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映画『花の億土へ』作品パンフレットに鎌田教授の解説が掲載されました

1501kamata_ishimure.png 作家・詩人の石牟礼道子氏の世界を描いた映像作品であり、彼女の「最後のメッセージ」として制作された『花の億土へ』(監督:金大偉、制作:藤原書店、2013年)が各地で上映されています。その作品パンフレットの解説を鎌田東二教授が執筆しました。
 水俣水銀中毒事件をモチーフとした名著『苦海浄土』を世に出し、「近代とは何か」というテーマを常に現代人に問い続けてきた石牟礼氏。鎌田教授は、石牟礼氏の発するメッセージと存在感覚が「すべての衆生に仏性を見出し礼拝する常不軽菩薩と通底する天台本覚思想」に通じ、また『日本書紀』において様々な神が存在し草木生類がみな言葉を発していたとされる世界をあらわした一節を想起させる、と述べ、本作品を「世界の息吹を取り戻そうとする、静かな、しかし激しい闘いと交響のメッセージなのである」と綴っています。

解説 鎌田東二
 石牟礼道子さんの胸を衝く言葉の数々の中で、とりわけ目に触れるたびに峻厳にして哀切を感じるのが次の言葉である。「まぼろしの湖の上にひらくひとすじの道をあるいて/まだ息絶えぬ原始を看取りに/わたしは急ぐ」(「木樵り」)。
 昭和三十年代、水俣病が顕在化する過程で発せられたこの詩の言葉が、石牟礼さんの生涯を貫き告げる声であるような気がしてならない。その言葉は、荒野を歩く予言者、岬の突端で常世に霊送りするシャーマン、深い森の中で蹲って草木虫の声々に耳を傾ける巫女山姥、大都市を雷神の如く駆け抜ける閃光馬を想い起こさせる。そして、観世音菩薩が三十三身に化身して衆生済度の業を果たすように、その様々なる声と振る舞いによって、「花の億土」への道が啓かれる。(中略)
 「花の億土へ」は、「毒死列島」日本から、このような生きとし生けるものが呼び交し合う「草木ことごとくよく言語(ものい)う」世界の息吹きを取り戻そうとする、静かな、しかし激しい闘いと交響のメッセージなのである。
(かまた・とうじ/京都大学こころの未来研究センター教授)

 なお、2015年度前半に刊行予定の当センター広報誌『こころの未来 14号』には、鎌田東二教授による石牟礼氏へのインタビューが掲載される予定です。どうぞ楽しみにお待ちください。
□関連情報
映画『花の億土へ』上映情報 | 藤原書店
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました(石牟礼道子さんについて紹介)

2015/01/26

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