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こころの未来研究センター研究報告会2012が開催されました

 こころの未来研究センター研究報告会2012「こころを知り未来を考える ~感情と身体~」が、2012年12月15日、稲盛財団記念館3F中会議室(講演会場)、大会議室(ポスター展示)にて開催されました。
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▽日時:2012年12月15日(土)13時~17時30分
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階中会議室・大会議室(ポスター会場)
▽参加者:約60名
▽対象:研究者、学生
▽プログラム:
13:00-13:15 挨拶:吉川左紀子 (こころの未来研究センター長)
13:15-14:00 「ものの好みはなにで決まる?」
船橋新太郎  (こころの未来研究センター教授・神経生理学,神経科学)
14:00-14:45 「看護師の燃え尽き:こころが職場に及ぼす影響」
カール・ベッカー (こころの未来研究センター教授・倫理学, 宗教学)
14:45-15:30 ポスターセッション(稲盛財団記念館3階大会議室)
15:30-16:15 「<『はじ』の文化>再考~『古事記』からルース・ベネディクトまで」
鎌田東二 (こころの未来研究センター教授・宗教哲学, 民俗学)
16:15-16:45 指定討論
加藤忠史(理化学研究所脳科学総合研究センター シニア・チームリーダー・精神医学,脳科学)
16:45-17:30 総合討論
▽開催ポスター:右上の画像もしくはこちらをクリックするとPDFファイルが開きます。
■「『ひらく 広がる つながる』をコンセプトに」――挨拶 吉川左紀子センター長
PC152995.JPG 研究者、学生、教育関係者らが集まった報告会では、センター所属の3名の教授が「こころを知り未来を考える ~感情と身体~」という総合テーマのもと講演を行ない、指定討論者を交えた討論を行ないました。ポスター会場となった大会議室では、研究プロジェクトを紹介するポスターセッションが行われ、多くの参加者で賑わいました。
 中会議室での研究報告会では、はじめに吉川左紀子センター長が2012年度のセンターの歩みを振り返りました。センター連携MRI施設やブータン学研究室、寄付研究部門「上廣こころ学研究部門」などの設置を報告すると共に、社会に向けた情報発信として「ブータン文化講座」「東日本大震災関連プロジェクト」をはじめ、京都府との共同企画「こころの広場」、研究者と学生を対象とした「こころの科学集中レクチャー」など様々なイベントの開催を報告。他にも人の動きとして、入来篤史理化学研究所脳科学総合研究センターシニア・チームリーダー、北山忍ミシガン大学心理学部教授、下條信輔カリフォルニア工科大学生物学部教授ら3名の特任教授の着任など、新スタッフの紹介を行いました。
 また、設立5年半を経たセンターの将来に向けた展望として、「私たちのセンターは京都大学で最も小さなセンターですが、研究対象をひとつに絞るのではなく『やりたいことをすべて実行する』ことで、テーマが広がりさらにつながってひらいていく、そんな研究の場を目指して日々取り組んでいます」と特徴を紹介しました。
 そして、何を「つなぐ」かについて、「『異なる研究領域をつなぐ・社会と基礎研究をつなぐ・過去の伝統知と現代をつなぐ』をコンセプトに、今まで別のフィールドにあったものをつなぐことを目指しています。今後はさらに「『大学同士をつなぐ』連携ネットワークの場としての充実を図ること、『大学と社会をつなぐ』、企業もまじえたこころ学の研究教育を進めること、加えて医療従事者や教育者など社会のなかで『”支える人”を支える学びの場』として教育分野も視野に入れた取り組みを検討しています」と将来に向けた展望を話しました。
■研究報告1――「ものの好みはなにで決まる?」船橋新太郎教授・神経生理学、神経科学
PC153022.JPG ひとつめの研究報告では、神経生理学、神経科学を専門とする船橋新太郎教授が「ものの好みはなにで決まる?」という演題で発表しました。
 日常で自然に見られる「好みの違い」はいったいどうして起こるのか。例えばとっくり、例えば絵画展で立ち止まる絵の作者…etc.。それらの好みはどうやって決まるのでしょう?船橋教授の研究室では、こうした問いに対して、ものの好みを判断する部分として前頭葉眼下部に注目、サルを用いた行動実験を行っています。つるつる、ざらざら、ピカピカなど、光沢や質感などの変化を与えた実験対象となる画像を見たときの反応を測定し、どのようなパラメータが選好性に影響を与えるかを検証。それにより、サルによっては刺激の選好性が異なり、色付きか否かは選好性に影響を与えないものの、輪郭の強さに対する好みは明確にデータで示され、ぼんやりしたものよりははっきりとしたものが好まれる傾向が強いことなどが分かりました。発表では、それらの研究手法と得られた研究結果が、豊富な画像とデータ等で詳しく紹介されました。
■研究報告2――「看護師の燃え尽き:こころが職場に及ぼす影響」カール・ベッカー教授・倫理学、宗教学
PC153047.JPG 続いて、倫理学、宗教学を専門とするカール・ベッカー教授が、「看護師の燃え尽き:こころが職場に及ぼす影響」という演題で発表しました。
 超高齢化により医療従事者が慢性的に不足する現代社会において、看護師の疲弊とストレスが問題化していることに注目し、ベッカー教授は看護師の燃え尽きに繋がるとされる環境的要因と精神的要因、さらにストレスの時間的経過の影響などを突き止めるための研究を行っています。そのなかで介護者のストレスコーピング(ストレスへの対処法)として有用なSOC(: Sense of Coherence/首尾一貫感覚)に注目。SOCを測定することで看護師のストレス対処能力の違いを特定し、それによる適応状況の違いを明らかにするための大規模な調査研究の結果を報告しました。
 研究では、SOCが高いほど医療者の業務能力が高いことが分かりました。「SOC測定によって患者への虐待などの危険性回避や事前指導のための有効手段になりえ、看護師の離職防止などに繋ぐことが期待できる」と話し、今後はストレス低減のみならずいかにストレス対処能力やSOCを高められるか、またその支援をどうするか、さらなる研究と教育プログラムの開発と実践が必要、と話しました。
■研究報告3――「<『はじ』の文化>再考〜『古事記からルース・ベネディクトまで』」鎌田東二教授・宗教哲学、民俗学
PC153113.JPG 研究報告のしめくくりとして、宗教哲学、民俗学を専門とする鎌田東二教授が、「<『はじ』の文化>再考〜『古事記からルース・ベネディクトまで』」という演題で発表しました。
 2012年は古事記編纂から1300年という節目の年にあたります。長年、古事記や神話の研究を重ねる鎌田教授は、昨年秋の『古事記ワンダーランド』(角川新書)の上梓をはじめ、古事記や神話を独自の視点で読み解く解説書を多数出版しています。そのなかで教授は、古事記に見られる「はじ(辱・恥)」の感情が神々の身体の異様さに伴って生起されることに注目。イザナギ、イザナミ、トヨタマビメなど神話に代表される神々の物語に登場する「はじ」に関するエピソードを紹介。日本研究で知られるルース・ベネディクトが『菊と刀―日本文化の型』で語っていた「恥の文化」論、柳田國男の「罪の文化と恥の文化」(『民俗学研究』)、や作田 啓一の『恥の文化再考』などで論じられる「恥」と対比し、神話に表出される激烈な神々の「はじ」の感情と身体の変化が、日本人の精神性と身体性にいかに強く関わり、現代まで脈々と流れ続けているかを考察しました。
 また、「負の感情」を鎮めるために歌や祭りが用いられ、芸能へと繋がるプロセスを紹介。はじを源泉とする負の感情を鎮める方法としての歌や祭りの誕生について論じながら、「はじ」が発する感情と身体の内実と構造をより深く掘り下げ総合的に研究する必要があると話しました。
 
