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こころの科学集中レクチャー「こころの謎 ~文化規範の生成プロセス」を開催しました

16shuchu.png 2016年度こころの科学集中レクチャー「こころの謎 ~文化規範の生成プロセス」が、2017年2月28日から3月2日にかけて稲盛財団記念館大会議室で開催されました。集中レクチャーは、3日間にわたり、それぞれの先生方の講義とディスカッションをおこなうユニークな試みです。一人の先生の授業から学ぶという従来型の学習スタイルではなく、研究者同士の最先端のディスカッションやそこから生じるアイディアの創発を目の当たりにする、非常にエキサイティングな時間です。
 今回の集中レクチャーでは、初日に北山忍先生(ミシガン大学心理学部教授/センター特任教授)から社会規範について、進化的な視点、社会生態的な視点から話題提供がありました。協力行動に焦点をあてて様々な研究を概観しながら協力行動の範囲が拡大してきた過程について論じていただきました。また、実験における経済ゲームの結果を見ながら、社会生態環境と規範との関わりが論じられました。
 2日目は、内田由紀子准教授から、文化的な意味と幸福との関係性、さらには文化が共有される範囲について、話題提供がありました。文化に共有される意味が現れる行為として、対人評価や幸福、通過儀礼などがあることを提示し、それぞれについて論じられました。具体例として企業での評価システムや「働く意味」などの文化的な意味システムが、個人の幸福に影響を与えている過程を紹介していただきました。また、農村や漁村など生業の違うコミュニティを具体例として挙げながら文化が共有される範囲についても論じられました。
 最終日は、嘉志摩佳久先生(メルボルン大学心理学科教授)から、文化を説明する数理モデルや、ヒトが持つ超社会性(Ultrasociality)について、話題提供がありました。文化を情報としてとらえて検討し、多層的な環境の中に文化的な社会環境が埋め込まれている様子を解説していただきました。また、経済ゲームの構造に着目しながら、超社会性の問題を解決する心理・社会システムについて紹介していただき、「世界倫理」とでもいえるような倫理観の拡大についても論じられました。
 「文化規範の生成」が今回のテーマでしたが、先生方それぞれが文化脳神経科学、大規模縦断社会調査、計算機論と異なるアプローチから挑んでおり、社会科学の裾野の広さを実感しました。また、分野を超えた積極的な議論も新鮮で興味深く、研究者としての視野の広さが重要であることを再認識できる素晴らしい機会でした。毎回講演の後には講師同士ならびに受講生を交えた活発なディスカッションがおこなわれ、会場は3日間熱気に包まれていました。

(報告:富永仁志・内田研究室博士課程)

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[DATA]
「2016年度こころの科学集中レクチャー こころの謎 ~文化規範の生成プロセス」
▽日時:2017年2月28日(火)、3月1日(水)、2日(木)10:00〜18:00
▽講師:嘉志摩佳久(メルボルン大学心理学科教授/専門: 社会心理学)、内田由紀子(京都大学こころの未来研究センター特定准教授/専門: 社会心理学・文化心理学)、北山忍(ミシガン大学心理学部教授/専門: 文化心理学・文化神経科学)※ 講義順
▽企画・進行:内田由紀子(こころの未来研究センター准教授)

2017/05/23

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