1. top
  2. ニュース
  3. 一般公開イベント
  4. フランスで生まれた認知症介護の専門技術である「ユマニチュード」について学ぶ「こころ塾2018特別編」を開催しました

フランスで生まれた認知症介護の専門技術である「ユマニチュード」について学ぶ「こころ塾2018特別編」を開催しました

 
 2018年12月1日、吉川左紀子教授の企画・進行で、フランスで生まれた介護の専門技術である「ユマニチュード」について学ぶ「こころ塾2018特別編」を稲盛財団記念館3階大会議室で開催しました。  
 まず、吉川教授から、こころの未来研究センターで2013年から実施している「こころ塾」の説明がありました。こころ塾は、教育や医療などの専門職の方々を対象にした、こころについての科学的知識や実践的知識を得る学びの場です。
 今回の「こころ塾特別編」は、来日中だったユマニチュードの創始者でこころの未来研究センター特任教授のイヴ・ジネスト先生もサプライズで登壇し、ディスカッションや会場との質疑応答に参加しました。

 

本田美和子先生

イヴ ジネスト先生    吉川左紀子教授

 プログラムのはじめに、国立病院機構東京医療センター総合内科医長の本田美和子先生が「ユマニチュードの哲学と実践」と題して講演しました。
 冒頭、3人の認知症患者さんがケアを拒否する映像が流れました。シャワーを拒否する患者さん、食事や投薬を拒否する患者さん、口腔ケアを拒否する患者さん。本来、食事をしたり体を清潔にしたりする心地よいはずのケアの時間が、患者さん、看護師さんの双方にとって強いストレスを感じる時間になっている様子が紹介されました。日本では認知症の患者さんを担当する看護師、介護士の離職率は高くなっています。一方で、日本の社会では85歳以上の3人に1人には認知機能の低下がみられ、認知症患者が増加しています。介護する人の優しい気持ちを、ケアを受ける人にきちんと伝えるためのスキルがユマニチュードだと本田先生は話しました。

 ユマニチュードは誰でも学ぶことができるケアの方法です。「見る・話す・触れる・立つ」という4つのコミュニケーションの要素を軸に、ケアする人とケアされる人がよい関係を構築し、共によい時間を過ごしたと感じられるケアになることがゴールです。ケアをする人も、自分たちのケアで相手をよい方向へ変えられると実感できれば、仕事のやりがいや、満足度が上がります。ユマニチュードを導入しているフランスの病院では、認知症患者の看護師の離職率が低下し、医療費(投薬等)の減少といった効果もみられたそうです。

 ユマニチュードは、認知症患者、高齢者、子ども、重症・軽症患者等、誰にでも利用できるケアの技法です。急性期の医療を行う集中治療室でもユマニチュードが使われ、その有効性は統計的に立証されているそうです。本田先生は、介護家族にもトレーニングを行い、ユマニチュードのケアを継続して行うことで家族の介護に対する負担感が低下するという結果を得ました。さらに、福岡市では小学校教育にもユマニチュードを取り入れるなど、市民全体がユマニチュードを学べる環境を推進している取り組みが紹介されました。

 京都大学では現在、ユマニチュードの有効性に関して情報学と脳科学の研究が進められており、ケアによる生理的な変化を検証する試みも始まっています。本田先生は、ユマニチュードは現在も有機的に進化し続けています、と講演を締めくくりました。
 本田先生の講演の後ジネスト先生が登壇し、ユマニチュードは40年間3万人を超える患者さんと向き合いながら編み出した実践的なケア技法であること、またそのスキルは自由、平等、博愛の哲学に基づいて生み出されたものであり、ケアだけでなく、社会にとってとても必要なものと考えています、と述べました。

吉川友先生

 続いて株式会社スマイルリンクデイサービス笑顔ぷらす事業所長で、作業療法士の吉川友先生から「認知症に対する作業療法からのアプローチとユマニチュードへの期待」と題する講演がありました。 吉川先生は、作業療法士の仕事は患者さんができる事に注目してその力を最大限に引き出し、その人らしい生活がおくれるように支援すること、と話し、「できる事」を見つけるのは難しいが、ユマニチュードの基本を学びコミュニケーションをしていく中で、サインを見逃さず、「意味ある作業」を見つけやすくなったと、具体例を紹介しました。


