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第7回身心変容技法研究会「『吾に辱(はじ)見せつ』を考える~『負の感情』の発生と鎮め方」が開催されました

12月6日、第7回身心変容技法研究会「『吾に辱(はじ)見せつ』を考える~『負の感情』の発生と鎮め方」が稲盛財団記念館中会議室にて開催されました。
PC062940.JPG▽日時:2012年12月6日(木)13:00-17:00
▽会場:稲盛財団記念館3階中会議室
▽テーマ:「吾に辱(はじ)見せつ」を考える~「負の感情」の発生と鎮め方
▽プログラム
13:00~14:40 発表1「『古事記』からのアプローチ」
発表者:鎌田東二(こころの未来研究センター教授・宗教哲学・民俗学)
14:50~16:30 発表2「臨床心理学からのアプローチ」
高見友理(島根大学教育学部附属教育支援センター講師)
16:30~17:00 総合討論
全体の司会進行:鎌田東二
 第7回目を迎える身心変容技法研究会では、『「吾に辱(はじ)見せつ」を考える~「負の感情」の発生と鎮め方』というテーマで、本研究会の研究代表者をつとめる鎌田東二教授と高見友理 島根大学教育学部附属教育支援センター講師が発表を行いました。
 鎌田教授は、古事記に登場する「吾に辱(はじ)見せつ」という言葉と説話パターンを取り上げ、世代を超えて日本人のこころに流れる「はじ(辱・恥)」の感情に注目。物語のなかで神々の感情を激発させ、怒りと共に異様な形相を伴って関係分断をもたらす引き金となる「はじ」という負の感情について、各ストーリーを読み解きつつ考察しました。
 はじめに教授は、今回のテーマが生まれた経緯を説明。8月に東日本大震災の被災地を訪問した際に出逢った荒神社の西舘宮司から聞いた喪失と再生にまつわる出来事(※)や、10月に出雲の地、松江で行われた日本パーソナリティ心理学会に参加した際、高見講師と共に猪目洞窟を訪れたことを紹介。それぞれのエピソードを繋げるテーマが、古事記における国譲り神話、国生み神話と繋がり、そこから出てきたのが「吾に辱(はじ)見せつ」に代表される負の感情であり今回のテーマとするに至った、と説明しました。そして、神話分析から「はじ」の感情と身体表現を、後半の高見講師は臨床心理の実例から「負の感情」とその鎮め方について発表する旨を紹介しました。(※詳しいお話はこちら
 続いて古事記の構成要素である宇宙起原神話、人類起原神話、文化起原神話を解説したのち、古事記上巻の構造について3つのポイントを説明。世界構造にある三層性、天皇の系譜、世界を「修理」するという生存戦略が語られていることなどを解説しました。さらに今回のテーマとなる「喪失」「はじ」などのキーワードが含まれる冒頭の国生み神話からはじまって、古事記上巻における4つのステージ展開(起承転結)を紹介しました。
 10月に出版した自著『古事記ワンダーランド』に込めた古事記のおもしろさ、おかしさのエッセンス、そして主要なキャストであるスサノヲの母恋物語、父による追放、怪物退治など一連の出来事と歌の発生について触れたのち、教授は本論である「吾に辱(はじ)見せつ」が含まれる古事記の各エピソードを解説。自分の腐敗した姿を盗み見されてしまったイザナミが感じた「はじ」、また、大山津見神が醜いイハナガヒメを送り返された際に感じた「はじ」、トヨタマビメが八尋鮫(やひろわに)に化けて出産する姿を見られ子を置いて去るほどに感じた「はじ」、それぞれの共通性を指摘しました。本居宣長、倉野憲司、西郷信網らによる過去の古事記研究を引用しながら、これまで大きく取り上げられることのなかった「吾に辱(はじ)見せつ」に関連する激しい負の感情が、日本人に脈々と流れる独自のものであるとし、その「はじ」が世界や関係性に修復不可能な亀裂・断裂・分断を産み出す源泉となりうると考察しました。
