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河合教授が編集し、畑中助教らと執筆した『発達の非定型化と心理療法(こころの未来選書)』が出版されました

1610kawai_book.png 河合俊雄教授と教育学研究科の田中康裕准教授が編者を務め、畑中千紘助教(上廣こころ学研究部門)らと執筆した『発達の非定型化と心理療法』が2016年10月、創元社から出版されました。上廣こころ学研究部門の「子どもの発達障害への心理療法的アプローチ」および「大人の発達障害への心理療法的アプローチ」プロジェクト等の成果としての書籍です。
 河合教授は第Ⅰ部の概説と、第Ⅲ部の研究編を執筆しました。研究編では、非定型的な発達をする子どもたちの心理療法ではどのような特徴がみられ、またどのようなアプローチが有効なのかについて具体的に解説しています。畑中助教は、研究編で現代の若者の意識の非定型化について考察しました。2000年以降、ほとんどみられなくなったと言われていた対人恐怖症状が昨今になって若い世代から訴えられることがみられるようになりました。しかしながら、これは1960年代に典型的にみられた神経症とは異なり、アグレッションをどこかで「スルー」しながら適応しようとしている若者世代の意識の反動のような動きと考えられるとして、事例や調査研究を題材に検討を行っています。
 なお、創元社の書籍ページでは詳しい目次に加えて、河合教授の第Ⅰ部第1章「発達障害の増加と発達の「非定型化」」の一部と「あとがき」の全文が、立ち読み機能を使って閲覧可能です。下記リンク先にアクセスしてご覧ください。

「あとがき」(本文より)
 本書は、前著『発達障害への心理療法的アプローチ』と『大人の発達障害の見立てと心理療法』を受けて、われわれのチームでの発達障害の心理療法についての第三作である。しかしこれはタイトルからもわかるように、単に発達障害に関する研究や検討の延長ではない。
 発達障害という診断を受けたり、そのように周囲の人に言われて心理療法を受けにきたりする人はますます増えている。しかしながら近年の臨床において、純粋な発達障害の子どもや大人は減っているのではないかというのが実感である。われわれの行っている発達障害のプレイセラピーについてのプロジェクトでも、申し込まれた約50名のうち、あまり発達障害であると見立てられない子どもが、40名近くに達するぐらいである。そのような人たちは、発達障害ではないとしても、これまでの心理的な問題や症状のカテゴリーには入りにくく、そこにある種の発達の弱さや偏りのようなものが認められる。「発達の非定型化」ということを考えはじめたのには、そのような背景がある。これに該当するクライエントたちは、主体の弱さがあるけれども、発達障害のクライエントのような主体のなさとは区別された方がよいように思われる。主体がはっきりしないのは、社会構造が緩んできて、当然とされてきた段階どおりにこころが発達していかないことにも関係がありそうである。それは、発達障害とはっきり区別すべきなのか、発達障害がスペクトラムとして考えられるなら、それの非常に軽症のものなのか、それともほぼ10年ごとに流行する症状が変化することからすると、発達障害の次に支配的となる症状なのか、今後も注目していきたい。
 第Ⅰ部の概説では、河合俊雄が上記のようなことを解説した。第Ⅱ部の事例編は、4つの事例研究から成る。….
『発達の非定型化と心理療法(こころの未来選書)』
編集:河合俊雄、田中康裕
出版社:創元社
出版年月日:2016/10/19
ISBN-10:4422112295
ISBN-13:978-4422112299
判型・ページ数:A5判 上製 208頁
定価:3,024 円


出版社の書籍ページ(詳しい目次、書籍の一部が閲覧可能です)

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2016/10/26

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