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こころの未来研究センター研究報告会2013「こころの社会性」を開催しました

 こころの未来研究センター研究報告会2013「こころの社会性」が、2013年12月15日(日)、稲盛財団記念館3F中会議室(講演会場)、大会議室(ポスター展示)にて開催されました。
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 満員となった中会議室では、はじめに吉川左紀子センター長がこの1年間のセンターの取り組みについて話しました。上廣倫理財団の寄付により本年新たに開設された「上廣こころ学研究部門」で、「こころと倫理をつなぎ未来をひらく学際研究」をテーマに各種研究プロジェクトが進んでいること、昨年度に設置された連携MRI研究施設が本年度から本格稼働し、fMRIを用いた研究がセンター内外の研究者によって活発におこなわれていること、研究と社会を結ぶ新たな取り組みとして「支える人の学びの場 こころ塾 2013」や「こころを知る、未来を考えるーダイアログBAR in 京都大学こころの未来研究センター」を開催したことを紹介しました。また、センターの活動の方針として、多様性を生かしながら「研究・教育・社会発信」の3つの柱をそれぞれ大切にし、学際センターとして今後も「こころの知」を探求していきたい、と話しました。
 一つ目の報告では、阿部修士准教授が「正直さには意志の力が必要か:脳科学からのアプローチ」という演題で、ヒトの嘘を脳科学的に解明しようと取り組んだ研究成果を紹介しました。fMRIを用いた正直さ・不正直さの脳機能画像研究を取り上げ、「正直に振る舞うためには意志の力が必要か否か」という問いに対して多方面からアプローチする試みを紹介し、脳の報酬系と呼ばれる領域と、意図的な行為のコントロールを行う前頭前野の相互作用に関する最新の実験結果について紹介しました。
 二つ目の報告では、内田由紀子准教授が「地域コミュニティの幸福感:文化心理学からのアプローチ」という演題にて報告。はじめに「なぜ今、幸福感研究なのか?」という、世界的に注目度が高まる幸福感研究の大きな流れを解説し、続いて文化心理学の視点から「日本人と幸福感」の関係について考察。さらに現在、膨大なデータの収集をおこない分析を進めている「地域の幸福感研究プロジェクト」を紹介して、農村地域社会と漁村地域社会、それぞれにおける幸福感の特徴や「人々のつながり」がどのように機能し、地域社会に影響を与えているかを考察しました。
 三つ目の報告では、河合俊雄教授と畑中千紘助教が「発達障害と現代の意識 ―臨床心理学からのアプローチ-」という演題にて報告。近年増え続ける発達障害への心理療法的アプローチに取り組み、現代の意識にまで踏み込んだ研究を進める河合教授と畑中助教は、「主体の弱さ」という発達障害の特徴について解説し、心理臨床によって主体が発生していくプロセスについて、数々のプレイセラピーの実例を取り上げながら紹介しました(本テーマの研究成果につながる書籍『大人の発達障害の見立てと心理療法』が11月に創元社から刊行されています)。
 その後、指定討論がおこなわれ、ディスカッサントとして熊野英介アミタホールディングス株式会社代表取締役会長兼社長・公益財団法人信頼資本財団理事長と三嶋理晃京都大学理事(国際担当)・京都大学医学部附属病院病院長よりそれぞれコメントを頂きました。熊野氏は、阿部准教授の研究報告に対して、先進国に住む人たちのデータと、発展途上国の人たちのデータとを比較したら、結果には違いがみられるのではないかと問いかけ、内田准教授の研究報告には、「安心」を担保としていた日本古来の社会が「信頼」を担保にする近代社会に変化したとき、日本人の幸福とどのように折り合いをつけてゆくべきかと問題提起しました。河合教授と畑中助教の研究に対しては、個を確立することと他者を意識して社会性を身につけることとの間のバランスが重要であり、経済最優先で進行する現代社会と個性が埋没しつつあるこころの在り方を、今後どう変化させていくのがよいのか、脳科学研究への期待感と共に問いを投げかけました。
 続いて三嶋氏は、「呼吸器内科医として死に直面した人々の試練、葛藤をみつめてきた経験があるため、今回の報告会の内容は非常に興味深かった」と感想を述べ、阿部准教授の報告に対して「こころの研究が理系の分析的なサイエンスに近付いている。今後さらに『嘘を言わなければならない人間の葛藤』など複雑な部分での研究にもチャレンジしてほしい」とコメントしました。内田准教授の報告に対しては、「京大ブータン友好プログラムでブータンを訪問し、それを機にブータンと京大で医療交流協定を結んだ。若い医師をに送り、そこでの経験を通じて国際感覚を身につけてもらうとともに幸福とは何かについて学ぶ機会を得ている」と話し、河合教授と畑中助教の報告に対しては、「今の社会にとって非常に大切な研究。発達障害の人は外から見てすぐに障害があるとは分からないので生き辛いところがある。今後も発達障害の人たちのケアのために研究を進めてほしい」と話しました。最後に、三嶋氏はセンターの取り組みについて、「京都大学が数々の研究成果を社会に出すことができたのは、ダイバーシティ(多様性)の賜物。こころの未来研究センターは京都大学のシンボル的存在。今後も多様性を大切に発展してほしい」と期待感を示し、討論を結んでいただきました。
 また、大会議室ではセンターの連携研究プロジェクトを紹介する研究ポスターが掲示され、ポスターセッションの時間には、報告会に参加したセンター内外の研究者や学生が、それぞれのポスターの前で、研究内容についての活発な意見交換をおこないました。
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[開催ポスター]
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[DATA]
京都大学こころの未来研究センター 研究報告会2013「こころの社会性」
▽日時:2013年12月15日(日)13時~17時30分(開場12時30分、ポスター会場は12時~)
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階 中会議室(ポスター会場:大会議室)
▽ 対象:研究者、学生
▽プログラム
・13:00-13:15 挨拶:吉川左紀子 (こころの未来研究センター長)
・13:15-13:55 「正直さには意志の力が必要か:脳科学からのアプローチ」阿部修士(こころの未来研究センター上廣こころ学研究部門特定准教授・認知神経科学)
・13:55-14:35 「地域コミュニティの幸福感:文化心理学からのアプローチ」内田由紀子(こころの未来研究センター准教授・社会心理学, 文化心理学)
・14:35-14:45 休憩
・14:45-15:25 「発達障害と現代の意識:臨床心理学からのアプローチ」河合俊雄(こころの未来研究センター教授・臨床心理学)、畑中千紘(こころの未来研究センター上廣こころ学研究部門特定助教・臨床心理学)
・15:25-16:00 ポスターセッション
・16:00-16:30 指定討論:三嶋理晃氏(京都大学理事(国際担当)、京都大学医学部附属病院 病院長)、熊野英介氏(アミタホールディングス株式会社代表取締役会長兼社長、公益財団法人信頼資本財団 理事長)
・16:30-17:30 総合討論
▽主催:京都大学こころの未来研究センター
▽参加者数:70名
プログラムとアブストラクトはこちらです(PDFファイル 0.5MB)

2013/12/26

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