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河合教授による村上春樹最新作の論評記事『色彩を持たない多崎つくるの現実への巡礼』が『新潮』7月号に掲載されました

130617shincho.png ベストセラー小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(村上春樹/著)を論評した河合俊雄教授の記事、『色彩を持たない多崎つくるの現実への巡礼』が、『新潮』2013年7月号に掲載されました。
 近年、ユング派分析家としての独自の視点で論じる村上春樹小説論が注目されている河合教授。2011年には『1Q84』を中心とする一連の作品を夢分析の手法から内在的に捉えた『村上春樹の「物語」夢テキストとして読み解く』(新潮社)が刊行されて話題となりました。本年10月にスイス・チューリッヒで開催される “The Zurich Lecture Series in Analytical Psychology” に講師として招かれており、村上作品と中世の物語をテーマにレクチャーし、その講義録(英文)が欧米で出版される予定です。
 河合教授の村上春樹小説論の最新版となる今回の記事では、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』が、過去の村上作品から新たな展開を遂げた重要な作品として紹介されています。

『色彩を持たない多崎つくるの現実への巡礼』河合俊雄
 最新作の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』については、既によく指摘されているように、『ノルウェイの森』以来のリアリズムの小説で、主人公の個人的な関係に焦点を当てている印象がある。しかしこれは個人的な問題でありながら、現代の意識とこころの課題に向き合ったものと考えることができないであろうか。その意味でこれはこれまでの村上春樹の作品を受けつつ、新たな展開を示しており、現代を生きる人たちにとって重要な示唆をしているものと考えられるのである。
(記事より抜粋)

 論評では、『1Q84』や同じリアリズム形式をとる1987年の作品『ノルウェイの森』などとの具体的な対比例の数々が興味深い内容で挙げられています。これまで代表的なパターンとして描かれていた「超越的な世界」が本作では二世界的にバラバラに存在せず、同じ内的世界の過去に設定されていること、『1Q84』における高速道路や『ねじまき鳥クロニクル』における井戸、『ダンス・ダンス・ダンス』におけるエレベーターなどの垂直的なメタファーがなく、現実的で水平的な移動や過去へと向かう時間的な移動のみであること、『1Q84』で語ることができたユング心理学からの「四位一体性の図式」が本作では当てはまらず、鍵となる数が「四」から「五」へと移行したことなど、これらの意味について鋭い考察と圧倒的な説得力で語られています。作品論を通して、現代における人々のこころの課題が浮き彫りになると共に、心理学者の視点で村上作品を読み解くことの面白さが実感できる論評です。
□関連情報
『村上春樹の「物語」―夢テキストとして読み解く―』(河合俊雄/著、2011年、新潮社)
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2013/06/19

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