上田祥行特定講師らの研究が国際学術誌『Frontiers in Psychology』に掲載されました
上田祥行特定講師、人間・環境学研究科の大塚幸生(筆頭著者)さん、齋木潤教授らの研究が国際学術誌『Frontiers in Psychology』に掲載されました。
近年の文化研究では、世界各地で調査された多数のサンプルを用いて、人間の行動の普遍性や多様性が議論されています。我々は、この議論を心理学における研究活動の領域へと拡張することを試みました。研究機関の多くには、基礎や臨床、応用など心理学の様々な分野の専門家が在籍しています。また、どの地域の研究機関でも、体系的でバランスの取れた研究教育を目指しています。それにもかかわらず、研究者は一般的に、心理学における研究活動にも、地域差や時代的なトレンドがあるように認識しています。これらは直感的な議論であり、定量的な分析はされていません。本研究では、心理学研究論文のアブストラクトを対象に、著者の所属地域と出版時期を共変量としたトピックモデリングを実施しました。その結果、基礎研究に関するトピックの比率は北中米の研究機関で高く、臨床研究に関するトピックの比率は欧州の研究機関で高いことがわかりました。興味深いことに、トピックモデルで示された地域差は、キーワードだけを使った分析では観察されず、アブストラクトを分析することではじめて特性が明らかになります。さらに、心理学の中で神経科学分野に関連したトピックは、年々増加している傾向が見られましたが、この傾向は心理学研究の専門雑誌Psychological Scienceでは確認できませんでした。これらのことから、心理学の研究対象やアプローチの仕方は普遍的ではなく、研究が実施された地域や時代ごとに、研究者の興味が反映されたものであることが伺えます。
◇書誌情報
Otsuka, S., Ueda, Y., & Saiki, J. (2021). Diversity in psychological research activities: Quantitative approach with topic modeling. Frontiers in Psychology, 12:773916. doi: 10.3389/fpsyg.2021.773916
◇論文URL
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2021.773916/full
2021/12/17