こころの科学集中セミナー2012「原発と潜在認知」が開催されました
9月5日から7日までの3日間、こころの未来研究センター特任教授の下條信輔カリフォルニア工科大学教授による、こころの科学集中セミナー2012「原発と潜在認知」が稲盛財団記念館中会議室で行なわれました。
下條教授は現在、カリフォルニア工科大学生物学部の計算神経系教授として研究活動を行なっているほか、センターの特任教授として定期的に来日し、最新の研究動向を発信しています。東日本大震災直後からは、福島原発事故についての論考を朝日新聞社の言説サイト「WEBRONZA(ウェブロンザ)」に寄稿し、認知心理学者の立場から独自の意見提起を続けています。
今回のセミナーでは、これまで発信してきた原発に関する数々の論考を現時点で総括する試みとして、3日間に渡って原発をめぐる人間の心理や人間の在り方についてレクチャーを行ないました。
下條教授は自身の専門分野である知覚心理学、視覚科学、認知神経科学分野における研究事例やデータを用いながら、「潜在認知のバイアスと限界」をキーワードに「(1)ヒトの本性、認知の限界」「(2)ニュース/社会現象を読み解く新しい視点」「(3)原発をどうするのか」という3つの論点を軸に講義を進め、ヒトが原発という巨大システムとどう関わってきたのか、事故経験とどう向き合ったのか、未来のリスクと対峙するなかで今後の危機管理をどうすべきなのか、といった課題について鋭く分析、検証しました。
また、各日の発表後にはゲストとして初日は青野由利 毎日新聞専門編集委員・論説委員、2日目は利島保 広島大学名誉教授、3日目は高橋真理子 朝日新聞編集委員が登壇し、吉川左紀子こころの未来研究センター教授をはじめとするセミナー参加者も積極的に質疑に加わり、活発なディスカッションが行なわれました。
追記(10月5日):
セミナー初日ゲストの青野由利氏(毎日新聞)が、10月5日付の毎日新聞「発信箱:脳のクセと原発=青野由利(論説室)」で、本セミナーに参加した感想をもとにコラムを執筆されています。
記事はこちら >>毎日JP「発信箱:脳のクセと原発=青野由利(論説室)」
集中レクチャーの内容は以下の通りです。
▽タイトル「原発と潜在認知」(下條信輔 こころの未来研究センター特任教授)
▽開催日時:2012年9月5日(水)・6日(木)・7日(金)18:00-20:00
▽場所:稲盛財団記念館 中会議室
▽プログラム
<9月5日(水)>
セミナーの基本方針説明
レクチャー(90分)
1.ブラックスワンとビッグ・ミステリー
2.パニック行動と、危機管理。
3.心理リアリティと実態(体)リアリティ
討論(30分/ゲスト:青野由利 毎日新聞専門編集委員・論説委員)
<9月6日(木)>
レクチャー(90分)
4.ヒトは見たいものしか見(え)ない ~コミットメントと、ギャンブラーズ・ファラシー
5.「後の祭り」を科学する ~ハインド・サイト、ポストディクション
6.ヒトは馴れの動物(前半)
討論(30分/ゲスト:利島保 広島大学名誉教授)
<9月7日(金)>
レクチャー(90分)
6. ヒトは馴れの動物(後半)
7.原発をめぐるカネと心
8.仲間意識と「たらい回し」問題-廃棄物など
9.結論-未来へ
討論(30分/ゲスト:高橋真理子 朝日新聞編集委員)
2012/09/24