公開講座「芸術と〈毒〉」を開催しました
公開講座「芸術と〈毒〉」を2018年9月16日に稲盛財団記念館3階大会議室で開催しました。
公開講座の企画者でファシリテーターでもある京都大学こころの未来研究センターの吉岡洋特定教授をはじめ、埼玉大学基盤教育研究センターの加藤有希子准教授、パリ第8大学造形芸術学部の大久保美紀講師、和洋女子大学人文学部の小澤京子准教授の4名の講師が「芸術と〈毒〉」をテーマにそれぞれの専門分野の観点から講演をし、最後は講師4名と参加者との全体討論を行いました。なおパリ在住の大久保講師は、スカイプで参加されました。
吉岡洋特定教授の「芸術と〈毒〉という問題系」、加藤有希子准教授の「毒から抗鬱剤へ―新印象派、ライリー、毒と悪意のない世界へ?」、大久保美紀講師の「不協的調和―アートのファルコマン的アプローチの模索」、小澤京子准教授の「絵画の毒:絵の具の物質性について」と題した各講演では、〈毒〉をその両義性においてとらえる〈ファルマコン〉のような概念が、現代の社会的な文脈の中でどのような意味と可能性を持っているのかを、それぞれの立場から考察し、〈毒〉という概念を手がかりに、身体や生命、医療や健康をめぐって、近代的な二項対立(善か悪か)に束縛されないより柔軟な思考方法が提示されました。
全体討論では「異物と毒物、毒物と芸術の関係はどういうものなのか?」「昔、歌舞伎で使われていた鉛白など、体に害があるのに、なぜ芸術分野で鉛や水銀が使われ続けていたのか?」「毒というものが広い範囲でとらえられた。単なる毒ではなく少数派であるもの、暗いものが毒ととらえられていたり、芸術の中では毒はスパイスであったり、重要なものでもある。悪いものと思われているものが実は、共存関係にあることなどを理解することができた」といった質問や感想が参加者から述べられ、講師と活発な意見交換をしました。
[開催案内]
[DATA]
▽日時:9月16日(日)11:00~17:30
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽講師:吉岡洋特定教授(京都大学こころの未来研究センター)
加藤有希子准教授(埼玉大学基盤教育研究センター)
大久保美紀講師(パリ第8大学造形芸術学部)
小澤京子准教授(和洋女子大学人文学部)
▽対象:研究者・学生
▽参加者人数:25名
2018/09/21