『ミネルヴァ通信「究」』に河合教授の連載第10回が掲載されました
ミネルヴァ書房の発行する月刊誌『ミネルヴァ通信「究」(きわめる)』6月号に河合俊雄教授の連載「象徴性と現代」が掲載されました。
10回目の今回は「象徴性と現代」がテーマです。
最近では象徴性から遠い人が増えていると言われますが、それは個人的な要因だけではなくて、現代においてすでに象徴性そのものが失われているのではないかということをユングを引きながら論じています。
次回はこうした現代的課題の実像とアプローチについてがテーマとなるようで楽しみです。
(解説:畑中千紘助教・上廣倫理財団寄付研究部門)
こころの最前線と古層(十)
「象徴性と現代」 河合俊雄
この連載でも何度か指摘しているように、近年において悩みや葛藤を持たなかったり、発達障害的であったりするクライエントが増えてきている。田中康裕が指摘しているように、そのような人たちの夢やイメージは「象徴性のなさ」を特徴としている(『大人の発達障害の見立てと心理療法』創元社)。
たとえば極端な場合は、自分の訪れた場所をそのまま箱庭に再現したり、現実で生じたことがそのままに夢に現れたりする。象徴性とは、字義通りのものや意味と区別されたメタファー的な次元である。それをユングは、未知のものを指し示すと表現した。あるいは現実と区別されたファンタジーの次元と呼んでもよいかもしれない。それに対して現実の全くの繰り返しであるものには字義通りの意味しかなくて、それを超えた何の象徴性も認めることができない。現実そのままというのは極端であっても、象徴的意味が見出しにくいイメージをもたらすクライエントは増加しているように思われる。
このような人が増えているということは、単に現代において象徴性に開かれていない人が増えているということだけではなくて、現代における象徴性そのものの喪失を示唆していると考えられないだろうか。….
(論考より)
「象徴性と現代」 河合俊雄
この連載でも何度か指摘しているように、近年において悩みや葛藤を持たなかったり、発達障害的であったりするクライエントが増えてきている。田中康裕が指摘しているように、そのような人たちの夢やイメージは「象徴性のなさ」を特徴としている(『大人の発達障害の見立てと心理療法』創元社)。
たとえば極端な場合は、自分の訪れた場所をそのまま箱庭に再現したり、現実で生じたことがそのままに夢に現れたりする。象徴性とは、字義通りのものや意味と区別されたメタファー的な次元である。それをユングは、未知のものを指し示すと表現した。あるいは現実と区別されたファンタジーの次元と呼んでもよいかもしれない。それに対して現実の全くの繰り返しであるものには字義通りの意味しかなくて、それを超えた何の象徴性も認めることができない。現実そのままというのは極端であっても、象徴的意味が見出しにくいイメージをもたらすクライエントは増加しているように思われる。
このような人が増えているということは、単に現代において象徴性に開かれていない人が増えているということだけではなくて、現代における象徴性そのものの喪失を示唆していると考えられないだろうか。….
(論考より)
出版社のページ(ここから『究』の講読が可能です)
https://www.minervashobo.co.jp/book/b286197.html
◆関連書籍
『大人の発達障害の見立てと心理療法 (こころの未来選書)』(創元社/2013年)
書籍の紹介記事は こちら
2017/05/25