ベッカー教授が第36回品川セミナーで講演しました
第36回品川セミナーで、5月10日(金)にカール・ベッカー教授が講演しました。
▽日時:2013年5月10日(金)17:30~
▽場所:京都大学東京オフィス
▽講師:カール・ベッカー(こころの未来研究センター・教授)
▽『生老病死に対する日本人の経験智と自己決定』
「日本の伝統文化では、在宅で大家族に囲まれながら、死の看取りを行ってきました。ところが、過去数十年の間、死の看取りは在宅から病院、大家族から医療従事者へと渡りました。患者自身の死に対する不安などを話せなくなったばかりか、遺族の悲嘆を消化する場もなくなりつつあります。納得できない死別や、消化できない悲嘆は、精神的な後遺症に及ぶという深刻な問題に対して、本公演では、縁者のカウンセリングや看取りの体験をベースに、日本人の経験智に基づき、死別の受容のプロセスを再検討・再評価したいものです。なお、自己決定という名の下で、現代医学が可能にしてきた様々な治療法を、一般市民の患者まで選択する時代となりましたが、その「自己決定権」をどのように実行すれば良いかについても一緒に考えたい。」
▽HP:http://www.kuic.jp/top_sinagawa36.html
本講演では、現代人の抱える死別の問題に、日本人の経験値から学び再評価することで、これから私たち自身が、どのように死と向き合っていくかについて考えました。
死に至る要因はストレスにあるという話題から始まり、和食・運動・瞑想など、かつて日本人は伝統文化の中で、独自にストレスを回避してきたことを指摘するベッカー教授。また、近代以前死を看取ってきた日本人にとって身近であった「死」も、看取る経験をほとんどしていない現代の日本人にとって、未知ゆえの恐怖の対象となっています。医療の発達により、様々な治療法の選択肢が増えましたが、肝心の一般市民が「自分で選択する(自己決定)」という責任を負えていません。
グリーフケアやホスピスを、日本人の経験智から再評価していくだけでなく、「迷惑をかけない手続き」として、自分自身にしかできない死の準備(自己決定)について、具体例を踏まえながら一人一人が自分自身の問題として考えるセミナーとなったようです。
・「いかに生きるか」を考えるときに、「いかに死と向き合うか」が大切であることに気付かされた。死生観と宗教(信仰)をいかに統合できるか、現代史学と生死観を一つにできると良いと思われた。
・日本人の持つ生老病死に対する考え方、行動を、先生が日本人以上に鋭い視点で分析され日本人の良さを日本人以上に理解していただいていることに驚きました。これを機会に、自分の生老病死に対する考え方を見直し、整理したいと思います。
・迷惑をかけないための生前の自己決定の大切さを学びました。
・グリーフケアが、法事等に関係していることを聞いて、納得しました。グリーフケアという名を聞く前に、残された人たちは死んだ人の悲しみをのりこえてきたからです。
□京都大学附置研究所・センターのページ
http://www.kuic.jp/index.html
2013/05/30