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こころの科学集中レクチャー「こころの謎~脳科学からの挑戦~」を開催しました

1603shuchu_poster.png 2015年度こころの科学集中レクチャー「こころの謎~脳科学からの挑戦~」が、2016年2月29日から3月2日にかけて稲盛財団記念館大会議室で開催されました。集中レクチャーは、3日間にわたり、それぞれの先生方の講義とディスカッションをおこなうユニークな試みです。一人の先生の授業から学ぶという従来型の学習スタイルではなく、研究者同士の最先端のディスカッションやそこから生じるアイディアの創発を目の当たりにする、非常にエキサイティングな時間です。
 今回のレクチャーでは、初日に北山忍先生(ミシガン大学心理学部教授/センター特任教授)から文化心理学における「文化」の意味とその学習プロセスについて、強化学習、遺伝子多型と社会的意味の観点から話題提供がありました。そしてこうした文化学習を通して根付いてくる「生きる意味」や「善の概念」が、進化的にどのように獲得され、人々の遺伝子発現に関連してきたのか、最新の文化神経科学的知見を交えて論じられました。
 2日目の杉浦元亮先生(東北大学 加齢医学研究所/災害科学国際研究所 准教授)のレクチャーでは、「自己」という概念を、脳機能から3層構造(身体的自己・対人関係的自己・自己の社会的価値)に分けて捉えつつ、各レベルでの順予測による随伴性の学習があるのではないかという枠組みが提示され、脳画像研究からの解説がありました。また、加齢とともに変化する脳・身体機能にどのように人が適応的な認知を行っていくのか、災害時のレジリエンスを支えるパーソナリティについても論じられました。
 
 最終日の渡邊克巳先生(早稲田大学理工学術院 教授)のレクチャーでは、人間の社会性を調べる上で、最小限の社会性が生じる実験室での認知活動を測定する「ミニマリスト」と、実社会に近い状況での活動を測定する「インクルーシブ」のアプローチが紹介されました。共同課題時における社会的抑制や促進が相手との相互作用により無意識的に生じていることや、動きや声などの身体性情報のフィードバックの効果、後付け的な認知が生じるプロセスなどが示されました。
 先生方の視点はそれぞれ、脳機能、認知行動機能、生理的機能、社会文化的意味の問題にいたるまで、社会科学の総合性を示す幅広さでした。一方で、人が社会の中のフィードバックを無意識的に受け取りながら、それを生理的反応の中で再生産させ、最終的には自己が生きる意義まで認識するに至ったという「人間観」の形成についての一貫したテーマにも収束していきました。毎回講演の後には講師同士ならびに受講生を交えた活発なディスカッションがおこなわれ、会場は3日間熱気に包まれていました。
(報告:内田由紀子こころの未来研究センター准教授)
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[DATA]
「2015年度こころの科学集中レクチャー こころの謎~脳科学からの挑戦~」
▽日時:2016年2月29日(月)、3月1日(火)、2日(水)10:00〜18:00
▽主催:京都大学こころの未来研究センター 「こころ学創生:教育プロジェクト」
▽講師:北山忍(ミシガン大学心理学部教授 文化・認識プログラム所長、こころの未来研究センター特任教授/専門:文化心理学、文化神経科学)、杉浦元亮(東北大学加齢医学研究所・災害科学国際研究所 准教授/専門:脳機能イメージング)、渡邊克巳(早稲田大学理工学術院 教授/専門:認知科学、認知心理学)
▽企画・進行:内田由紀子(こころの未来研究センター准教授)

2016/03/30

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