福岡県立明善高校の生徒54名がセンターを訪問し、吉岡洋特定教授、阿部修士特定准教授、佐藤弥特定准教授、上田祥行特定講師の講義を受けました
2018年7月31日、福岡県立明善高校の生徒54名がセンターを訪問し、吉岡洋特定教授、阿部修士特定准教授、佐藤弥特定准教授、上田祥行特定講師の講義を受けました。
明善高校は「知力を以て社会に寄与する人材を育成する」目的で「高い志」、「豊かな人間性」、「確かな学力」を有したグローバルリーダを育成する教育活動を展開しています。今回は理数科コース1年の30名、総合文科コース1年の24名、計54名が「大学訪問研修」でセンターを訪れ、目に見えない”こころ”に関する知見を深めました。
まず、美学・芸術学の吉岡特定教授からセンター全体の紹介があり、オランダ人画家、レンブラントの絵画『夜警』を例に、美術作品をより深く鑑賞する話がありました。美術館で絵画を鑑賞する際に目にするキャプションボードには、アーティストの名前、作品名、年代、などが書かれています。名前には、両親の名前や、地名が使われていたりして、本人の背景がわかる情報が込められていることや、古い絵画には作品名がない場合が多く、後に他の作品と区別をするために作品名をつけられたりすることや、年代からは作品が生まれた国の当時の情勢を考慮することで絵画に込められた様々な情報を得ることができると説明しました。生徒からは「私は美術館で絵画を鑑賞することが好きですが、これまではただ絵を眺めているだけでした。先生に教えてもらったことで、これから美術館鑑賞をもっと深めたい」と感想がありました。
次に、実験心理学・認知神経科学の佐藤特定准教授の「感情を表情筋筋電図で測る」と題した講義では、実際に生徒の顔に電極をつけて、感情を表情筋筋電図で計測する実習をしました。筋肉から生じる電気活動を筋電図で測定することで、感情価を測ります。これまでの研究では、快の時に頬(大頬骨筋)が、不快の時には眉(皺眉筋)が活動するという報告がされています。頬と眉の部分に電極をつけた被験者の生徒に感情喚起する映像を見てもらったところ、愉快なシーンでは大頬骨筋が、暴力的なシーンでは皺眉筋が活動するデータが示されました。このように感情の計測を科学的にできることは、とても有用であり、効果的な商品開発などに役立っていることが話されました。
続いて、視覚科学・認知科学の上田特定講師からは「私たちはどうやってものを見ている?-探索課題で明らかになる視覚認知―」と題した講義。生徒にいくつかの視覚探索課題を出題して、1つの特徴はすぐ探し出せるが、特徴が2つになると探しにくくなる特徴統合理論を話しました。これまでの研究では、みんなが同じようにものを見ているように思われていたけれども、最近では生まれ育った環境やバックグランドでものの見方が違うことがわかってきたと話をし、低次の視覚処理が文化の影響を受けているという証拠のデータを示しました。このようなデータは物理学のような測定方法を用いて得られており、これを心理物理学的方法と呼んでいることの説明がありました。生徒からは「感情や心理は文系のテーマと思っていましたが、今回の授業で色々な測定機械や測定方法などを見て、科学として法則を探究できること分かり、 興味を持ったので本など読んでみたいです。」と感想がありました。
最後は、センター連携MRI研究施設に場所を移動して、認知神経科学の阿部特定准教授からMRI装置を用いた実験と講義がありました。近年、脳の活動を間接的に測定することが可能なfMRI(機能的磁気共鳴画像法)が人の脳機能研究に使われています。
今回の実験では、センターのスタッフが被験者となり、MRI装置の中で左右手指の運動の課題を行い、右手の運動の際は、脳の左半球の運動野が活動していること、左手の運動の際は脳の右半球の運動野が活動していることを確認しました。質疑応答では「どんな病気やケガの時にMRIを使って検査をするのか?」「レントゲン、CT、X線との違いは?」といった質問がありました。最後に「ここで得た知識はきっと何かにつながると考えています。進路を考えるうえでこの経験を糧にしたいです。」との感想がありました。阿部特定准教授から「将来、何に興味が出てくるかわかりません。文系だから、理系だからと、視野を狭めず、いろんな学問に興味を持って学んでほしい。」とアドバイスがありました。
2018/08/06