 最後のディスカッションでは、「家族支援についてできることは?」「ケアは2人でやるのですか?」「患者さんの自由は大切だが、安全と自由が対立している。どうすべきか?」など、会場からの質問について、先生方が答えました。
 「コミュニケーションをとるのが苦手です。どうしたらいいですか?」の問いには、ジネスト先生が、触れ方や、アイコンタクトの方法について参加者を交えてデモンストレーションを行いました。参加者同士が立ち上がって、ジネスト先生が教えるコミュニケーションを試みるなど、会場は終始、和やかで温かい雰囲気に包まれていました。

〇「家族支援についてできることは?」の問いには、『高齢者ケア研究室チャンネル』の紹介がありました。ユマニチュードを使ったケアの方法を映像でご覧いただけます。こちらをご覧ください






〇受講者の感想(開催後のアンケートから抜粋)
・「理論的、哲学的、医学的に説明があり、理解できた(看護師)」
・「とても素晴らしい講座でした。人間として、人間にかかわるうえで必要なことを再認識させていただいたこと嬉しく思いました。ぜひ勉強したいと思います。(精神科相談支援員)」
・「ジネスト先生のお話が聞けるサプライズをありがとうございます。ユマニチュードのすばらしさを学ぶことができました。ケアマネージャーですので、身体的ケアの機会はほとんどありませんが、利用者さんとのコミュニケーションに活用できるようぜひユマニチュードを学んでみたいと思います。(介護支援専門員)」
・「『ユマニチュード』という単語はきいたことはありましたが、今回の講演でどのような考えに基づいているのか知ることができました。本田先生のお話では、今、医療現場で起こっている問題についてつきつけられたように思いました。(言語聴覚士)」
・「ジネスト先生から理念を直接聞けたのは大変有意義でした。相手の尊厳も大切だということは現場の忙しさ等で忘れがちになりますが、”意識的に実践する”ようにすれば忘れずに済みそうです。(言語聴覚士)」
・「私たち人間すべてが平等であり、権利をもつということ。大切にされることを伝えることが大切で、伝わらなければ意味がない。伝える技術が重要だということがわかった。ユマニチュードを学び、認知症の方に対してぜひ実践していきたいと思った。又、講義全体を通してこころが温かくなり、感動的で涙があふれそうになった。(看護師)」
・「ユマニチュードは認知症の方だけでなく、すべての人とのコミュニケーションに有効だと思います。相手を人として尊重する気持ちを持ち、信頼することが大切だと思いました。(保健士)」
・「ユマニチュードにとても興味があり、今日は楽しみに伺いました。率直なお話ありがとうございました。実際に映像で出てくる困った場面は本当によくあることです。この技術を学んでいけると、きっと優しい人間関係が作っていけるように思います。また、本田先生だけでなく、実際にジネスト先生にもお話をいただけて感激の時間でした。(介護支援専門員)」
・「吉川さんのお話を聞いて、実際に意識しながら関わりをされ、気づきが大変多かったのだなと思いました。それが伝わってとても素敵でした。(看護師)」


[開催案内]


[DATA] 「支える人の学びの場 医療および教育専門職のための こころ塾2018特別編」
▽日時:2018年12月1日(土)13:00~17:00
▽会場:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽プログラム:
13:00~ 開催挨拶 吉川左紀子(京都大学こころの未来研究センター教授)
13:10~14:40 講演① 本田美和子(独立行政法人国立病院機構東京医療センター総合内科医長)
15:00~15:40 講演② 吉川友(笑顔ぷらすリハビリ訪問看護ステーション)
15:50~17:00 ディスカッション(本田美和子、イヴ・ジネスト、吉川友、司会:吉川左紀子)
▽参加人数: 約80人
主催:京都大学こころの未来研究センター

2018/12/19

これまでのニュース
年別リスト

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

PAGE TOP