 発表のなかで、教授は出席者の女性に向け、『古事記』に記された女神の「はぢ」の感情の起こり方に対する意見を求め、参加者からは「隠していたものをあばかれ、聖なるものを犯されたときに生じる怒りは理解できる」「見られたことで憎しみが生じたのでは」などのコメントがありました。また、篠原資明 京都大学大学院人間・環境学研究科教授(哲学・美学・詩人)からはオルフェウスとの相違点、歌であればこそ負の感情が鎮められる点などの意見がなされ、奥井遼 こころの未来研究センター特定研究員からは「注目すべきはイザナミではなくイザナギの(見畏みて逃げ還った)リアクションではないか」といった多彩な意見が述べられました。
 後半は、高見友理 島根大学教育学部附属教育支援センター講師が「選択性緘黙(かんもく)だった青年との面接過程 ホムチワケに見る『反英雄』のイニシエーションの視点から」という演題で、負の感情を臨床心理学からのアプローチから考察した発表を行いました。
 高見講師は、古事記に登場する緘黙の子・ホムチワケの説話に注目し、実際の心理療法の現場で出会った選択性緘黙の少年との長期に渡るカウンセリングのなかで、少年がいかに閉じていた世界から心を開き、現実の生活へと踏み出していった道のりを細やかに紹介。兄と共謀し天皇を裏切り、火のなかで子を産んで去ったサホビメを母に持ち、言葉を発しないまま訪れた出雲の地でヒナガヒメと一夜を共にした際、ヒナガヒメの大蛇に変容する姿を見て逃げ帰ったのち話せるようになったホムチワケが歩んだ再生のストーリーと照らし合わせながら、自らを閉じて自分を語らなかった少年が、箱庭療法やカウンセラーとの対話を繰り返し重ねるなかで、自己否定から自己形成へ、カウンセリングとの結合から分離へ、そして現実生活へと踏み出していく過程を紹介。古事記と現代の心理療法の現場それぞれにおいて、負の感情がいかに鎮められていったか、その共通ポイントを挙げながら丁寧に解説しました。
 発表後には、「自分が語る身体と箱庭に関わる身体の違いは?」(鎌田教授)、「心理療法では何でも”言葉”にして治療するが、身体を使えばより効果があるのではないか」(舞踊、ダンスセラピーを専門とする木村はるみ 山梨大学准教授)、「第三のものがあって否定があり、否定の前に肯定があるのかもしれない」(篠原教授)など、多岐にわたるコメントが寄せられ、活発な議論が行われました。
以下、研究会ホームページに寄せた鎌田東二教授の報告コメントです。
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「『吾に辱見せつ』という『古事記』の言葉を、『古事記』そのものからと、現代の臨床倫理の現場の事例とを重ねるところから、挟み撃ちにしてみるという企画で、高見友里さんの反英雄イニシエーション・ホムチワケモデルの臨床事例があったために、『古事記』を古代人の心や感情の問題としてだけでなく、現代を生きるわたしたちの周りにある臨床事例として考えることができたことは、考察に立体性が生まれたと思います。
また、現代女性の感情の起こり方と『古事記』に記された女神や女性の「はぢ」の感情の起こり方に、意外な共通性や連続性があることに大変驚きました。1300年の時を超える『感情』というものがあるのですね。
また、篠原資明さんのコメントも面白く、話題の広がりと考察の糸口、(特に「第三のもの」)が色々ありました。
身心変容技法研究会ホームページ「研究問答」より)
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〜研究会風景・登壇者とおもなコメンテーター〜
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2012年の身心変容技法研究会は12月18日、第8回身心変容技法研究会+こころ観・ワザ学研究会合同研究会で終了となります。年があけて1月30日には第9回、1月31日には第10回(本年度最終)の研究会が行われる予定です。
研究プロジェクトについて、詳しくは「身心変容技法研究会」のホームページをご覧ください。
身心変容技法研究会HP
http://waza-sophia.la.coocan.jp/

2012/12/17

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