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鎌田教授のコラム「息絶えぬ原始の看取り」が月刊『MOKU』に掲載されました

 鎌田東二教授のコラムが月刊『MOKU』2016年1月号(発行:MOKU出版)に掲載されました。
 雑誌は「生きる意味を深耕する月刊誌」として、毎号、様々な角度から人間の生き方を考える特集を提供しています。本号の特集「戦後100年を生きるあなたへ」において、鎌田教授は、継続して調査研究をおこなっている東日本大震災被災地での現状や、巨大コンクリートの防潮堤が建設されつつある状況にふれ、人間の古くからの自然への畏怖・畏敬の念に基づく「生態智」を活かし生きる先にこそ持続可能な人類の未来がある、と提言しています。

1601kamata_moku.png■戦後100年を生きる人たちへ
「息絶えぬ原始の看取り」宗教哲学者・京都大学こころの未来研究センター教授 鎌田東二
 東日本大震災が起きてそのしばらく後から、一年に二回、定期的に福島県浪江町か南相馬市から青森県八戸市までの太平洋岸の被災地を回って、その時々に生起している問題や「復興・復旧」の過程を定点観測している。これまでに十回、車で各回千キロほどを回っている。千年に一度と言われる規模の大地震による被害とその後の再建の過程で何が浮かび上がってくるのか、日本の現在と未来の縮図と予兆を見る思いでお遍路さんのように訪れている。
 福島第一原発の六キロほどのところの被災地海岸線に慰霊碑と供養の卒塔婆が建てられていて、そこに「為大愚国策東電原発事故被災犠牲動物植物之霊位三菩提也」と書かれているのを見た時には深く鋭く胸を衝かれた。痛烈、痛切な思いに言葉を失った。
 そのすぐ近くには、ごっそりと津波にさらわれた延喜式内社の苕野神社があった。苕野神社の祭神は、高龗神・闇龗神・五十猛神・大屋津姫神・抓津姫神であった。だが、この周りには今は一軒の家もない。
 苕野神社の鈴木澄夫宮司さん夫妻は津波に呑み込まれて亡くなった。宮司さん夫妻を心配して迎えに来た禰宜の息子さん夫婦も津波に攫われて亡くなった。そこから海まではほんの二十メートルほど。真っ先に津波に襲われる位置にあった。
 祭神の高龗神・闇龗神は、奈良県の丹生川上神社や京都市の貴船神社の祭神と同神で水の神様である。なんとも言葉にならない事実である。何度この地を訪れても整理することのできない感情が生起する。福島原発からだいぶ距離のある飯舘市を訪れた時にも言葉にならない整理できない感情が溢れ出る。どうしてこの静かで穏やかな山村が高放射能の汚染地になってしまったのか、と。
 同時に、仙台市若林区霞目の浪分神社や宮城県沿岸部の熊野神社などの多くは津波被害を免れているのも見てきた。これもまた事実である。
(記事より)

月刊MOKU最新号 | MOKU出版株式会社

2016/01/28

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