2021年度第1回京都こころ会議研究会が開催されました
2021年6月9日、第1回京都こころ会議研究会が開催され、東京大学大学院人文社会系研究科在籍で日本学術振興会特別研究員PDの原塁さんが、「武満徹の霊性:関係、自然、共同体」と題した発表を行いました。
発表の前半では、1967年発表の《ノヴェンバー・ステップス》に至るまでの武満の創作が考察され、この時期の武満作品の特徴として、論理的構築を目指す西洋の音楽と非合理性を備えた東洋の音楽という二項対立、また、その間の弁証法的図式という点が検討されました。後半の発表では、1970年代以降インドネシアの音楽との出会いに促されながら、武満が上記のような二項対立の図式から、「類似」や「アナロジー」といった前近代的なエピステーメーへと力点を移していった過程が考察されました。発表の最後では、こうした後期の武満の創作が、人・自然・超自然を繋ぐ大きな関係性を意識しながらも、作曲家と友人・家族といった、ホーリズムには回収されない二人称的な小さな関係性から伝播していく共同性を重要視していたことが示されました。
続くディスカッションでは、心理学や芸術学など様々な立場の研究者から意見が出され、邦楽における神の在と不在、武満音楽における個と普遍の問題、また1970年代以降の「前衛」の収束と消費社会や商業主義との関わりといった点について、積極的に議論が交わされました。
2021/06/29