■指定討論 加藤忠史 理化学研究所脳化学総合研究センター シニア・チームリーダー・精神医学、脳科学
PC153124.JPG 研究会の指定討論者として、理化学研究所脳科学総合研究センターより加藤忠史先生にお越し頂きました。
 加藤先生はセンターの活動報告全体の感想として「こころの未来研究センターは、学会の枠を超えた非常にユニークな活動をおこなっていて、他にない研究の場だと思う」と述べ、各発表に対し、次のように話されました。
 「船橋先生は感情の物質的基盤としての身体を追究しており、ベッカー先生は対人関係や医療看護のなかで生じてくる感情、身体について研究を進め、鎌田先生は、個としての人を超えた社会の根底に流れている普遍的なテーマを扱っている。
 脳の生理学的な事象と対応させる船橋先生の研究では『ものの好み』に関係する各要素を分解し検証し、ベッカー先生は、『燃え尽き』という複雑な感情をSOCによって要素的部分をブレイクダウンして社会的な枠組みのなかで対応する方法を研究しているといえる。鎌田先生は、要素に分解するというよりは全体へ、という逆の強いベクトルが感じられ、千年の歴史を超えた普遍的なテーマとしての『はじ』を考察していたように思う。
 私たちは物質的な存在ではあるが、そこからできた脳が固体として活動して社会を形成している。我々の住む世界は多次元的であり、多次元だからこそ様々な出来事が起き、起きることそれぞれは様々な階層の境界面で起きている。そのようななか、いま起きている様々な社会問題が多次元的な存在としての人間の階層、その摩擦の間で起きているといえるのに関わらず、現代は学問が細分化し硬直化しており、ダイレクトに回答を与えることができない。そのようななか、こころの未来研究センターは、一見すると水と油のようなテーマを扱う分野を融合させる他にない学術センターであり、社会における『界面活性剤』のような役割を担っているといえる。今後のセンターの活動にも期待していきたい」。
 その後、報告を行った教授らをまじえた総合討論の場があり、全体を通しての質疑応答とディスカッションが活発に行われました。
■ポスター掲示およびポスターセッション――稲盛財団記念館3階大会議室
 報告会当日は、大会議室にて研究ポスターが掲示され、2時45分から3時30分までポスターセッションの時間が設けられました。
 センターにおける各研究プロジェクトを紹介する29枚のポスターが一堂に貼り出されるなか、報告会に参加したセンター内外の研究者や学生らが集い、それぞれのポスターの前で活発にディスカッションが繰り広げられました。
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当日配布されたアブストラクト集はこちらです。
 

2013/01/07

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