死者の嘆き声を聴く』が、2015年6月、創元社より出版されました。
元型的心理学の創始者であるジェイムズ・ヒルマンと『赤の書』編者であるソヌ・シャムダサーニによる連続対話全記録の翻訳書です。2010年に刊行された日本語版『赤の書』の監訳ならびに2014年に刊行された『赤の書 テキスト版』の監訳・訳を手がけた河合教授が今回も監訳をつとめ、まえがきを執筆しています。
本書の内容については、訳者による詳細な解説があるので、ここではいくつか重要と思われることだけを強調しておきたい。ジェイムズ・ヒルマンはユング以後の最も有名なユング派の分析家で、特に「元型的心理学」の提唱者として、個人を超えたこころを強調してきた人である。『赤の書』には全く父親や母親は登場せず、ひたすらフィレモンやサロメなどの様々なイメージの人物像とのやり取りや対話から成り立っているので、まさにヒルマンの意に沿うのである。
『赤の書』には、いわゆるユング心理学の概念は全く登場せず、それどころか「無意識」という言葉さえ使われていない。ひたすらイメージの展開があるだけである。そこにヒルマンは非常に共鳴する。こころがどのように表現されるか、それになるべくそのまま沿っていく。『赤の書』にはまさにそのような姿勢が見られるのである。またヒルマンは物語も強調していて、それは河合隼雄の物語論に通じるところがあるかもしれない。
しかし心理学は生の表現につきないところが特徴的である。それをヒルマンは「リテラル」(字義通り)でないものと言う。
(「監訳者まえがき/河合俊雄」より)
『赤の書』には、いわゆるユング心理学の概念は全く登場せず、それどころか「無意識」という言葉さえ使われていない。ひたすらイメージの展開があるだけである。そこにヒルマンは非常に共鳴する。こころがどのように表現されるか、それになるべくそのまま沿っていく。『赤の書』にはまさにそのような姿勢が見られるのである。またヒルマンは物語も強調していて、それは河合隼雄の物語論に通じるところがあるかもしれない。
しかし心理学は生の表現につきないところが特徴的である。それをヒルマンは「リテラル」(字義通り)でないものと言う。
(「監訳者まえがき/河合俊雄」より)
出版社の書籍ページでは、監訳者まえがきとシャムダサーニによる序文、第一章の一部、訳者あとがきを読むことができます。こちら
○書籍データ
ユング『赤の書』の心理学 – 死者の嘆き声を聴く
著:ジェイムズ・ヒルマン、ソヌ・シャムダサーニ
監訳:河合俊雄
訳:名取琢自
出版社:創元社(2015年6月)
単行本: 290ページ
ISBN-10: 4422115928
ISBN-13: 978-4422115924
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2015/07/23